第2話


 「この後会いにいくの!?」


 「行かない」


 「…??なんで!?」


 「…なんでって、断るつもりだし」


 「はぁ!??」



 さっきまではしゃいでたのに、真希は血相を変えて、私の顔を見た。


 行かないったら行かないよ。


 先輩のことはよく知らないし、まだ喋ったこともないんだよ?


 そう言うと、「まずはデートでもしてみたら?」って。



 「デート…ねえ」


 「どんな人かもまだわかんないじゃん?」


 「それはそうだけど」


 「でしょ?ものは試しだって」



 他人事だと思って簡単に言わないでくれる?


 真希の魂胆はわかってた。


 男に興味を持たせようってんでしょ?


 昔からだよね。


 ボクシングなんて辞めればいいのにって、口癖のようにさ?



 男に生まれたかったって、思い続けてきた。


 真希にも言ったんだ。


 本当は、“父親を超えるようなボクサーになりたかった”って。


 父さんは元世界チャンプだった。


 ファザー級のチャンピオンで、防衛も何回かしたことがある。


 怪我がきっかけで長く活躍はできなかった。


 だから、私が子供の頃にはもう現役を引退してた。


 ジムを経営するようになったのはその後のことだった。


 父さんのそばでボクシングを見て育った私は、「強い」っていうことが何かを、考え続けてきた。



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