さすがに歩くか……

沼津平成

第1話

――企画部 五月某日――


「それではまず、チーム分けについてだ」40をすこし過ぎたくらいの議長が重々しい低い声で発言した。

 太陽に付き添う天使のような美人が書記をしていてタイピングをした。議長はレポートをこっそり見た。「チーム分け:」とある。

 書記が心配している。議長はうなずいた。


「現状の案は、 “テツたちに決めさせる”だ」


 議長は臆病者で、すぐにレポートを見たがる。(見せてくれないか?)

 それにこたえるような表情を天使はした。(ええ、いいわよ。)といっていた。

 議長はまたうなずいてレポートを見た。

「【現状の案】

 テツたちに決めさせる。」

 うむ、と議長はうなずいた。


「賛成の者は手を挙げてくれ」


 書記はカウントも担うのである。「1列目5人、2列目3人……」結果、一五人のディレクターのうち、賛成は十一人だった。


「開催日は秋の晴れた日を初日とおこう。二日目以降は雨の日でもいいが、初日だけは……」


 これには全員賛成だった。


「次だ。スタート地点は……」


 書記は「スタート地点:」とつぶやいた。議長は親指をこっそり立てた。


「国王のお城はどうでしょう?」


 四人の国王のあのお城――案外いいかもしれない。


             

 引用「二人組の銀行強盗はあまり好ましくない。(中略)トムとジェリーは仲が良くても喧嘩する。(中略)三人組はそれに比べたらまだマシだ。(中略)しかし、逆さにするとアンバランスだ。(中略)というわけで銀行強盗は四人いる。」

伊坂幸太郎「陽気なギャングが地球を回す」 祥伝社文庫 6頁


 

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