第9話 二兎とお姉ちゃん
「お姉ちゃん、今なんて言った?」
「二兎が10年前に初めて小説書いたとき、私も愛みたいに二兎と二人でその小説の中に入っちゃったことがあったの。その指輪、私も持ってたよ。でも次の日には消えちゃってて、私も変な夢見ただけなんだと思ってたからびっくりした!」
はぁ~~~?
「なんか懐かしいなぁ...。二兎の書く小説、私すごく好きなんだ。だから二兎の小説の世界に行ったのもすごく楽しかった。」
「え、ちょっと待ってお姉ちゃん」
「もしかしてお姉ちゃんも私と同じように二兎の小説の中で、二兎とキスして戻ってきた?」
「うん!そうだよ~!」
嘘でしょ...。
でも、二兎の書く小説を楽しそうに読んでいるお姉ちゃんを見ているとなぜか納得している自分もいる。
お姉ちゃんと二兎は昔からずっと仲が良かった。
私には二兎の書く小説の良さがわからないけれど、お姉ちゃんは違う。
二人には私には入り込めない世界みたいなものがあるんだと思う。
たぶん二兎はお姉ちゃんのことが好きで、お姉ちゃんを喜ばせるために小説を書き始めたんじゃないかな。
お姉ちゃんもそんな二兎のことを好きだったんだろう。そうじゃなきゃキスしなくない?
お姉ちゃんには今は隼人さんという彼氏がいるけど、なんだか複雑な気持ちだ。
二兎がニートになってなければ、二人は付き合っていたのかもしれない。
「あれからもう10年も経つなんて、なんか不思議。」
お姉ちゃんは優しく微笑みながら言う。
お姉ちゃんと二兎ってもしかして両想いだった?
そう聞きたかったけど、なぜか怖くて聞けなかった。
「でもこんな昔に書いた小説を更新するなんて、きっと二兎は愛と冒険の旅を続けたいって思ったんだね。私の時は続き書いてくれなかったのにな~。」
「そうなのかな、二兎の考えてることなんか私にはわからないよ...。」
あ、そういえば。
「そうだ、お姉ちゃん。この指輪って今はまだ外せないけど、そのうち勝手に消えてくれるってこと?」
「うん、私のときは寝て起きたら消えてたけど...」
「よかった~!二兎の小説読んでも続きがなくて、このまま外れなかったらどうしようかと思ってたの!お姉ちゃんに話してみてよかった、聞いてくれてありがとう!!!」
「え、でも...」
「それじゃおやすみ~!」
お姉ちゃんがなにか言いかけていたけど、私は寝ることにした。
指輪さえ消えてくれるのなら問題ない。
おねえちゃんが10年前に思ったように、私も夢を見たってことにしよう。
二兎と結婚式みたいに愛を誓い合ったことも、キスをしたことも全部夢だった。
そしてお姉ちゃんに隼人さんという素敵な彼氏ができたように、私にも素敵な彼氏がきっといつかできるはず。
そんなことを考えながら私は眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます