勇者の抜け殻〜スキル【装備】で成り上がる〜
ピョン太郎
空を超えし願い星
プロローグ
如月空を一言で言い表すのなら承認欲求の塊のような人間だろう。【頼られたい】、そして【認めてもらいたい】と、ただそれだけの理由で高校教師という職種に就いたのである。これは元々孤児だったからというのも要因のひとつなのかも知れないが本質はただの究極のかまってちゃん。裏を返せば単なる寂しがり屋である。
そして今回、空は定年を迎え教師を退職することになった。退任式が終わり、桜散る春の庭で高校教師如月空は花束を抱えながら教え子達に囲まれていた。写真を撮ったり、昔話に花を咲かせたりと皆やりたい放題している。
「先生は明日からパリに行きます。探さないでくださいね」
「先生、行き先言っちゃってますよ」
ツッコんでくれたのは元教え子の夏目恵。今は獣医として活躍しているが彼女のツッコミは職場でも火を噴いているらしい。
「先生、退職金いくら貰ったの?」
「隼人くんほどもらっていませんよ。というか試合は大丈夫なんですか?」
「欠席してきた」
この図々しくもヤンチャな男は東雲隼人。一昨年のドラフト一位にしてとある有名な球団に入団したうら若きルーキーである。
「......先生今年の新刊読んでほしい」
スッと本を手渡すこの女性は萩原美里。
映画化もされるような有名ホラー作家で毎年新刊が出ると届けてくれる。
「【
「退職した元高校教師が孤独死する話なんだけど」
「......パリに行く道中読むとします」
たまに他人事じゃないような内容の本を書いてくるからちょっとドキッとする。
その後も多くの教え子達に話しかけられ手元には花束だけじゃない別の贈り物で溢れていた。承認欲求モンスターとして華々しい最後であったと今日という日を生涯忘れることはないだろう。
「では皆さん、良い旅を」と空は教え子達に言い残し帰路についた。
人生は旅であると空は考える。出会いと別れを通じて人を知る。空を知り、頼って貰える。故に如月空の人生はまだ終わってはいない。
頼ってくれる人に出会うため彼はパリへと旅に出る。
しかし......。
『【▪️▪️▪️】が発動いたしました』
「ドンッ!!!!!」
「ウゥッ?!」
終わりというものは唐突に飛来してくるものである。
背中が爆発した。
鋭い痛みと共に如月空の意識は暗転する。
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