第6話 秩序と才能

私はこう見えて神童と呼ばれた男である

本家の初孫で生まれた私は親戚の期待と

複雑な家庭環境の中に生まれた神の子だ

物心ついた頃にはすでに他の子供達と

明らかに違うリソースを持って生まれたと

言わざるを得ない人生を歩んできた

例えば絵を書けば市立図書館に貼られ

習字を書けば色々な新聞社に賞状を贈られ

そんな私の逸話に燦然と輝くのは将来の夢

小学校入学時点で総理大臣になりたいと

SNSの無い時代に言ったことだ

その当時の大人たちの驚きと嘲りの

入り混じった顔を今でも鮮明に覚えている

しかし前にも行ったように本家の初孫を

独占したのは彼の祖母でそこで私の後の

人生を台無しにした張本人であるのだ

そう、その祖母は父方の母でありまた

田舎独特の年長者を敬う時代の話だ

そんな彼女は私を親戚一同の自慢の種を

母の手に預けることもなくただ闇雲に

連れ回しては甘やかす日々が続いたのだ

これではまともに育つ理由もなく今の

生き地獄を堪能しているというわけだ

だからこれから子育てを行う母に忠告する

決して我が子の子育て権を渡すなと

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