第5話 対話 ハチグマと
「さあ、始めるわよ。サイトウ君とケンジ、準備はいい?」
「大丈夫だ。」
「大丈夫です。」
足が竦んでいる。箱の間から見える巨漢、ハチグマだ。ここ何年も活動する傭兵で、犯罪者相手に盗みや殺しをする男だ。
見方によっては善人だが、今回はフォンさんの作戦通りに動くことになっている。ハチグマさんには少し申し訳ない。
ここまで言ってなんだが、今回は会話の文字起こしをするだけなので、僕は前には出ない。
「こんにちはハチグマさん。私はフォン。あなたに話があるの。」
「…所属は?」
「今は無職よ。敵意もないわ。そんなに睨まないでちょうだい。」
「ちょっと待ってな。フォンって名前の犯罪者がいないかを確かめる。」
ハチグマが後ろに置いてある箱から黒い本を取り出しペラペラとめくる。粗暴な見た目からは想像出来ないような反応に少し驚いた。
「フォン…フォン……SPSP所属ねぇ…まったく、特殊部隊所属の相手に下手なことは出来ねぇな。で?何の用だ。新開拓評議会の規律には違反してないと思うが。」
「……ブルートゥス。この名前に聞き覚えはない?」
「ブルートゥス…ブルートゥス…あっ!割と最近に俺を雇うとか言ってたやつがそんな様なこと言ってたような…シーマン教会のバッチ付けてたし、怪しい奴とは関わらない主義なもんで追い返したよ。まぁお望みの情報かは知らんがな。」
「シーマン教会…あんなゴミカルトに入っていたのね…ってそんな事あるわけないでしょ!そもそも信者ならキモい服着てるでしょ!」
「…でもバッチ付けてたしよぉ…」
「異能行使、除去。」
言葉と同時にフォンさんの手が光り、ハチグマのおでこに当たっている。
「なにっすんだっ!って……そうだ!あんの野郎が俺の金を取ったんだよ!クソ!何がどうなって…やっぱり捕まえんのか!?」
「正直に話しましょう。私の異能は、他の異能の効果等を解除する異能よ。詳しくは分からないけどブルートゥスには洗脳に近い異能があると思ってるのよ。だから敵意なんて最初から無いわ。」
「洗脳…ねぇ…。まぁ今の感じ疑う事も必要ねぇな。で、満足か?」
「そうねぇ…、ねぇハチグマ。私達に協力しない?一緒にブルートゥスを追い詰めましょう。勿論報酬は用意するわ。でも額は期待しないでね。あんまりお金持ってないから。」
「俺は額では動かねぇよ。SPSPとコネを作るのも悪くはねぇな。フォン、だったか?その話乗った。背中を刺さねぇならな。」
「刺してどうするのよ。」
「一回やられてんだ。グサッとな。」
「災難だったのね。取り敢えず、よろしくハチグマ。」
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