第87話 応接(2)

「それで、迎えはいつごろ来るのでしょうか」と正一。「長くかかるようでしたら当主らを呼びますが。」


「切鴨神社からの迎えは午後3時には着くはずです。日の入りまでに奥の院にお連れするとのことでしたので」と広瀬。「常設隊もそのころには到着予定です。」


「念のために当主を呼んでおきましょう」と正一。


「ご当主様に来ていただければ、心強いです。」と広瀬。


「ああ、それはすばらしい」と白木。


「ご当主様はそれほどすごいの?」と美津子。


「この道場では傑出しております」と正一。「ただ気難しくて扱いが面倒なので、あまり人前に出さないようにしております。」


 白木と広瀬が、息のあった相槌を打った。


「あら、あなたたちも知ってるの、ご当主様のこと」と美津子。


「まあ、なかなか難しいのですが」と白木。「蓮様と蘭様にお取次ぎいただければ大丈夫かと思います。」


「そうなの。ではよろしく頼むわ」と美津子。


 蘭が弘樹に電話をした。なぜか携帯電話がつながりにくかった。母屋の固定電話でつながった。


 蘭が正一に耳元で話し、正一が「当主は、門人の車で夕方に着くそうです。ただ、熱を出して寝ているので、話ができないそうです」と伝えた。



「ところで、広瀬先生は引退されたと聞きましたが」と正一。


「常設隊で辞表を出して受理されたのですが、それから警備隊に配属になったのです」と広瀬。「退職するつもりだったのですが。」


「先生は指揮官として卓越されてますから」と正一。


「広瀬先生に辞められたら、私たちが困りますよ」と白木。


「わたしは自分が許せないのです」と広瀬。


「仕事をやめるほどのことではないよ」と白木。


「何があったのかしら?」と美津子。


「先日の仕事で、ご当主様に大変失礼なことをしてしまったのです。その上、殉職者を多数出してしまいました」と広瀬。


「弘樹のことは気にせんでください。いつものことじゃ」と正一。


「先日の仕事って何なの?」と美津子。


「鬼退治です」と白木。


「鬼退治ですって?」と美津子。「何で教えてくれなかったの?」


「最高レベルの秘密なのです」と白木。


「ひょっとして、選抜隊が全滅して、常設隊がひどい被害を受けたのって、その鬼退治のせいなの?」と美津子。


「ええ、そうなのです」と白木。


「それでどうなったの?」と美津子。


「ご当主様と付添いの方が撃退しました」と白木。


「どんなふうに?」と美津子。


「刀で鬼の手首を切り落としたのです。私も手首を拝見いたしました」と白木。


「その手首は本部にあるの?」と美津子。


「いいえ、神主たちに渡しました。その後すぐに消えてしまったそうです。神主たちが見ている目の前だったそうです」と白木。


「不思議な話ね」と美津子。

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