39話 紅林さん=ナナちゃん

吟味と検討を重ねた僕は、彼女を選んでみた。


【ねぇナナちゃん】

【アキノちゃんからDM!?】


速攻で返ってきたDM。


まぁ動画上げた直後だし、コメントくれたばっかだし。


だからこそ選んだんだけどね。

ほら、こういうのはタイミングとフィーリングだから。


『止せ、死ぬ気か』

『自ら死地に出向くことはなかろう』


【なになに!? 何でもするよ!? アキノちゃんの言うことなら何でも】


【ん? 何でもするって言ったよね?】

【言ったよ  助けてもらったあのときから、何回も】


何回も?


助けた?


……ああ、この子のファッションのこととか聞いたもんね。


高校デビューするんだって張り切ってたから、全力でプロデュースしたんだった。


ちょうど紅林さんと似た感じの子で、同じタイミングで高校デビューで、同じようにギャルになってみたいって子だもんね。


『それで何故分からぬのか』

『女難を自ら招くのか……』


『分からぬ』

『理解できぬ』


ふむ。


紅林さんみたいなギャル。


特にふとももが素晴らしいギャル。


……最高だね。


今からよだれが止まらないよ。


『考え直せ』

『再考せよ』

『根拠の無い突撃は蛮勇ぞ』


【ちょっとお茶しない? カラオケ、好きって言ってたよね】

【うん、すき  いきたいな】


送って数秒以内に返信が来たのはちょっとびびったけど、それだけ乗り気ってことで。


大丈夫大丈夫、今世の僕はどんだけがんばってもB止まりだから。


責任取るとかそういう話になり得ないし、ノーリスクでお互い楽しいだけだから大丈夫大丈夫。


『此奴……しかも最も殺気を纏う女子に!?』

『好色も良いがせめて血を残さぬか!』


『いや、そもそも主は女子ぞ?』

『此奴の知識に依ると、どうやら女子同士でも子を残せる南蛮の妖術が確立しつつあるとのことよ』


『面妖な……』

『主の思考よりは面妖であるまい』

『理解できる』


そんな感じで、まるで男子中学生を釣るみたいにあっけなく即オチしてくれたナナちゃん。


やー、楽しみだね。


久しぶりの女体だ、物心ついて以来実戦と研究を繰り返してきた今世の僕のテク、にぶってないか心配だなぁ。


『この虚けが……!』


『ここまでの逸材は千年に一度よな  無論、大馬鹿という意味でな』





「いやー! アキノちゃんオフ会来てくれてありがとー!! メン限で貢いだ甲斐あったわー!」


「うん……あのね? ナナちゃん……」

「やだなもー、あたし知ってるでしょー? 奈々って呼んでってばー!」


「……うん、じゃあ奈々ちゃん……えっとね……」


「ふたりきりなんだからくっつくー♥ ぎゅー♥」

「ふへっ」


柔らかいし良い匂いするし溶けそうな僕。


町内某所、とあるカラオケ店。


おじさんの息の掛かってるとこだから、か弱い女子2人だけで行くにしては過剰すぎるくらいに安全も安全。


部屋も広い――っていうかたぶんスイートルーム的なのだよねこれ――広い部屋をぐるりと囲む革張りのカウチ、そこにはJKたったの2人。


目の前には、おこづかい制のJKにしては大枚はたいて、僕とのふたりっきりのカラオケ+写メ大会権を獲得して――テーブルに置いてあるごはんとジュースをそっちのけで、僕へ肉食獣の目を注いでいる――――紅林さんが居る。


なぁんでぇ……?


いや、それよりも……た……食べられる……!?


『漸く自覚したか』


いやまぁ?


肉食系ギャルにいただかれるってのは男としての最大のロマンだし?


大歓迎だし?

おいしいし?


いや、けどなんかこの子の場合、その……命まで刈り取られそうな形してるっていうか?


なんかこわいっていうか?


あと、やっぱおとなしくするって決めた学校生活っていう日常の中にそういう爛れた関係持ち込むのはねぇ……絶対ボロ出るから我慢我慢。


僕は我慢ができるし、我慢してるあいだは完璧に隠し通せるんだ。


……けど、まさかナナちゃんが紅林さんだったなんて……!


こんなの誰も分からないよ、無理だよ。


こんな偶然、確率的にあり得ないよ。


絶対何かの間違いだよ。


『そうか……?』

『盛りの付いた元服後の童でも、此所まで性欲に支配されることも無かろうに』


『哀れな……』

『護り甲斐は有るな  早々に砕け散る自信も有るが』


なんだか頭の中で僕の軽率な行動をけちょんけちょんでぼろくそな声が聞こえる気がするけども、そんな場合じゃないんだよ。


そんなどうでも良すぎることよりも、僕の平穏な生活に居るはずの紅林さんがここに居て今にも捕食されそうなことなんだよ。


「……奈々ちゃん、近くない?」


彼女の溌剌とした美人顔が僕の顔の30センチ圏内からのぞき込んできている。


彼女の、手入れの行き届いたウェーブヘア、まつげ、そしてアーモンド型のおめめが僕の中を見通してくる。


「やだもー! アキノちゃんがいつも言ってんじゃん!  女の子の匂いと柔らかさとあったかさ感じられる距離感が良いんだってー」

「ぐぬぬ」


「言ってたじゃん! 積極的な女の子が大好きだって!」

「おっふ」


「やば、アキノちゃんが着けてるシャンプーと香水でクラクラする……」


うん、僕も君の元気なJK臭でクラクラしてるよ。


けど、確かに言ったよそれ……古参、かつコメント多くって覚えてる子だけ集めてのメン限配信で。


下心はちょっとしかなかったんだよ?


あわよくば禁欲生活の学校から離れたところで、あと腐れない女の子食べられないかなーって。


思わないじゃん?


まさか高校の同級生、しかもクラスの子、しかもしかも紅林さんとかさぁ!?


しかもなんかものすっごくノリノリとかさぁ!?


やっぱあれかなー、この前助けちゃったの引きずってるのかなー。


つまりは一時の過ち。


何とか正気に戻してあげないと……!



◆◆◆



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