第31話 老人福祉の将来性

「みなさん。こんばんはー。ここはC区モータースポーツ・レーシング場です。レポーターは私、上から読んでも下から読んでも竹友 友竹と様々なレース場を走ったこことのある斉藤 一さんです」

 夜景を彩るスポットライトを受けた。竹友は40代の丸顔で、短髪は銀色に染めていた。隣の斉藤も髪は赤で染め上げて、40代のおじさんだ。にっこりと笑った笑顔が良く似合う。

 東京ドームほどの広さのレーシング場は、大歓声を受けていた。

「いやー。大歓声ですねー」

 斉藤は広々としたコースを見て、感嘆としていた。

「矢多辺 雷蔵氏は日本屈指のお金持ちだからいいですよねー……羨ましいですねー……」

 斉藤の声に竹友は微笑んで、

「テレビ局なども多数。このレース場に集まってきたようですね。当たり前ですが、なんたって日本の将来がかかったレースですからね。それに3年前の野球以上の盛り上がりですから」


 竹友は続けた。


「それにしても、奈々川首相のAチームの相手の興田 道助のCチームは無法レースを提示してきましたね。大丈夫でしょうか?」

「ええ、秘策どころかなんでもありですね。Aチームには文字通りA区の人々が多く見受けられますし、CチームにはC区とB区の人々が熱狂していますね。私も参加したい気分ですよ」


「皆さん。気を付けてください。命の危険を感じたら、すぐにリタイアしてください」

 応援席の晴美さんは無事だった。綺麗な横顔だがどこか険しい。

 僕は晴美さんの隣に原田といた。

「大丈夫っぜ――!! だって、藤元がいるんだぜ!!」

 島田が吠えた。

「おーっし、相手を殺してもいいんだな!!」

 田場も物騒に吠えた。

「俺……いつも身近に必ずいるから……」

 夜鶴が晴美さんの耳元に囁いた。

 僕は河守に笑顔で手を振った。

「私……頑張ります……」

 遠山は声が小さくて、誰も聞こえなかった。

「雷蔵さん。敵は強気なようで、俺も精一杯参加しているけど、また藤元さんの御厄介になりそうで……」

 原田は早くも弱気になり出した。

「私もここから応援するわ。無理しないで頑張って」

 九尾の狐が河守の肩に手を置いている。

「無法レース……雷蔵さん。死なないでね」

 河守が心配した顔を僕に向けるが、僕の顔を見てニッと笑う。

「大丈夫さ……。死んでも大丈夫だと信じよう」

 僕は微笑んだ。

 全部の車を点検しているアンジェたちの元へと向かった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る