第17話
警察に最近の紫音の様子を聞かれた後、双子はそのままパトカーでアパートまで送られた。近所の人や学校の同級生が見れば、「とうとう警察沙汰になることまでやらかした」と、またあらぬ噂を立てるのだろうけど。きっと学校に行けば嫌でも耳にするはずだ。
だから、なんだ。そんな悪意は痛くない。紫音がいなくなったことに比べれば、これっぽっちも痛くない。
アパートに入っても、凛珠と陸はずっと手を繋いでいた。辛い時はいつだって二人で手を繋いでいた。自分の半身が隣にいれば、何があっても乗り越えられたから。
「陸」
慰めようと、兄を呼んだけれど。その先を紡げなかった。言葉の一つも見つからなくて。
「…………りずはずっと、いるからね。どこにも、行かないからね。」
こんな言葉がなんの慰めになるんだろう。どれだけ傍にいようと、自分は紫音には成り代われないのに。陸を愛してる。陸だって自分を愛してる。でもそれは家族としてであって、兄妹としてであって、恋情じゃない。
母親の
人の形を取る前に肉体を分け合って、もしかしたら魂すらも分け合って、唯一無二として産まれてきた兄と妹。きっと運命すらも分け合えると信じて一緒に生きてきた。
「哀しい……哀しいね」
ぽろぽろと頬を伝う涙は、自分のものであって同時に兄のものでもあった。
兄の胸を
「凛珠に分かるかよ……」
だから、八つ当たりだと分かっていても兄の気持ちを受け止めるのは自分だ。自分以外に誰がいる。自分なら正しく受け止められる。
「愛してたのに」
凛珠の腕を掴んで泣き崩れる陸。その身体を支えるには、体格が、体重があまりに違いすぎて。抱き締めた陸は男子としては細身とはいえ、凛珠と比べるとやっぱり男の子の身体だった。
昔は何もかも、性別以外の何もかもがそっくりだったのに。いつの間にか、こんなにも違う。
「なぁ、オレの気持ちが凛珠に分かるかよ?」
陸と紫音は恋人だった。凛珠と紫音は親友だった。親友を失くした痛みは、恋人を失くした痛みとは違うと陸は訴えている。
「ごめんね。陸、ごめんね。」
分かっていても、何もしてあげられなくて。
その日は、凛珠と陸は手を繋いで眠った。
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