第51話 河童と義仲
編纂には旅の途中で関わった戸隠健三も関わっている。彼は元脚本家だったが、頭を電柱にぶつけてこの時代にやって来た。それまで固い文体だったのが、柔らかくなったのはそのせいだ。
河童が出現
新たな時代の幕開けと共に、村の近くに再び河童が姿を現しました。河童は相変わらず、水面を静かに漂いながら、時折、頭の皿に水を満たし、力を蓄えている様子でした。ある夜、村の少年が川辺で遊んでいた時に足を滑らせ、冷たい水の中に転落してしまいます。すると、水中から河童が素早く現れ、少年をしっかりと支え、無事に岸まで送り届けました。
村人たちは河童の助けに感謝し、彼を守り神として敬うようになり、川辺に供物を捧げるようになりました。また、河童は夜ごと現れ、村の治安を見守るようになり、村人の間でその存在は次第に「時代の守り手」として知られるようになりました。
河童の友好的な一面が明らかになると、村人たちはさらに河童との絆を深め、彼に手を合わせて祈りを捧げる習慣が生まれました。河童もそれに応えるかのように、時折、子供たちの前に姿を現し、川遊びを教えるなど友好的な振る舞いを見せることもありました。
こうして河童は、村の守り神として、そして新しい時代の象徴として、民の心に静かに根付いていったのです。
ある夏の日、村は長い間経験していなかった大雨に見舞われました。川の水位が上昇し、村人たちは不安に駆られました。洪水の危機が迫る中、村の年長者たちは河童に助けを求める祈りを捧げることを決めました。彼らは川辺に供物を並べ、深夜まで祈り続けました。
やがて、静寂を破るように川の水面が揺れ、河童が姿を現しました。彼は村人たちに優しく微笑むと、頭の皿から水を一滴ずつ川に注ぎました。すると、不思議なことに川の流れが穏やかになり、水位が次第に下がっていったのです。
河童の力が川を守ってくれたことで、村人たちはさらに深く感謝し、彼を「川の神」として崇めるようになりました。そして、村人たちは毎年、川が氾濫しそうになるたびに河童に祈りを捧げるようになり、河童もまた彼らの期待に応えるように現れては水の調整を助けてくれるのです。
月日が流れ、河童の伝説はさらに語り継がれ、村では年に一度、河童への感謝祭が開かれるようになりました。祭りの夜、村の若者たちは河童に見立てた衣装を身にまとい、川辺で舞いを披露します。川には紙灯籠が浮かべられ、夜空に満ちる星と共に、村人たちの感謝の気持ちが川面に静かに広がっていきました。
河童は、村の成長を見守りながら、今もなお、静かに水の中から村を護り続けているといいます。その姿を見た者は少ないものの、川のせせらぎに耳を傾ければ、河童の優しい囁きが聞こえると村人たちは信じています。そして、河童は村の人々の心の中で、時代を超えて今も生き続ける存在となったのでした。
村の河童への感謝が深まる中、もう一人の伝説的な人物が登場しました。その名は源義仲。かつて平家追討の戦で名を馳せた武将で、時代を超えてこの地に辿り着いたと言われていました。村人たちは彼がどこから来たのか知る者はいませんでしたが、その威厳と人柄から、自然と村の守り手の一人として敬われていました。
義仲はこの土地に暮らすうちに、川の河童と村人の間にある不思議な絆を知りました。武人として戦場を駆け抜けてきた彼にとって、河童という存在は不可解でありながら、どこか心を惹かれるものでした。ある晩、義仲は村の川辺を歩いていると、川面に漂う河童を目にしました。彼は静かに河童に近づき、感謝と尊敬の念を込めて頭を垂れました。それを見た河童は、義仲をじっと見つめると、頭の皿に一滴の水を義仲の前に落としました。それは河童からの「信頼の証」だったのです。
その後、義仲は村と河童を共に守る決意を固めました。村に災難が降りかかる度に、義仲は河童と共に川の守護に励み、村人たちに知恵と助言を授けました。ある年、村が大干ばつに見舞われ、川が干上がりかけた時、義仲は河童に助けを求めました。河童は義仲に、川底の守護石を動かして新たな水源を見つける方法を伝えました。
義仲と村人たちは河童の導きのもと、川底を掘り進め、新たな水脈を発見しました。村は再び豊かな水を取り戻し、義仲と河童の絆がさらに深まったのです。義仲の名は河童と共に語り継がれ、村では年に一度、義仲と河童に感謝を捧げる「義仲祭」が始まりました。祭りの夜、村の若者たちは義仲に倣い、河童を象った衣装を身にまとい、川辺で舞いを披露します。夜空に浮かぶ星と共に、村人たちの感謝の祈りが静かに広がっていきました。
義仲は生涯をかけて村を見守り、河童と共に新しい時代の象徴として村の心に根付いていきました。その魂は今もなお、川辺に漂う水の音や風のざわめきと共に、村人たちの中で生き続けていると言われています。
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