第1話
ここは県内でも有名な中高一貫校
芸能科・スポーツ科・普通科の
3コースで編成されており、
校舎は中等部・高等部の
2つに分かれている。
社会において
年齢もキャリアも関係ない
という校訓からあえて、
中高での、活動や生活を、
全て別々に分けるのではなく、
敷地内の物は全て共用。
寮も、学年で振り分けはされているものの、
男子寮・女子寮共に、中高の生徒が、
同じ建物内で暮らしている。
――――――――…
このお話の主人公でもある
樫木桜來(かしき さく) 高校2年生
彼女は、芸能科に通っており、
すでにモデルとして活動をしている。
彼女はあまり感情を、
表に出すようなタイプではない。
いわば、
クールビューティーというやつだろう。
カシャッカシャッ
「はいはい~いいね~♪」
今日もシャッター音が軽快に鳴る。
「桜來ちゃ~ん
最後は笑顔のショットね~♪」
普段彼女は、あまり笑わない。
けれど、
仕事となるとそれは別の話だ。
そこにいる誰もが、見惚れてしまう程、
美しく、可憐に笑う。
カシャッ
「桜來ちゃん最高よ~バッチリ♪」
「お疲れ様でした。
ありがとうございました。」
桜來は、深々と頭を下げた。
「あはははっ相変わらずお堅いわね~!
でもあんたのそのギャップ♡
あたし、だ〜いすきなのよね~♡」
カメラマンの通称たかちゃん。(♂)
業界では名の知れたカリスマカメラマン。
「たかちゃんさんに誉められるなんて、
光栄です。ありがとうございます。」
「もう〜!たかちゃん♡って
呼んでって言ってるのに!
仲良しだと思ってるのはあたしだけ~?」
「いえ、恐れ多くて呼べません。
でも私も、仲良しだとは思っています。」
「本当〜あんたって子は〜!
可愛い〜んだから~♡」
桜來の両頬をガシッと摘まみ、
上下に激しく動かすたかちゃん。
これがたかちゃん流の
最上級の可愛がり方だ。
「お疲れ様です。
桜來~そろそろ出るぞ~」
マネージャーの羽野が声をかける。
「では、お先に失礼します。
皆さんお疲れさまでした。
出来上がり、楽しみにしています。
さようなら。」
桜來は再度、頭を深々と下げ、
その場を去っていった。
「ぶっ…っははははは!
本当、天狗って言葉とは無縁な子ね!
あの子はもっと売れるわよ〜♪」
・
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・
「羽野さんお疲れ様でした。
また明日もよろしくお願いします。」
「早く寝ろよ~!
じゃあお疲れ様~」
羽野と挨拶を交わし、車を見送る。
門をくぐり、敷地内に入ると、
男子寮の方から、声が聞こえた。
「桜來~おかえり♪こっち来いよ~」
同級生の湊(みなと)だ。
女子寮と男子寮とは隣同士。
ちなみに寮内であれば、恋愛は自由である。
そのため女子寮生が、男子寮へ入ることのみ、
許可されている。
ただし、必ず名簿に、
部屋番号と名前、入退時間を記載すること。
部屋の主が、入口まで迎えに来ること。
寮長へ、二人揃って、顔を見せること。
その他、細かい条件は多々あるが、
この3つは絶対条件である。
「ただいま。シャワー浴びたいから帰る。」
「こっちで入れよ~はやく~」
湊、お得意のおねだり顔。
「…分かった。いま行くから、下に来て。」
「やった~♪すぐいく!♪」
・
・
・
・
「こんばんは。寮長さん。」
「桜來ちゃんこんばんは。」
桜來は、慣れた手つきで名簿に名前を書く。
「桜來~お待たせ~いこーぜ♪」
「湊の所ね。はい。確認完了。」
「お邪魔します。」
もう何度目ともなる湊の部屋。
「久しぶりだな~♪」
「学校で会ったと思うけど?」
「そうじゃなくて~
桜來とエッチすんのがってこーと!」
「そういう意味ね。」
「本当淡白な子〜!」
「湊。電気消して。」
「はいはーい♪」
・
・
・
二人の関係はいわばセフレ。
最初の始まりは、それこそ、
湊と女の子の現場に、
鉢合わせてしまったこと。
「ごめんなさい。
出ていくに出ていけなくて。
声は聞いてしまったけど、
何も見てないから安心して。」
「あははっ!面白いねー!
君、芸能科の桜來ちゃんでしょ?」
「あなたは芸能科で
ダンスを専攻している湊くん。」
「嬉しいー!有名人に知っててもらえて♪」
「あなたの方が有名人じゃない。
アイドルなんだから。
それに、私達デビュー時期同じよね?
同期なんだから呼び捨てでいい。」
「じゃあ桜來♪俺も湊ね♪
桜來って彼氏いるの?」
「湊。私、彼氏はいたことがないの。
だからああいうのも、何のためにするのか
正直よく分からない。」
「えっ?!まじで?!こんな綺麗なのに?!
てか、桜來も興味あるの~?♪」
「…興味。興味はもちろんあるわ。
経験できるなら経験してみたいし。
そうね。湊となら上手くいきそう。
湊、そういうのは今すぐに出来るものなの?」
「えっ!俺?!…これ誘われてる?笑」
「そう。誘ってる。」
「…まぢか笑
まあー俺は女の子大好きだし~
もちろん大歓迎だけど~
桜來はそんな簡単にいいの?笑」
「これでも、緊張しているし怖い。
でも、同じくらい楽しみでもある。
興奮…とも言えるのかな?」
「…ぷっ!顔と言葉違いすぎない?笑」
「よく言われる。」
「うん!桜來がいいなら俺はいいよ!
ただし、俺のことは、
好きにならないでね?♪」
「ごめんなさい。それはない。」
「本当最高~!桜來とは
ながーい付き合いになりそうだな~♪」
・
・
・
・
その言葉通り、この関係が、
もう1年近く続いている。
「桜來って本当、
エッチの時いい顔するよね~」
「顔なんて気にしたことなかった。」
「普段はこんなに無表情なのにね~
ギャップにやられすぎて胸が痛いよ~」
「下から見る湊もとってもかっこいいよ。
引き締まった身体に興奮する。」
「本当この子は〜
恥ずかしげもなくスラスラと〜笑」
「私も少し、恥ずかしいけど。」
「全然分かんないよ~!」
そう言いながら、
抱きつこうとする湊だったが、
それをかわすように桜來は立ち上がる。
「じゃあ、寮に帰る。ばいばい」
バタン
桜來は、そのまま部屋を出ていった。
「本当、気持ちのいい程の割り切り…笑」
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