第38話 楽しい記憶を作る

「ただいま」

「...お帰り和馬さん」

「ただいま。葉月...と木村さん?」


和馬さんが家に帰って来た。

私はお出迎えの為に玄関まで行く。

と同時に...きーちゃんも出る。

その姿に和馬さんは心底ビックリしていた。


「え?ど、どうして木村さんが?」

「私はザ・サポートっすよ。おにーさん」

「サポート?何のサポートだ?」

「そりゃおにーさんが小説を打つのをまた再開する為のサポートっす。聞いたっすよ。小説をバリバリ好いていてバリバリコンクール取るのが好きなんっすよね」

「葉月...お前余計な事を。違うだろ」

「アハハ。まあ成り行きでね。...だけど和馬さんって小説書いてたよね?だから良いんじゃない?この機会に」


和馬さんは溜息を吐きながらも「そうだな。学校でも言われたよ」と苦笑する。

それから私を見る。

私は目をパチクリして「へ?」となる。

その顔に「実はな」と和馬さんは説明する。


「ナイスじゃん。和馬さん」

「そうっすね。おにーさん。それは是非とも再開すべきっすよ」

「...しかしなぁ...」

「良いじゃないっすか。よく分からないですけど書くならカクヨムとかあるんでしょ?ネット上に」

「そうだが...」

「自由に投稿出来るらしいよ」

「そうか...」


悩む感じの和馬さんを連れてリビングに行く。

それからきーちゃんと一緒に古びている...和馬さんが封印していたパソコンでネットを観てみると...数年前では考えられなかった小説のサイトがバリバリに出てきた。

私達はそのサイトの1つ1つをチェックした。

その結果、カクヨムが使いやすいのではないかという結論になった。


「ならこのサイト使ってみるか」

「お?おにーさんもう書くんすか?」

「いや。起承転結を考えないと。...あとプロットっていうのも確か必要だった」

「プロ?」

「プロットだよ。きーちゃん。それはね...」


説明する。

するときーちゃんは納得した様に「そうなんだね」と笑顔になる。

私はその笑みを見ていると和馬さんのスマホに通知が入った。

その通知を和馬さんをは見てから驚く。


「...同じサイトに星も登録したらしい」

「...え?そうなの?」

「あらまぁ。それは運命っすね」

「まあ運命って表現は良くないけど。...だけどそうだな。お互いに初心者だ。どれぐらい読者が...つく?かだな」

「だね。和馬さん。ますます負けてられないね」

「そうだな。...これは負けてられないな」

「私も応援するっすよ」

「おう」


それから和馬さんは会員登録をしてから小説を書く為の準備をする。

メッセージを星羅さんに飛ばす和馬さん。

私はその姿を見てから立ち上がってお茶を入れていると「星さんってバッサリ...いった感じですけどおにーさんに未練無いんですかね?」ときーちゃんが聞いていた。

その言葉に和馬さんは「どうかな。どっちにせよ俺はもう葉月だけを愛するつもりだから」と答える。


「もー。きーちゃん。惑わす事を言わない」

「はいはい。...でもふとに思ったんで」

「...そうだな...よく分からないけど...アイツとはもう付き合えないしな。何れにせよ」

「そうっすね。...まあ今は小説に熱中っすね」


そして和馬さんは小説のプロットを作り始めた。

私達は横で見守る。

因みに1時間ぐらいかかって作られたプロットだが星羅さんは乙女ゲームそして和馬さんは現在ファンタジーで勝負する事になった。

勝負っていうぐらいなのか分からないけど。


「...うーん。どうかな」


和馬さんは投稿した様だ。

私達はスマホで直ぐに見る。

物語の主人公は異世界転生者。


だけど普通と違う。

何が違うかといえば家族を引き連れ転生。

ワクワクする内容だった。


一方で私はアドレスを貰ってから星羅さんのアカウントを観る。

そこには乙女ゲームの話が書かれていた。

それは乙女ゲームに転生した会社員の女性が成り上がっていく話だ。

これもワクワクして面白い。


「それにしても凄いっすよね」


そうきーちゃんが呟く。

感嘆した様な声を発した。

私は「?」を浮かべてきーちゃんを見る。

和馬さんが「何がだ?」と聞く。


「いやいや。小説を書ける人が凄いなって」

「簡単だよ。小説なんて。...まあそれ言ったら失礼かもだけど頭の中にある得意分野の小説を吐き出すんだ。プロット上にな」

「それでも書けるってのは凄いっすよ。語力が無いと話にならないっす」

「...木村さんにもあるよ。語力は。それに小説は外見じゃない。赤ちゃんのハイハイよちよち程度でも良いんだ。とにかく書く。書き殴れば良いんだよ文章を。それが小説だ」

「お、おう。何だか目が燃えてるっすね。おにーさん」

「いや。すまん。久々に熱中してしまって」


和馬さんはハッとしてから苦笑する。

私はその姿に苦笑い。

すると...小説に読者が3人ついた。

その光景だけでも私は「わ!」と声を挙げる。


「凄い...えっと。読者は...確か...」

「そうだな。読んでくれている人だ」

「読者が100000人ぐらいになったらパーペキすね。おにーさん」

「いやいや。お金儲けじゃないから。3人だけでも成果だよ。...よく分からないけど凄いんじゃないかな」


そう言いながら和馬さんは嬉しそうな顔をする。

私も嬉しくなった...けど。

勝負相手の星羅さんは10人行っていた。

やはり差が出ている。


「...ここから多分、色々と伸ばしていくんだ。まだ分からないよ」

「そうっすね。私は何ら分かりませんけど」

「そうだね。...取り敢えずどっちが凄いか...よりも...だね」

「ああ。小説は...評価じゃないと思う。内容の完璧さだな」


あれ...にしても。

何か楽しいな、って思う。

お父さんが亡くなる前に戻った感覚だ。

嬉しいな。

そう思いながら私はゲームに熱中する様な感じで和馬さんを見た。

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