第二章 祈り
お前という存在
第33話 後の季節
それから...時間が進んだ。
時期は5月の後半となった。
テストも終わった。
もう直ぐ...体育祭やら服装が変わったりやらがあるけど。
思いながら俺は周りを見渡す。
「...」
高島や星は相変わらずな感じで話している。
リア充としての付き合いをしている。
そんな中だが神里由希子が学校に来なくなった。
本格的に治療に専念するというらしく。
今は休学している。
「...」
俺は欠伸をしながらそのままイヤホンを耳に嵌める。
それから音楽を聴くふりをしてから俯いた。
そして寝ようかと思っていると。
「やあ」と声がした。
「...高島...」
「君...葉月さんと付き合い始めたって?」
「ああ...聞いたのか」
「そうだね。...でも...本当に良かったよ」
「...何が?...お前の思惑通りじゃないだろう」
「俺は思惑とか立ててないよ。...ただ...せいちゃんには幸せにはなってほしいかなとは思っていたけど...」
「...」
「...ああ。それはまあ良いんだ。...君、大昔にせいちゃんに既に会っていたんだね」
「そうだな」
高島は「...そうなんだね」と苦笑する。
俺はそんな高島を見る。
「どういう用事だ?」と聞いてみると高島は「君、部活してないだろ?...少しの間で良いんだけど俺の所で何か手伝ってくれないか」と言ってくる。
「用具の片付けとかだけど」
「...要は雑用じゃないか」
「そうだね。まあでも俺もやるけどね。...君だけを働かせないよ」
「...」
俺は考え込む。
そして高島を見る。
「...分かった。家に帰っても暇だしな」と言う。
すると高島は「報酬は払うよ。...ただまあ現金は無理だけど。...奢るよ。色々なものを」と言ってきた。
俺は苦笑した。
「...でも本当に良かった」
「何がだ?」
「...君が幸せそうなのが良かったよ。...どうなる事かって思っていたけど」
「...お前のお陰でもあるよ」
「俺は何もしてない。俺は...あくまで変な事ばかりしていただけだ。最も感謝すべきはせいちゃんだな」
そう言いながら高島は星を見る。
星は俺を見てからニコッとしてから近付いて来る。
それから「どうしたの?」と笑みを浮かべる。
相変わらず華やかな笑みだ。
「...いや。...お前に感謝しないとなって思ってな」
「え?何を感謝するの?」
「...今までの事を」
「...成程ね。...じゃあこのお礼は現金で」
「ないない」
高校生がそんな金を持っている訳がない。
そう思いながら俺は横に首を振る。
それから俺達は笑い合う。
「...じゃあ戻るか。せいちゃん」
「そうだね。じゃあまた後でね。和ちゃん」
「...ああ」
それから俺は椅子に腰掛ける。
そして窓から外を見る。
するとスマホがゆっくり震えた。
その送り主は...俺の彼女の葉月であった。
(和馬さん)
(どうした。葉月)
(今日は早い?)
(ああ...すまん。用事があってな。少し遅れる)
(そうなんだね。じゃあご飯作ってる)
そして先生が入って来たのでそのままスマホを閉じる。
それから授業に集中した。
そういえば思い出したけど...葉月の誕生日が近い。
俺は「...」となりながら「そういえば」と呟く。
「...母の日に何も贈らなかったな」
そう言いながら俺は考える。
葉月を連れて...お墓参りをしようかな。
思いながら俺は心の中に手を添える。
それから目を開けた。
☆
私、在里葉月は在里和馬さんと付き合い始めた。
恋人同士になった。
その事で凄く嬉しいが。
内心...複雑だった。
私達がこうなるまでに相当な人達を悲しませた気がするから。
「...その分、幸せにならないと」
そう思いながら私は自宅で授業を受けてからそのまま掃除、洗濯などをする。
家事をし始めた。
するとそんな家事をしている中。
放課後になって和馬さんからメッセージが来た。
(すまん。色々と手伝ってくるから帰りが少し遅くなる)
和馬さんは優しい性格をしている。
何だかさっき、学校で手伝いがあるから、って言っていたしね。
仕方がない。
早く大切な恋人に会いたいけどここは我慢だ。
「...」
私はそう思いながらゆっくり家事をする。
それから愛しい人の帰りを待った。
16時30分ぐらいに和馬さんは帰って来た。
私は玄関に迎えに行く。
「...お帰り」
「...ああ」
そして私は先程の...件を思い出して聞く。
付き合っている事を母親と小五郎さんに...伝えるか否か。
それを悩んでいたのだ。
私のお母さんは良いとしても...小五郎さんがどう反応するか。
かなり厳つい顔の...厳しい性格だ。
「お前の考えは賛成だけど...親父がどう反応するか気になるよな」
「...そうだね。...どう判断するかだね」
私達の事は絶対に小五郎さんには伝えないといけない。
だって兄妹間でお付き合いしているし。
あくまで...血が繋がっていないとはいえ兄妹なんだ。
「...ちょっと怖いかも」
「そうだな。...俺もそう思うよ。...怖いな」
「だけど...歩み出さないといけないよね」
「このまま終わらせるのは良くないかもな」
そして話していると鍵が開いてドアが開いた。
それから小五郎さんが顔を見せた。
大学の教師をしている為。
常に巌の様な険しい顔をしている。
オールバックの白髪に長身で眼鏡をしている。
常に眉が寄っている。
私を見てから和馬さんを見て「ただいま」と言う。
その言葉に私達は慌てながら「お、お帰り」と言う。
今日は帰って来るのが早かった。
「...親父。今日は早いな。帰って来るのが」
「そうだな。...研究が思った以上に進んだ。だから帰って来た」
「...」
息を呑む。
それから私は切り出そうとしたけど。
切り出せない。
そのまま小五郎さんは上着を脱ぎ厳つい顔のまま鞄を置く。
私は慌てて室内に入った。
「...そ、その。何か飲みますか?小五郎さん」
「いや。手間がかかるから自分でするから」
「...はい」
私はしおしおとなる。
それから私は小五郎さんを見る。
そして私は和馬さんを見ていると和馬さんが真剣な顔を小五郎さんに向けた。
一言だけ言った。
「親父。話がある」
と。
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