第29話 巡る純愛
私は和馬さんを襲った後。
というか途中で突き飛ばされた。
それから不満げに和馬さんを見る。
だけどまあ。
和馬さんはいつもこんな感じだから。
だからただの冗談めの不満の意思表示だけど。
「俺達はまだ早いよ。そんな事をするには」
「プゥ。和馬さんのケチ」
だけど露骨に残念なのは言える。
何故ならいつかは和馬さんと...の。
子供が欲しいしね。
あら変態。
私も大概に変態。
「それで。今日は暇なんだよね?確か星羅さんにプレゼント渡してから」
「そ、そうだけど」
「じゃあ私に付き合える?」
「どこに行くの?」
「うん。実はお父さんに何かお供えしようかって思った」
「...葉月...」
私は複雑な顔をする和馬さんを見る。
そしてまた手をゆっくり私の手で包み込む。
それから和馬さんをまた見る。
赤くなる。
柔和になってから和馬さんに寄り添った。
「私、もう大丈夫。貴方が居るから」
「...だけど...」
「和馬さんが居たからここまで歩いて来れた。和馬さんが全てを救ってくれた。全部、和馬さんがね。私は...それが嬉しくて。そして私も変わらなきゃって」
「...」
和馬さんは私の手を握り返す。
それから私の頭を撫でてきてくれた。
そうなんだよね。
これが私は大好きなんだ。
和馬さんに撫でられるのが、だ。
「...和馬さんは...どう思う?私の行動」
「俺は葉月がしたい様にすれば良いと思ってるよ。葉月。凄いな。そういう決断が出来るのが。素晴らしいと思うし尊敬するよ」
「和馬さん...」
「...俺は悲しみを覆い隠しているから。情けない人間だから」
「そんな事無いよ。和馬さん」
「いや。覆い隠している。だから情けない人間には間違いないんだ。だけど」
私は和馬さんを見る。
すると和馬さんは私を見据えてから「有難う。そういう決断をしてくれて。俺は...嬉しい。俺も頑張らなきゃって思うから」と話した。
それから和馬さんはまた頭をゆっくり撫でてくれた。
私はくすぐったい気持ちを抱きながらも笑顔で和馬さんを見る。
「それで。どこに買いに行こうかな」
「私は...商店街で花束を買おうって思ってる」
「...葉月の親父さんは...確かフリージャーが好きだったんじゃなかったか?」
「確かにね。でもフリージャー意外にも好きなお花は沢山あったよ」
「ああ。そうなんだね」
和馬さんは私の頭から手を退ける。
それから「じゃあ早速。外に行く?」と言ってきた。
私は頷きながら和馬さんに笑みを浮かべる。
それから私は「じゃあ部屋から出るね」と言ってからそのまま私は手を振る。
「葉月」
「?...何?和馬さん」
「...悩み事は無いとは思うけど。もし何かあったら言うんだ。絶対に」
「優しいね。和馬さん。大好き。大丈夫。私は絶対に強くなる」
「...そうか」
それから和馬さんの部屋から私は出た。
そして私は部屋から出てからそのまま自室に戻った。
鼻歌を交えてから私は選ぶ。
今日の服装を、だ。
☆
散々服装に悩んだけど。
あくまで5月。
春コーデにしてみた。
鮮やかなピンク色のスカートにしてみた。
私はそれから和馬さんの前に出る。
「あ、かずh...。...!?」
「どう?和馬さん。似合うかな」
「...か、可愛いよ」
和馬さんは恥ずかしがりながらそう言う。
私は赤面しながらモジモジする。
それから和馬さんを見た。
何かその、うん。
「か、和馬さんのエッチ」
「は、ふぁ!?」
「な、何だかいやらしいもん」
「何でだ!?俺はそんな気はない!」
私はジト目をしながら胸を隠す仕草をした。
和馬さんは慌てる。
ふふっ。和馬さん可愛い。
そう考えながら私は和馬さんに苦笑する。
「ごめんなさい。和馬さん。おふざけが過ぎました。...嬉しい。本当に」
和馬さんは私を見てから目をパチクリする。
それから胸を撫で下ろした。
そして私に「ビックリした。もう」と話す。
私はその言葉に「ゴメンゴメン」と謝る。
「ねえ。和馬さん」
「うん?」
「格好良いよ。和馬さんの服装。アハハ」
「...そ、そうか」
私は和馬さんの全身のコーデを見てから言う。
和馬さんは私の言葉に「ロクでもないコーデでゴメン。苦手なんだ。こういう時の服装を選ぶのが」と言う。
言葉に私は首を振った。
「どんなコーデも貴方らしいコーデだから好きだよ私。貴方の事が好きだから。変わらず好きだから」
「...」
「?」
「葉月のエッチ」
「な、何で?!」
「アハハ。真似してみただけだよ。葉月。すまない」
「もー」
そんな和馬さんに「行くよ。もう」と意地悪な気持ちに拗ねた様に反応した。
和馬さんは「悪かった」と慌てる。
私はその言葉を受けてからクスクスと笑いながら和馬さんを見て玄関に向かう。
それから玄関から出て鍵をかけた。
☆
私は有能な人じゃない。
そして...有能じゃないから配慮も薄い。
お父さんの事をずっと胸に秘めていて...しかも隠していた。
無いモノにしていたのだ。
私は愚かな人間だ。
だけど。
「和馬さん的に何が良いと思う?」
「俺?...そうだね。俺的には...何を買っても喜ぶと思う。愛娘からの愛だったら」
「そうかな」
「ああ。...例えば...そうだね。...どんな本でも良いしそれこそ花束でも良いし。多分何でも受け付けてくれるよ。そういうものじゃないかな。お父さんって」
「...そうだね」
「...俺の親父に対して接するのと同じだよ」
そして和馬さんはニコッとする。
私はその姿を見てから顎を撫でる。
それから私達は商店街に来た。
ここは...本当に良い居場所だなって思う。
暖かくなる。
「和馬さんの言った通りに...選んでみる。...考えてから」
「...例えば手作りでも良いと思うよ。...買うだけじゃなくて」
「...思いとかでも?」
「それでも良いんじゃないかな」
「そうだね。それでも良いんじゃないかな」
「...じゃあ和馬さんが欲しいものは?」
和馬さんなら何が欲しい?
という感じで見てくる。
そしてジッと和馬さんを見つめる。
和馬さんは「そ、そうだね」と慌てた。
「...俺はアニメグッズかな」
「そっか。...私も」
そして私達は手を繋いで見ていると「2人とも」と声がした。
顔を上げると...お母さんが居た。
在里涼子(ありさとりょうこ)。
若々しい感じの女性。
40代ぐらいだけど...とてもそうは見えない。
この遺伝子が入っているから私も可愛いんだろうけど。
スーツ姿で買い出しの様な事をしており私達を見ながら「うふふ。仲睦まじいわね」と笑顔になる。
「珍しいねお母さん。今日は...仕事が...」
「...そうね。...たまの早めの休みだから2人の元に早く帰らなきゃって思ってね」
「...」
手を繋いだりしていた私達の姿を見ていたのだろうか。
そう思いながら少し考える。
もしだけど。
血が繋がってないとはいえ実の兄妹が付き合うとかお母さん...どう思うんだろう。
そんなの気持ちが悪いって思うかな。
不安が巡るというか。
つい過った。
「...ね、ねえ。お母さん...その」
「言わなくても分かるわよ」
「え?」
「...葉月。貴方...もしかして和馬くんが異性として好きなの?隠そうとしても隠せないわよ」
「え?ど...どうして?」
「...貴方の行動を見ていれば分かるわ。...それに貴方は私が気持ち悪いとか思うのじゃないかって思っているでしょう?娘の気持ちなんて手に取るぐらい分かるわ」
「...そ、そうだけど...」
「私は気持ち悪いなんて思わないわよ」
そしてお母さんは私を見る。
それから「私は...貴方が幸せになるなら和馬くんと付き合っても良いって思うわ」と宣言する様に言った。
私は「!」と思う。
お母さんは和馬さんを見る。
「...和馬くん」
「...はい?」
「私の娘は良い子?」
「...はい。とても可愛くて。...義妹としては愛おしいです。...だけど俺は...恋愛対象で付き合うとかまだ到底考えれません」
「...そうなのね」
お母さんは私を見る。
それから抱きしめて来た。
私は「...お母さん?」と反応する。
するとお母さんは「私達。お父さんとはね。生まれも育ちも別々。血が繋がってない元兄妹だった」と話しながら私を見てくる。
「同じよ。貴方と」
「...じゃあ...血が繋がってない兄妹同士で結婚したの?」
「そう。貴方も同じ感じだったなんて思わなかったけどね。...不思議ね。巡る因果っていうのは」
「...」
その言葉に私はお母さんの姿を見つつ。
じわっと涙が浮かぶ。
それから私はお母さんを抱きしめた。
愛しい人を失った痛みは...相当なものだと思う。
私だって悲しいのにお母さんはそれでも...。
そう思いながら私はお母さんを抱きしめて嗚咽を漏らした。
お父さんを失って悲しいし...お母さんに対しては付き合っても良いって言われてとても嬉しいし。
だけど。
心の歯車は複雑な感情で回らない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます