第17話 ٩( 'ω' )و
☆
和馬さんが遅い。
何をしているのだろうか、いかがわしい事態になっているのだろうか、と不安に思っていた矢先の事だった。
家に和馬さんが帰って来た。
早速私は迎えに行く。
そして和馬さんの顔を見てからハッとする。
「た、ただいま。葉月」
「...和馬さん。また何かあった?」
「な、何も」
「...そう。...だったら良いけど」
私は内心のこのもどかしさを胸に秘めながらそそくさと自室に向かう和馬さんを見送ってから胸に手を添える。
何かあった。
それも絶対的に何かあった。
そう思いながら私は言葉を飲み込む。
「...行ってほしくない」
そういう言葉を、だ。
私は、はぁ、と盛大に溜息を吐きながらそのままリビングに戻る。
それから家事をしていたが全く集中出来ない。
ソワソワするのだ。
「...ええい」
私はそう思いながら和馬さんの部屋に行く。
それからノックをする。
だが返事が無い。
何をしているのか、と思いながらドアを開ける。
すると和馬さんは疲れていたのか眠っている。
「...そういう事か」
苦笑しながら私は和馬さんの部屋に入る。
それから私は膝を折りながら横になっている和馬さんの目線に視線を合わせる。
ふふ。可愛いな。
そう思いながら和馬さんに笑みを浮かべる。
そして...和馬さんの手を握る。
で。
覗いていたら何だか...その。
「...」
いけない事をしている様な気分だけど。
良いよね別に。
告白もしたし、と思いながらそのまま顔を近付ける。
それからそのままキスをしようと思ったのだが。
その前に私のスマホがテロンと鳴る。
和馬さんが起きてしまった。
「...?...葉月?何をしているんだ」
「い、いや!?な、何でもないよ!様子見を...」
「ああ。そうなのか」
「...さ、さあ...て。...家事をしないと」
そのまま私は駆け出す。
それからドアを開けてから表に出る。
心臓がバクバクバクバクと鳴り響いていた。
いけない事を...している。
だけど。
☆
「...アイツめ...」
手を握られた事は知っていたが。
そのまま俺にキスをしようとしてきていた。
それが分かった。
何故分かったかって?
俺はいつも眠りが浅いのだ。
「...」
それにしても...何で俺なんだろうか。
俺の様な奴に...2人も恋をしている女の子が居る。
だけどそんなに良い奴じゃ無いんだ俺は。
母さんを...失ってから。
好きって感じも失ったしな。
「...」
葉月。
乙武さん。
この2人はそれでも俺が好きだという。
何故。
一体何故こんな俺を。
「はぁ...」
俺は溜息を吐きながらそのままベッドから起き上がる。
するとスマホが鳴った。
というか電話がかかってきた。
俺は「?」を浮かべて仰天する。
「...お、乙武さん?」
テレビ電話。
ギョッとしながら俺はスマホを開ける。
そして出ると...乙武さんの部屋が映った。
それから乙武さんが出る。
「やっほー。和馬きゅん」
「...お、乙武さん?どうしたの?」
「うん。実はねぇ。...私の誕生日が近いの」
「え?何日?」
「5月3日。だから何かちょーだい」
「...何か頂戴って...その...」
「彼氏のプレゼントが欲しいな」
「...か、彼氏じゃないよ?」
俺はビックリしながら汗をかく。
すると乙武さんは「まあそれは冗談で良いけど。...ねえねえ。それより部屋を映してよ」と笑顔になる。
俺は更に「...へ?」となって冷や汗をかく。
「お、乙武さん。それは無理...片付いてない...」
「え?超ケチだね。私の部屋はこんな感じなのに?」
そして少しだけ服だらけの乱雑な部屋を映す。
お、おう。
思いながら俺は汗をかきながら乙武さんがまた映る。
それからニコッとする乙武さん。
「観念するのだ」
「...か、観念って...」
「部屋見せて?」
「...」
しかしアニメグッズがいっぱい...。
そう思ったのだが「むぅ。ドケチ。嫌なら嫌でも良いけど...だけどその分、学校でも色々な事をしようかなぁ」とニヤニヤしながら乙武さんは呟く。
俺はその言葉に「それだけは勘弁して下さい...」と言ってから仕方が無くそのまま部屋を映した。
すると乙武さんは「おお!٩( 'ω' )و」という感じで部屋を見渡す。
「ねえねえ!そっちのウサギリボンの髪の毛の子は!?」
「これは...五◯分の...花嫁」
「ほほう!可愛いね!そっちの子は!?そっちは!?」
「お、乙武さん。落ち着いて」
そして乙武さんはあれこれ質問してくる。
俺は対応を1からしてから時折笑い。
それから時折恥じらった。
乙武さんはそれを一切嫌がらずに聞いた。
「和馬くんは色々なフィギュア。趣味を持っているんだね」
「あ、うん」
「...じゃあ最後にお願いかな」
「...は、はい。お願いとは」
「私の名前は乙武星羅と言います」
「?...はい」
「うん。私のあくまで苗字で無い名前は?」
「...星羅?」
「ピンポーン。分かっているじゃない。じゃあ次からそれで呼んでね」
「...ha?」
いきなりの事に俺は氷河期の様に凍りつく。
今なんて言った。
そう思いながら慌てる。
「無理だよそんなの!!!!?」と愕然としながら。
すると「( ・∇・)だってたっちゃんだって私の事を彼女では無いのにせいちゃんって呼んでくれています」と笑顔になる。
「彼氏がそんな呼び方をしないでどうするの?」
「だ、だから付き合ってない...」
「でもあくまでキスしたよね?」
「うん。確かにそうだけど!でもそれ乙武さん...」
「はいブブー!で、私は?」
「で、でも」
「乙武その後はなんでしょう?」
「...星羅...」
「よしよし( ゚д゚)」
よしよし、じゃないよ。
そう思いながら俺はおと...じゃなかった。
星羅さんを見る。
すると星羅さんは更に要求してきた。
「私の名前は星羅さんです。だけど(さん)は抜きで」
「無理だよ!!!!?」
「_(┐「ε:)_」
「星羅さんでお願いします...」
「仕方がないのう」
それから星羅さんはそのまま笑みを浮かべてから柔和になる。
そして「じゃあお風呂に入るね。また」と手を振った。
ニコニコしながら、だ。
電話が切れる。
おふ...お風呂って...。
俺は想像して赤面してしまった。
リア充って怖いな...。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます