あの日と同じ空の色で

悠真

 夏も盛りに向かうころ、町役場からの帰り道で、空き地の真ん中に大きなビーチパラソルがあった。


 その下にアイスクリームと書いた手書き看板が立ててあり、その脇に売り子の若い女性が一人でいるのを見て、僕はふと足を止めた。

 襟のついた向日葵柄の白いシャツと麦わら帽子。

 彼女はうちわであおぎながら空いた手で白い額を拭って、道を挟んで突っ立っている僕をひと目見てから汗で背中にくっついたシャツに風を通すしぐさをした。


 僕が車の往来を見てから道を渡ってゆくと、彼女は涼しい声で「いらっしゃい」といった。

 そばで見て思ったが、彼女はまだ学生で、十代後半のようだった。


 僕がアイスを買うと、彼女は自分がさっきまで座っていた木製の丸椅子をビーチパラソルの柄のそばに置いた。


「どうぞ」

「どうも」


 僕は、それにそっと座った。

 まだ座面は、熱を帯びている。

 思わず顔を上げると、彼女は国道を向いたまま、うちわでしきりに目にかかりそうな長い前髪をあおいでいた。


 パラソルの影が薄くぼやけている。

 今朝のテレビニュースは、今年は冷夏だと伝えていた。

 梅雨が明けてからもすっきりしない天候が続いている。

 それでも真夏に何時間もエアコンのない屋外で物を売るのは、過酷な労働に違いない。


 まもなくアイスを食べ終えて包装を持て余すと、彼女は僕の手からそれを取り去った。

 彼女の青白い指先は、しっとりと濡れていた。

 初めて出会ったときは、たしかそんなふうだった。

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