その42 究極の必殺技
左腕に食らった〈
勇者アシュルさえも侵したとされる最悪の呪いに、俺は打ち勝った。
「ナゼ、キイテイナイ? オマエ、シヌハズ」
「伝説の魔剣も、俺には通用しなかったというだけだ」
俺を侵食しようとしていた闇は消え、紫ではなく赤い血が流れている。
俺に毒は効かない。呪いも通用しない。
呪いをかけた張本人が、「
最初に殺した神の死に際の表情を思い出し、複雑な気持ちになった。
だが、俺は進み続けると決めた。伝説はここから始まる。
(観客が来たな)
背後から多くの視線を感じる。
〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉の幹部五人に、教師陣が十名ほど。
わざわざ目で確認せずとも気配を察知すればわかることだ。
そして、グレイソン、クルリン、ミクリン。
三人とも上手くやってくれたようだ。今回の戦いで最も重要な観客であるセレナをしっかり連れてきている。
王都で繰り広げられる、魔王と謎の少年の大迫力の
異次元の剣捌きに、異次元の魔力。
激しく降り続いていた雨も止み、清らかな空には沈みかけている太陽が見えていた。
『セレナさん、危ない!』
グレイソンが叫んだ。
魔王セトが繰り出した鋭い斬撃。
一本の線のように真っ直ぐな軌道を、俺は目視する。普通の人間では認識すらできないほどの速さ。
俺の周りは時の流れが遅い。スローな世界で、俺は素早く動くことができる。
セレナは自分の死を受け入れるかのように、一切の抵抗を見せようとせず、目をつぶっていた。このままでは、彼女の体は斬撃で二つに裂かれてしまう。
「お前に死んでもらったら俺が困る」
俺は彼女を守っていた。
金髪ではない、黒髪の俺。セレナの隣にいる、パッとしない生徒としての姿だ。
背中を向け、決め
彼女の瞳が俺を捉え、そして次の瞬間には見失った。
ほんの一瞬だ。
彼女が俺を認識する時間は僅か。だが、これが全て。彼女には伝わった。
(あとは、魔王を塵にしてやるか)
セレナが金髪で良かった。
変身直前に言葉を交わした人物から影響を受ける〈
奴は息を切らしていた。最大質力の魔力をずっと維持していれば、誰だってそうなる。王都に来るまでにも徐々に蓄積されていた疲労のおかげで、いくらかおとなしい魔王。
「目に焼きつけるがいい。俺の必殺を」
――〈王国通り〉に存在する全ての生命体が俺に注意を向けた。
空を飛び回る鳥も、地面を這う小さな虫も。
俺だけを見ている。
西園寺オスカーの体から、最高質力の魔力が放たれた。
世界が雄叫びを上げ、爆音が
「邪知暴虐の魔王セトよ、俺の言葉に耳を傾けよ」
セトは動かない。いや、俺の
「俺はかつて、八柱の神を殺した。神を狩ることで、
一度王都中に拡散した魔力が、再び俺の剣に集められていく。
もはや今王都に存在する輝きは俺の剣のみ。それはある者にとっては希望の光だが、ある者にとっては絶望の光となる。
俺の髪色は黒に戻っていたが、光が強くて誰も確認することなどできないだろう。
「この世界に再び秩序を――〈
剣先を
溜められた
この場にいる観客は光から目を背け、視界が焼けてしまわないように踏ん張っている。
――最後の
八個の
「
一度は失われた光が、王都の街に戻っていく。
俺は魔王セトの消滅を確認した後、誰の目にも映らずに王都を去った。
《オスカーの
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※それぞれの
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