第33話
未だに名前も知らない自称妖怪が我が家に棲みついて3日目の夜は、記憶になかった。
今。目覚めたら頭上から朝日らしき光が差し込んでいたからそう悟った。
はて。1日目はベッドの端で胡座をかいたまま眠りに付き、目覚めは襲われた。
2日目。は湯たんぽとして羽交い締めにされながら寝落ち—まさに“オち”—、目が覚めたら首に長ねぎが巻かれていて、服は全て選ばれ、目につく所には複数虫刺されの痕が在った。
3日目。
どう来る。
そうっと開けた瞼の隙間から辺りを窺う。
我が家とはいえ警戒心ビンビンだ。
「キリ」
「わ」
視界が開ききったと同時に狙ったかのように姿を現した妖怪。綺麗な顔が目の前いっぱい。
驚いた私はそのまま静止した。
まだ昨日のことも明確に思い出せないのに、
「あ?」
反応が気に食わなかったのか眉間に皺が寄った。
何か…。
何かこの光景、見たことあるような…。昨日?ううん。それより前?
「何だ…?」
唇の端から溢れる言葉。警戒していたより普通の登場だったのに。おかしいな。
「? まぁいい。俺は朝の内にやる事があるから先に出る」
「は、はい…」
って
二人暮らしが当たり前のように…!?
「ちょ、っ」
残香を置いて寝室を出て行こうとする妖怪を引き止めようと焦った私は掛け布団に躓いてベッドから転げ落ちそうになった。
「わ」
腕を前に突き出し目を瞑ったけれど——床には落ちなかった。
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