第42話 植物系モンスターダンジョンのラスボス②

やがて俺達はラスボス部屋の前に辿り着いた。

扉を開けるとそこは茶色1色の砂漠地帯だった。10年前と同じならトレントがラスボスだろうか?俺は1度だけしか潜っていないので、他のモンスターがラスボスになっている可能性も有る。


砂漠地帯にはサボテンが花を咲かせていた。赤,白、黄色の輝くような美しい花だ。雄蕊に触ると雄蕊が動く。虫の少ない砂漠で花粉を沢山着けて運んでもらおうと言う仕組みだ。このサボテンは食人植物ではない。

この太い棒のようなサボテンの幹には無数の穴が空いている。小鳥が巣を作っているのだ。幹の中は涼しいのだ。とげとげの幹は天敵の蛇や獣も登って来れない。天然の要塞だ。


そのサボテンの中に食用のサボテンが有る。掌状の団扇サボテンとも呼ばれていて大きなピンクの実をつける。この実が実に美味い。洋酒のつまみにすると絶品だ。このサボテンの樹液を集めて酒が出来るしサボテンステーキも美味い。捨てる所が無い有用植物だ。

収集人としてはこれはぜったいに持って帰りたい。俺達は夢中になってサボテン収集していたがドシンドシンと地面が跳ね上がるような振動が起きた。


いよいよラスボスのお出ましか?


遠くに見える山の陰からその山と同じくらいの高さの巨木が現れてこっちに向って来る。2本足で歩いていて、足が地に着くたびに地面が揺れる。

地響きはますます大きくなる。トレントだ。2㎞位の距離があったのにもうあと100mにまで迫って来た。

俺達を視認すると急に枝葉を落して1本の丸太状になって俺達を圧し潰そうと転がって来る。幹の直径は30m、長さ500mのぶっとい丸太が猛スピードで転がって来る。


あと10mというところで俺達は浮上した。トレントが俺たちの真下に来た時、トレントは急に新たな枝を伸ばしてきた。

危ない!真っ直ぐな葉の無い枝の先端は尖っていて、すんでのところで枝攻撃を躱し、その枝を強制収納出来るのか試してみた。


出来た!伸びてきた枝はことごとく収納出来た。

次にトレント本体が収納可能かどうか試してみたが、予想以上の抵抗にあった。


仕方ない、滅多切りにして幹の中で動き回る魔石を破壊しよう。あの時はそれで討伐出来た。

俺が倒しても紗耶香と紫苑の為にならないので、2人に任せることにした。


2人は4種超合金製の刀を手にして縦横無尽に切りまくる。

500mの長さだったトレントがあっと言う間に直径30m×1mの細切れが500個出来上がった。最期の1mを切った所でようよう魔石の破壊に成功した。


討伐成功だ。

ドロップ品は傷1つ無い魔石と加工されたトレント木材製品だった。

例えばトレント製の魔法の杖。

魔力が多く含まれているので魔法の威力が倍以上になる。(但し使い手の力量に左右される。

例えばトレント製の木刀。

折れにくく、軽く、硬いのでゴブリン程度なら1檄で殺せるので初心者や女性の収集人の護身用に人気がある。F級ダンジョンの中層までならこの木刀でも通用する。


俺も初心者の頃は愛用していた。流石にF級ダンジョンの踏破後は鉄の剣に変更したものだった。

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