God is not exist

第2話

銜えた煙草に火をつけた俺は、四月の温かい日差しに負けて、着ていたスーツの上着を脱いだ。




ネクタイを緩めながら、髪をかきあげる。




「あーにきっ」




噴水の縁に腰掛けてた俺に、スーツ姿で近付いて来るユウシ。




「ここに居たんだ?捜したし」




慣れないスーツに早くも疲れたらしく「肩請った」なんて言いながら、ユウシは俺の隣に腰を下ろした。




「どうして外にいんの?」




『ヤニ切れだ。どーせ室内は禁煙だろ』




俺が人差し指と中指の間に挟んでいた煙草を見せると、ユウシは目を伏せてクスッと笑いを漏らした。




『んだよ?』




「いや、てっきり帰っちゃったのかと思ったから」




『馬鹿』




同じようにクスッと笑った俺は、青い空をバックに美しく建っているチャペルを見上げた。




「二人を祝福するような天気だなぁー」




空を見上げたユウシが、ポツンとそんな事を呟く。




今日はケイの結婚式。




「俺さ、兄貴は式に来ないと思ってたよ」




ポケットから煙草を取り出したユウシが、口に銜えながら遠慮がちにそんな事を呟いた。

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