第21話 山田はこの修羅場をどう乗り切るのか? ACT2
「え? マジってどういうこと?」と俺が聞くと。
「山田、お前本当にその子と一緒暮らしているのか?」
「一緒にと言うのは……」
すると長野は繭に近寄りまじまじと見て言うのだ。
「君、名前はなんていうの?」と。
「私ですか? 私は
「梨積さんか……で君は今幾つなの?」
そう聞く長野に繭は平然と答えるのだった。
「18ですけど」
「18? じゃぁ君は高校3年生なの?」
長野は繭にそう聞く。
「……ええっと。普通ならそうなんですけどね……ちょっと訳ありでだぶちゃいまして……この春から2年生です」
「そうか……山田が女性と一緒に暮らしているって? 聞いてまさか女子高生だったとは」と長野は言うのだ。そしてまた繭に言う。
「梨積さん! いや繭ちゃんか。ちょっと君に話があるから中に入れてもらえるかな?」
そう言って長野は強引に家に上がり込んできたのだった。
そしてリビングで俺と対面するように座ると、いきなり長野は切り出したのだ。
「山田! お前いったいどうゆうことなんだ?」
「な、なんだよ急に」
「繭ちゃんをだまして同居しているとかじゃあるまいな!」
「はぁ? 何言ってんだよ。俺は繭を騙してなんかいないぞ!」
そんな俺に長野はスマホ画面を見せてきた。それはネットニュースの記事だった。
その記事にはこう書かれていた。
『女子高生と同居する30代男性、その実態は……』
「なんだこの記事。俺は繭を騙してなんかいないぞ!」
すると長野はスマホ画面を俺に見せてきた。
そしてそこに書かれているのは……。
「女子高生と一緒に住む男、その正体とは」
そんな見出しが書かれていたのだ。そしてそこにはこう書かれていた。
『女子高生と同居している男はなんと無職でしかも引きこもりだというのだ』
「なんだ……これは」
「山田、お前これどうゆうことだ?」
「いや、俺は無職でも引きこもりでもないぞ!」
「じゃぁこの記事はどう説明するんだ。繭ちゃんをだまして一緒に住んでいるのはお前だろ! 女子高生と同棲なんて犯罪だぞ!」
長野は俺にそう言うが、俺だって訳も分からずに今に至っているのだ。
「違うって、俺はだまそうなんて思ってねぇし、そんなんでどうやって繭をだましこもうってんだ!」
「じゃぁなんだよこれ! 女子高生と一緒に住む男は無職で引きこもりだと書いてあるじゃないか」
「だからなんで俺が無職で引きこもりになっちまうんだよ。おかしいだろ俺が……そんなネットニュースを俺にあてがえるな!」
「お前……まさか本当に同棲しているのか?」
「だからこの前言ったろ! 訳ありなんだって!」
長野は少し考えるようなそぶりをしながらぼっそりと言うのだ。
「なぁ山田もしかしてお前……この子と、その……やったのか?」
「な、なに言ってんだよ! そんなことするわけねぇだろ!」
「本当か?」ぎろりと長野の冷たい視線が俺をつらぬく。
「本当だ! 俺は何もそんなやましいことはやっていない!」
俺がきっぱりと断言すると繭が……「あっ! でもキスはしたよねぇ」とにヘラとした顔で言う。
「キ、キスだとぉー!! 女子高生とキスしただとう! お前はもう犯罪者だ! この僕でさえ女子高生とはキスさえしていねぇていうのに!」
おいおい、よく言うぜ長野。お前だって中井さんと付き合っていて、今は町村さんとも付き合っているって言っていたじゃないか!」
「な、なんでそれを!」
「お前自分で言っていたじゃないか」と俺が言うと。
「あ、あれは……その……」
長野は急にしどろもどろになったのだ。
そしてそんな時だ。俺のスマホが鳴った。
ゲッ! 部長からだ!
こんな状況だが出ねぇわけにはいかない。
「はい山田です」
「はぁーい、あなたの恋人マリナでぇーす!」
相変わらずと言うかやけにと言うか、テンションがバカ高い声で返ってきた。
「ねぇねぇ山田クゥン。今ねぇマリナ山田君のお家の前にいるんだよねぇ。でさぁ―外にまで聞こえるような大きな声がしているんだよねぇ。もしかして何かお取込み中だったりしてるの? 私入ってもいいかしら?」
と。
その言葉に俺は慌てて部屋の戸締りを確認して部長に言うのだ。
「今はちょっと、あのその……人がいるんで無理です」
俺がそう答えると繭がジトとした目で俺に言ったのだった。
「え? もしかして浮気してるんですか?」と。
「ば、馬鹿! そんなんじゃねぇよ!」
するとまた部長の声がする。
「ねぇ山田クゥン。私もう我慢できないから入っちゃうね!」
そう言って部長は電話をブツっと切った。
そしてしばらくして玄関のブザーが鳴る。
俺は長野と繭をほったらかしにして玄関まで行き、ドアを開けたのだ。
「部長!」とドアの前でニコニコしながら立っているマリナ部長に言ったのだった。
するとマリナ部長は人差し指を立て口に持って行くと俺に言う。
「シーッ! 静かにするのよ」
そんな様子を見ていた繭が声をかけてきた。
「山田さん誰なんですか? その人……」
その声に俺がその方を振り向くとそこには怪我んそうな顔をした繭がじろりと俺をにらんでいた。
「あっ! おい!」と俺が叫んだ瞬間だった、マリナ部長はにこっと微笑むと。
「こんにちは、私は山田君の上司の雨宮と言います。いつもうちの山田君がお世話になってます」と言って軽く頭を下げたのだ。
そのマリナ部長の言葉に繭は……。
「お、お世話になってます?」と呟いたのだ。
「で、繭ちゃんだったわね。あなた私の山田君に何か用でも?」
いきなりのマリナ部長の言葉に繭は……。
「あ、あの……私は山田さんじゃなくて……」と言いかけた時だ。
その繭の言葉にかぶせるようにしてマリナ部長は言うのだ。
「あなたねぇ! 私の山田君に何か用なのって聞いているのよ!」
「わ、私の? え? あ、あの……」
するとそんなマリナ部長はいきなり俺の腕をがしっと掴むと自分の胸に押し付けるようにした。そして言うのだった。
「この通り彼は私の彼氏なのよ」と。
そんなマリナ部長の言葉に繭は……
「え? あ、あの! わ、私……」と慌てふためく。
そんな時だ。長野が俺に言うのだ。
「山田お前部長とも付き合っていたのか?」
その言葉に俺は慌てて否定する。
「ち、ちがうって! これはその」
俺がそう言いかけた時だ。また玄関のブザーが鳴ったのだ。
そして戸の開く音がしたと思ったらそこにはなんと水瀬がいたのだった。
「こんにちはぁ~水瀬でぇ―す! 鍵あいていましたよぉ! おおおおお!」
俺の部屋の中から見えたこの情景に水瀬は玄関に入る足を止めた。
そして水瀬は俺に言う。
「先輩! これは一体どうゆう事なんですか?」
「いや、これには訳があってだな……」
「なんで部長がいるんですか? ……あ、長野さんまで」
そして水瀬の視線は必然的に繭の方に向けられた。
「お、女の子? あ、この子……確か先輩の従妹」
「従妹?」長野が意味ありげに言う。
「そうですこの前駅で会ったときに先輩そう言っていましたけど……」
「おいおい山田、水瀬さんそんな嘘を言っていたのかよ」
「いや、……それは何と言うかその……」
じんわりと額に汗がにじみ出る。
ああ、もうどうにでもなれ!
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