鳥人間コンテスト
栞田青衣
人身事故
僕の家は比較的、平凡だったように思われる。
それは、なぜか第一の理由としては天皇崇拝する家庭だったからだ。
天皇崇拝というと、「日本万歳」で終わるような気がするのだが、そうではなく父と母がごく普通に働く、いたって普通の家庭なのだ。
そして、僕はある時に気づいた。
僕にとっての身を挺するとはどういうことか。
僕には、彼女がいてどういう人かというと、端的に言って、塩。どこをとっても平均的と言わんばかりの平均さ、なのである。特段、特筆すべき点もないし、どこをとっても平均的なただ、特別に優れているところがあるとすれば、そこは、塩であることだ。
僕は、輪廻を解脱する方法を考えた。
それは、なぜかというと僕には、好きな人がおり、それは5個上くらいの先輩なのだけれど、できれば、付き合いたかった。その先輩は僕らと違って明るくて面白くてユーモアがあり、まるで夏の太陽のような明るさで周りを爆笑の渦に包みこんでいるからだ。
その5個上の先輩は、西新宿のとある場所で、こういったのだ。
「生と死について考えてみない?」
僕はその生と死の世界に巻きこまれていくのである。
まず、様々な自殺方法を試した。
リスカ。
おかげで僕の腕は傷だらけになる。
ガス窒息死。
そもそも家にガスがなかった。
首吊り。
ハードルが高かった。まず、家にそのような器具がない。そして、ネクタイで死のうかと思ったが、ネクタイが短すぎて不可能だ。
僕は、その一部始終を僕の彼女に観察されていた。
僕は本当に彼女のことが好きなのだろうか。
まあ、話せば楽しい。
一緒に食べに行ったりするし。
でも、僕にとって必要なのってそういう事ではなくて、もっと深くて単純なものだったのではないだろうかと思ってしまった。
僕はオルニチン回路でいうと、カルバモイルリン酸とか、尿素なのではないだろうか。
そして、僕はオルニチン回路を離脱していく。
東日本大震災があったときに僕は思った。
簡単に人って死ぬんだな、と。
僕が思っていた、大切とか自由とかってたかがしれてて、実は、簡単に壊せるものなんだということを。
まず、飛び込みの準備をした。
方法はこれしかないと思った。
これで、死ねるなら。
テレビでよくあるような、自分の周りに最後のお別れをしてから、それっぽい感じで挨拶をした。伝わっていたかどうかわからないけど。
悲しむ暇はないので、カバンと制服はそのままにしてやった。どこの学校かわかるように通っている学校の制服を着た。
駅のホームに立った。
さよなら、天皇。
今までありがとう、楽しかったよ。
あなたのために今から死にますね。
では。
僕は、持っていたカバンを東北新幹線に投げつけ、ホームに入ってくる電車めがけて
投身した。
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