☆第6話☆

襲いかかってきたハイゴブリン一体とマジックゴブリン5体すべてのゴブリンを倒し終え、テウスは少々混乱気味であった。しかしそれは、ゴブリンたちのことではないようだった。

「僕のパートナー、なんでこんなに強いん……?」

「スクティス、神様。強い、当然。」

「私もスキルボードに隠蔽かけてますけど、一応これでも"魔法神"ですからね。強くなきゃなんだって感じですよ。」

「「は!!??」」

「へ?」

「へ?じゃなくて、魔法神っつった?いま!」

「はい、言いましたが………?」

アクラは「なにかおかしいことでも?」って顔でこっちを見ていた。ていうか、スクティスも大きい声出るんだな。スクティスも知らなかったのか。じゃなくて!アクラが魔法神!?いや、確かになんかマグマの龍出してたけども!絶対にゴブリンに対してやる攻撃ではなかったけども!!


「いや、まじか…僕のパートナー、守護神と魔法神かよ……神様の7分の2もいんじゃん。」

「はい?7分の2?8分の2ですよ??」

「うん。7人、違う。8人、合ってる。」

「へ?」

テウスが住んでいる教会は孤児院があるくらいだから、それなりに規模が大きく、協会図書館まで設置されてあるくらいだ。テウスはその図書館の雰囲気がすきで、よく図書館に通って読書をしていたのだが……聖書のうちの一つである神歴書には「魔物ヲ統ベル魔王,7人ノ神タル賢者ニ封印サレタリ。」と書いてあった。つまり、現在この世界では神という存在は7人という認識なんだが……?

「だから、神様は8人いますって。守護神のスクティス、魔法神のアクラ、運気神のエイオン、時統神のフロノス、風雷神のアステス、水流神のイーヒュール、大地神のガイアナ。そして、その全ての神の頂点であり、この世界の創造者、最高神のアマテラス。この8人が神様です。」

「アマテラス?神歴書にはそんな名前は載ってなかったけど……」

「え?最高神ですよ?そんなわけないじゃないですか。本当ですか?」

黙って頷いて見せる。

「本当、なんですか。わたしたちのことは知られているのに、最高神は知られていない……」

アクラも自分たちのリーダー格である最高神が世に知られていないことが悲しいのだろう。アクラは感極まった表情をして、

「じゃぁ、わたしたちのほうが有名ってことですね!!よっしゃー!」

「「は?」」

「テウス様はともかく、なんでスクティスまで驚いてるんですか!?だって、あの最高神アマテラスよりも有名なんですよ!!??最高な名誉じゃないですか!」

「「はぁ。」」

心配したこっちが馬鹿だったらしい。どうやらアクラは目立ちたがりらしい。ってことはだ。言わなきゃならんことがある。最高神の話題を放っておいてでも絶対に警告しなければならないことが。

「アクラ、絶対に僕達以外に魔法神であることは言うな。スクティスもだ。絶対だ。」

「「え?なんで?」」

マジかコイツラ……スクティスもか…………

「この世界のみんなはなぁ、神様は天国にいるってことになってんだよ。なんなら、一部の輩がさ、神捕まえれば俺達最強だーっていうようになっちゃったからな。それが、こっちの世界に降りてきてるってわかったらどうなるかわかる?」

アクラとスクティスは一瞬考える素振りをしなかった。

「どういうことですか?」

わかんねぇのか……

「つまり僕達はそんな厄介なやつに狙われるってこと。命も。」

『総合レベルがアップしました。 0.1→10000』

どんどんと湧き上がって襲いかかってくる体が金色の巨人みたいなデカさのハンマーを持ったゴブリン、ジャイアントハンマーゴブリンキングをまだ展開され続けているマグマの龍が燃やしていっているなか、テウスは冷静な口調で言った。

「なるほど……?」

「自慢、できない?」

「そうだ。」

「…………分かった。」

「わかりました。」

よし、説得終了!

まぁ、なんかスクティスはすごい拒絶反応を示しているが……大丈夫だろう!


「そんなことよりもあの、テウス様。魔物共との戦利品取りませんか?」

「戦利品?」

少しテウスは考え、

「もしかして…いや、もしかしなくてもなんだが……それって…………魔石とかか!?あと、武器とかも落ちてるよね!?そういうのめっちゃ憧れてたんだよね!!」

いきなりのハイテンションにアクラとスクティスがあからさまに引いてるのが見えたがそんなの関係ねぇ!(ドヤ)憧れてたものなんだ。興奮したっておかしくないだろう!!

「……はいはい…早く取りましょう………」

スクティスよりも早く我を取り戻したアクラが、呆れたように僕に言った。

そして、僕とアクラは先程までゴブリン共がいた場所に行き、遅れてスクティスもやってきた。


先程までゴブリンたちがうじゃうじゃいた場所は、今は焼き尽くされ、灰が舞った跡だった。

地面を覆い尽くす灰の中に緑色、黄色の鉱石があった。

多分、これが"魔石"だろう……!

魔石というのは、いわゆる魔物の心臓核となるものだ。魔石は、その一つ一つの魔石に込められている魔力量がなくなることはないが、その魔石のカラーによって、魔石に込められている魔力の"硬さ"に差がある。魔力カラー茶色<緑色<青色<黄色<赤色<紫色<白色<虹色という順に右に行けば行くほど硬度が増す。ちなみに、今回のゴブリン共はマジックゴブリンとハイゴブリンが緑色、ジャイアントハンマーゴブリンキングが黄色だったらしい。

テウスはいそいそと地面を転がっている魔石を拾い上げた。

「あれ…?武器……というか、ドロップアイテムが無い………」

「あっ!えっと……それは…」

アクラがすんげぇ言いづらそうな顔をしていた。

「それは?」

「…焼き尽くしちゃいました……」

マジか、やりやがったな。

「ん?だったら、なんで魔石は焼かれてないの?」

「スクティス、守護した。宝石、好き。」

「スクティス!偉いぞ!!」

僕がスクティスの頭を撫でると、スクティスが驚いたような顔でジャンプし、後ろに行って間合いを取ってきた。

「テウス、頭、触った……?」

「?まぁ、撫でたわな。」

「スクティス、宝石好きだから、取っただけだし。」

「宝石じゃなくて魔石な?」

「宝石、好き。」

「魔石な」

「宝石、好き。」

もういいや。「宝石、好き」ボットになっちゃったスクティスさんは置いとこう。

そのままテウスはアクラとともに大量に落ちている魔石を【空間作成】で作った〘アイテムボックス〙に入れてった。


……外の世界で、魔物による人間国侵攻が始まろうとしていることも知らずに

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る