第2話「孤児」

彼はこの孤児院の常連だった。


貴族であり、優秀な「暗殺者」を育成、教育を生業に上り詰めた人である。



「お前には、暗殺者としての才能がある。

私のもとで訓練と教育を受け、一流の暗殺者として、私のもとで役に立て。」


彼が僕を見つめ、頭を撫でながらそう言った。




ある晩、孤児院は騒がしかった。

突如として現れた「暗殺者」の集団によって、襲撃され、皆殺された。


子供達や先生、全て…

辺りは血塗れ、悲痛な死に顔をしている人間たち。


ただ独り、生かされた僕は「暗殺者」の者にどこか…へと連れていかれた。




あの日、あの夜、僕はいつも見ていた貴族の別の一面を見た!


手には血塗れのナイフ…。

三年、囚われた院長を僕は殺した。


身動きのとれない彼女をジワジワと痛ぶりながら、最後は首をはね、殺してやった。


震えながら握ったナイフを彼女の頬に当てると、歪んだ彼女の顔が見える。


今までは逆の立場にいた僕は彼女の引きっつった顔を見て、手の震えが治まった。


まずはナイフの先で彼女の右太ももを軽く刺してみる。


手足を縛られ、椅子に座らされている彼女は悲鳴を上げた。


次はもっと深く…左太ももを刺す。

今度は悲痛な悲痛が上がる…。

次は…次は…と、足だけでなく腕や手などを数十ヶ所をナイフで切り付けていく。


彼女の悲鳴が…悲痛な顔が…僕を狂わせる。


最初は何も感じなかった…。

でも、今は苦痛で悶える彼女を見るのが楽しい…。


血が流れるのを見て、血飛沫が舞うのを見て、はじめて、微笑んだ。


僕は彼女の殺害で死んでいた心を取り戻せた。


僕は彼女の玩具であり、奴隷だった。

昼は貴族に売られ、夜は彼女を慰めるペット…

監禁され、首輪を嵌められた生活…


次第に心は死に、瞳は色褪せて言った。


そんな生活が終わったのだ。

彼のお陰で、僕の手で終わらせてやった。


死んでいた心が満たされたのだ…

彼女の血で染まった僕は彼女の悲痛な死に顔を見つめ、笑わずにはいられなかった。


三年も経っていたのに嘘の様な快感が僕の心を満たしたのだった。



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