第43話 新機能 実装
ボクとビビは、予定の時間に集合した。
「ヴァンパイア戦までたどり着けたのは、ボクたちだけみたいだね」
『掲示板を見ていると、ほとんどが【ホーンテッド・パレス】を攻略していないニャー』
まあ『
大ボスの登場も、「歯ごたえのあるボスと戦えたらいいね」という配慮からである。基本的にこのゲームは、スルーしても新天地に向かうことは可能だ。倒すと強いアイテムが出てくるため、攻略したくはなるけどね。
「おまたせ、ケント。ビビちゃんも」
ナインくんを連れて、ベルさんがやってきた。
ビビは口だけ器用に動かして、『よろしくニャン』と告げた。
「トワのおかげで強い銃が手に入ったから、早く試したいわ」
手にした『ハンドキャノン』を手に、ベルさんがウキウキする。
「ケントくーん、ベルちゃーん。こんばんはー」
トワさんが、ログインしてきた。
すしおくんも、のそのそと飼い主の後をついてくる。
「今日は、がんばろーねー」
トワさんはビビたちペット組を集めて、思い切り撫で回す。
『すしお、腰が浮いてるニャン。ボス戦が、楽しみで仕方がないんだニャー』
ヒソヒソと、ビビが教えてくれた。
「すしおくんって、ゲーム好きなの?」
『飼い主と行動するのが、なんでも好きなんだニャン。あいつは態度に出さないだけで、飼い主一家がみんな大好きだニャー』
その証拠に、すしおくんはトワさんの足にすり寄って甘えている。
「今日は、ご家族は?」
「えっとねー。ゴハンをテイクアウトにしてもらったー。久しぶりにパーティなんだー」
回転寿司を持ち帰り、手巻きパーティにしているという。
「ウチはゲームするからー、先に食べちゃったんだけどねー」
あははーと、トワさんが笑う。
「お寿司、いいわよね。サーモンの油って、ドッグフードにも使われているのよ。それだからか、ナインはサーモンが大好きなの」
もっとも、ペットに生のお刺身は危ないらしい。ベルさんはナインくんにお刺身を与える場合は、茹でるなどの加熱処理をしているそうだ。
ネコと同じで、イカやタコはだめなんだって。
「そうなんだー。うちのコも、サーモンは大好物で、よく食べるよー」
「ビビも好物です。焼いたものを与えていますけど」
マグロやサーモンと言えど、熱処理したほうが安全らしい。
大事を取って、我が家も茹でるか焼いて与えるようにしている。
「お寿司屋さんだと、別々でお刺身を切って売ってくれるから、うれしいよね」
トワさんの家でも、「どうせ、すしおのために切るから」と、ゴハンだけ家で炊いた。手巻き用の具だけを、テイクアウトしてきたんだとか。
「どもども。おまたせした。インしたお」
ホクサイくんを連れて、イチさんが最後に現れた。
「今日はよろしくおねがいしまつ」
「よろしくおねがいします」
全員集合したので、みんなであいさつをする。
なんかホクサイくんの頭上に、『よっ』という感じで顔文字がピョコって出てきたんだけど。
ホクサイくんだけじゃない。すしおくんも、なんか頭に顔文字が浮かんだ。
「今のリアクション、なんですか?」
「ゲームに新しく実装された、アクションポーズである」
ペットの心境や心理状態を表現するために、こういった顔文字エフェクトが出るようになったそうな。
精神状態のチェックは、AIが担当するという。鳴き声や体温、仕草で判断するんだとか。
ボクが熱を出している間に、大幅なアップデートがあったらしい。
「そんな新機能が、取り付けられたんですね」
「うむ。フレーバーとしては、楽しいのである」
なんだか、いいな。
ボクとビビは会話が通じるから、必要ないと言えばないんだけど。
なんだかビビが、ボクの袖を爪で引っ張ってくる。
「どうした、ビビ?」
ビビが、ペットたちのエフェクトを指差す。
ナインくんも、『ワン』と鳴きつつ顔文字で喜びを表現していた。
うらやましいのかな、ビビも。
「ビビも、あれをやってみる?」
聞いてみると、ビビが『ニャア』とうれしそうに鳴いた。
やっぱり、やってみたいようである。
ボクはビビといっしょに、新機能を試す。
「このアプリを、ダウンロードして」
ベルさんのレクチャーを受けて、アプリを取り込む。
「おっ、出てきた」
ビビが頭上に、ウインクする顔文字を表示した。
「おおー、それっぽいナリ!」
「なんとも、おちゃめな顔文字を選ぶねー」
イチさんとトワさんも、ビビの選択する顔文字の複雑さに興奮する。
「かがくのちからってすげー」
「ビビは、そういう範疇を超えていますよね、イチさん」
「うむ、まったくだ。もともとこのゲームは、ペットと人間の意思疎通を主題としていたらしいけどな」
PRFは、当初は動物の研究者と合同で開発・実験する予定のソフトだったとか。
ペットとゲームの中で遊べるようになるというのは、実は副産物的な意味合いらしい。
実際は、ペットの感情を交流を目的として作られた、医療実験なんだという。
とはいえ、結局資金が集まらなかった。ゲームとしてまず売り出し、評判がよかったら再度実験をしようとなったそう。
「ビビ氏の頭脳は、その領域を遥かに超えている」
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