忘れじの路紀

心星 文琴

まえがき

人生は、一つの大きな物語だ。


雨上がりの空、星の海、脈々と紡がれた愛すべき世界の耽美


そのどれもが、言葉を忘れるほどに美しい。


時折、思うことがある


私は、そのどれだけを知っているのだろうか?

私は、そのどれだけを愛せるのだろうか?


この世界は私が思うよりも、もっとずっと大きい。

私は、この広い宇宙において、小さな小さな泡沫に過ぎない。


きっと全てを愛することなんて、不可能だ。

一度通り過ぎてしまえば、もう二度と逢うことは叶わないかもしれない。


何もしなければ、いつかパチンと、泡のように音もなく弾けて、この世界から跡形もなく消えてしまうのだろう。


そうすれば、私の愛したモノ達は往く場所を失い、私がいなくなった世界をあてもなく彷徨い、やがて跡形もなく消えてしまうのだろう。


だから、決して忘れることのないように。

私は、私の人生の全てをかけて、世界の耽美を愛すると決めた。


一度刻めば心に残る。

そうすれば、また必ず逢えるから。


そんな繰り返しが、いつか山のように積み上がった時


仮に世界の全部を愛せなかったとしても


きっと私は、世界を愛したことになるだろう。


これは、私の愛の旅程。


世界の耽美を愛したいという、無垢で果てのない好奇心。


そんな私の物語だ。

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