第4話 狼人間
==とある村==
子供の頃、父親と母親が普通ではない事を知った。
夜になると、彼等は狩りをした。
獲物を狩る。
それは人間ではなく、動物だった。
その動物を生の肉の状態で食べていた。
最初お腹がぐうっとなった。
両親が食べていた肉を無性に食べたくなった。
体に異変が生じたのはその時だった。
年齢は10歳くらいだったろうか。
いつも1人で剣術の練習をしていたロイ。
いつも本ばかりを読んでいたドリーム。
彼等には内緒で、体が次から次へと変化していくのを感じていたドーマス。
ドーマスは少しずつ人間ではなくなっていくのが耐えられなかった。
友達にばれるのが怖かった。
一度奴隷に捕まった事がある。
それをジョド村長と両親が協力してくれて救出してくれた。
元々はドーマスは奴隷だった。それは両親も同じだった。
だけどドーマスには不思議な力があった。
物に魂を与える事が出来る事だった。
額に六角の文様が光ると大抵魂を与える事が出来る。
大人になる体は変化を続けている。
毛深くなっていき、爪が頑丈になっていき、牙が出てくる。
少しずつ狼人間になっていく。
耐えられなかった。
だから、両親がある時、森から戻らなかったとき、不思議だった。
両親の臭いを辿った。
そしたら2人は巨大なクマに殺されていた。
内臓を食われており、体のあちこちがぼろぼろになっていた。
必死で逃げた。
ジョド村長に涙ながら訴えかけて、その満月の夜に異変が生じた。
体がもう狼人間のようになってしまった。
朝になれば元に戻るのだが。
夜にロイやドリームに見られたら終わりだ。
ジョド村長に頼んで旅に出た。
両親のお墓を作ってあげた。
旅は辛い物だった。
冒険者ギルドに属して、村や街を渡り歩いた。
夜になると森や部屋に閉じこもった。
狼人間だとばれたら色々と不味い。
奴隷商人の恰好の獲物だからだ。
それか戦闘奴隷にさせられる可能性もある。
必死で隠れて過ごしてきた。
それから5年が経過して、15歳になった。
カーゼル村に戻ろうかと思った。
最近ではこの世界に来訪者なるものが現れた。
モンスターを操り人々を殺している。
モンスターを狩る事くらいしかドーマスには出来ない。
ドーマスは武器を握りしめるととてつもなく弱くなってしまう。
まるで全身から力が抜き取られているように。
武器に魂を吸収されて行ってしまうかのように。
だから爪で殺している。
または噛み殺している。
モンスターの大軍がある村にやって来た。
それも夜中だった。
1人の村娘が襲われそうになっていた。
ドーマスは狼人間の姿で、モンスターを瞬殺していった。
圧倒的な強さに村人達は怒りの矛先はドーマスに向けられた。
「お前もでていけ」
「化け物はこんな所にいるもんじゃねー」
石ころを投げられた。
次に弓矢を構えられた。
兵士達が次から次へと群がってきた。
逃げるしかなかった。
助けたのに村人から襲われる。
涙のようなものが流れて行った。
どうやったらこの孤独と戦う事が出来るのだろうか。
誰にも理解されない悲しみ。
辛さを理解してもらえないだろうか。
満月の夜。
空を見上げていたら。
隕石が落ちてきた。
それがドーマスの体に直撃した。
死ぬか思った。
だけど目の前には銀色の鎧に包まれている1人の女性がいた。
彼女は朗らかに笑うと。
「ドーマス・グリギンドよ、そなたを銀神の鎧の候補者に選んだ」
「銀神の鎧?」
「そうじゃ、銀神の鎧だ。それがそなたの相棒となろう、その狼人間の姿を包む事が出来るだろう」
「そうなんですか」
「じゃが、使命がある」
「それは何ですか」
「世界が滅びるのを防ぐ手立てになって欲しい。我らはこの世界を滅ぼす覚悟で来訪者としてモンスターを送り込んだ。それは、お前達を見つける為じゃ」
「それはどういう事」
「この世界だけではなく、多種多様な世界が滅びようとしている。君はそれを防ぐ力となる。それに」
「それに?」
「銀神としての余命は尽きようとしている。後は託した」
「そうですか、それ、何のために俺がやらなくちゃいけないのか分からないけど、意味があるならしようと思います」
「そうしてくれると助かるよ、今宵よりモンスターの軍勢は現れぬ、現れるとしたら、他の来訪者の手先じゃろう」
「はい」
「ありがとうな、ドーマス・グリギンドよ、そなたの決意しかと受け取った」
「はい!」
銀色に輝く光。
次から次へと頭の中に流れていく銀色世界の構築。
全身を包む銀色の鎧は狼人間に相応しく、大きな2本の牙が並んでいた。
ドーマスは決意した。
自分だけの力ではこの大きな敵と戦う事が出来ない。
カーゼル村に戻り、ロイとドリームに力を貸してもらおう。
四足歩行で、大地を蹴り上げる銀色の狼男は満月を背中に走り出す。
★
==???==
ふんふんふんふーん。
鼻歌って最高だ。
生きている心地がするからな。
なぜかって多くの人間を殺しても歌っていれば問題ないだろう?
人間をなぜ殺すかって?
趣味だからさ。
人間じゃなくても別な生き物でも良いんだけどさ。
なぜ殺さないといけないかって?
「軍隊せいれーつ」
「君達さー最高にのってるかーい」
「はい、第1位のクロウガー様です」
「ではみんなー人間達を次から次へと殺してきなさい、5鎧達が俺が世界潰し計画を発令したことを悟って先に選別なんて事をしてくれちゃったみたいだけどー」
「それむかつきます!」
「いいのいいの、それだけ人間やら何やらが強くなるって事は最高に楽しめるからさー、それに位の高い神様は下位の世界に渡る事は相当な方法を駆使しないといけないからね、さてと、それまでの生贄を君達には準備してもらいたい、ダスモンドン将軍とカエレティ魔導士さん、色々とお願いね」
「御意にて」
「ははー」
第1位の神、クロウガーは笑っていた。
彼の目の前には数百億を超える魔族の大軍がいたからだ。
地球の言語で言うと、彼は魔王に相応しい位に立つ神様でもあった。
「ノリノリになってきたよー」
クロウガーは宙に向かって右手を繰り出す。
風という衝撃波だけで星を1つ吹き飛ばしたのだから。
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