第13話 自由
勝てた、勝てたんだ。
正直途中から勝ち目がないと思っていたが、それは違ったのだ。
何はともあれ、旅まではできないが、これで外に出ることができるようになった。
俺は少し、まだ旅ができないことに不満を持っていた。せっかくの異世界なのに、旅ができないのは面白くないからだ。
まあいい、ところで今の時刻は...朝と言ったところか。
ちょうど良い、外に出よう。
俺がドアノブに触れようとした時、父が口を開いた。
「ロイド、お前は自由だ。」
『え?』
急な展開に俺は戸惑った。
「どこへでも行っていいぞ、何日でも、何週間でも。あれだけの強さを見せてくれたのだからな。お前は父さんと同じ、好奇心旺盛な性格なんだから、いつも旅をしたいと思っているのなんてお見通しだよ。」
『え?別に...そんな訳じゃ。』
「行ってこい。」
やっぱり父は偉大だ。
今、父は俺の心を読み、外出、いや、旅を許してくれたのだ。つまり、どれだけ離れていても、どれだけ時間がかかってもいいと言うことだ。
その瞬間、ドアの隙間から風が吹いた。まるで俺を外へ誘うように。
俺は後ろを振り向く、そこには母と父が並んで立っていた。自然と涙が流れた。
だって好奇心には勝てないのだから。
俺はその一瞬で、長旅をする事に決めた。
親と離れる覚悟を決め、俺は思いっきり、『行ってきます!』と叫んだ。
そうして俺は家を出る。
家を出る時、父と母は、俺が自分の思うままに旅をしてくるだろうと察したような顔で、涙を流しながら、手を振っていた。
重い鎖から解き放たれたような感覚だった。これまでは門限のせいで行動範囲に限界があった。だがもうそんな心配をしなくていいのだ。
そう考えた瞬間、勝手に足が動き始めた。
とは言っても俺はまだ5歳、出来ることが少ない。身長は低いし金も稼げない...?
なんと、俺のポケットにお金が入っていた。
俺は心の中で親に感謝した。
どこに行こう。旅といっても当てがない。
やはり先に森などに行った方が良いだろうか。それとも村で準備を整えるべきだろうか。
深く考えた末、俺は村で色々と揃えることに決めた。
まず俺が目指すのは前にも行ったことがある、エルパッツァだ。
前、エルパッツァに行った時、俺は武器や防具を見た。
だがエルパッツァは遠い、前はホルスなんて言うモンスターに乗って行ったから早かっただけで、徒歩だと数時間もかかってしまう。
そうだ、ワープしよう。
『ワープっ!』
シュン!
ワープをしてみたものの、進んだ距離はたったの30分の一位だ。だが方向は制御できているのでこのままワープしていけば必ず着く。
それから俺は途中休憩を挟みつつ、ワープをし続けた。
『ワープ!ワープ!』
そうしていると、やっと着いた。
ワープをしすぎて、まともに歩けそうにない。せっかく町に来たのに、これじゃあ旅は明日からだ。
俺はここに来て、一つすごいと思ったことがあった。
それは町が復旧していることだ。
数日前にドラゴンの群れに襲われ、半壊状態だったのにも関わらず、今はほぼほぼ以前と変わらない。
改めて魔法の凄さを知った。
それから俺は、前と同じ宿にチェックインし、爆睡した。
ーーー続くーーー
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