転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく

第1話 転生をしたら異世界だった。

 俺は、転生者で前世の記憶が残っている……


 この世界とは全く違う場所で育ち生活をしていた。当時20代になり、働いていた会社では頑張って深夜遅くまで働き、誰よりも早く出社をしていた。

 残業では、翌日の自分の仕事の準備や、後輩の仕事の振り分けを考えたりした。その頑張りが認められたのかチームリーダーにもなり、仕事も人間関係も上手くいっていた。

 だが、そんな頑張って働いて積み上げてきたものが一瞬の交通事故に巻き込まれ、あっけなく死んでしまったのだ。


 頑張って生きていたご褒美なのか、通常なのかは分からないが……俺は、転生をしていた。


 

 そして転生した場所は……魔法あり魔物が出る世界で、俺は珍しいスキルを持って生まれてこれた。頑張って必死に働き、生きても……死ぬ時は、あっけなく死んでしまう。

 

 それなら……与えられた希少なスキルを最大限利用をして、初めから ”スローライフで、のんびりと人生を過ごしたい!” と、強く思った。


 

 俺が転生をして生まれた家は、平民で貧しくはないが裕福でもない、普通の生活だった。遊んでいても文句も言われない程度の生活レベルなので助かった。


 そんな豪勢で裕福を望んでいる訳ではなく、それなりに不自由なく暮らせて、好きな趣味の時間が少しでも出来ていればそれで良い。


 

***


  

 月日は流れて……気付けば、この世界にも慣れて無事に育ち、毎日幼馴染の友人と仲良く遊び歩いていた。


 

「ユウヤー、魔物の観察に行こうぜ〜」

 

「襲われるから危ないってッ!」

 

「それは、知ってるって!だからユウヤを誘ってるんだろー」


 

 毎回、強引に誘われるんだよなぁー。危ないって言ってるのに、全然聞いてくれないし。何が楽しいんだろ?


  

「毎回、不思議に思ってたけど……何で魔物とか魔獣の観察なんだ? 何が楽しいんだ?」

 

「は? 魔獣とかを観察してると、面白いじゃん!」


 

 首を傾げて、驚いた表情をして俺を見つめてきた。逆に俺の方も、その反応に驚きだけど……? シャルは、自分が面白いと思っていることは、俺も面白いと思っているってリアクションだよな……


  

「面白いかぁ?」

 

「面白いの! わたし大きくなったら、冒険者になるんだぁ〜! そのための準備かなぁー。ユウヤも一緒に冒険者になろうぜ! な? 頼むよ〜! ユウヤの転移が無かったらムリだしさぁ……なぁ〜?」


 仲の良い幼馴染で、シャルロッテという名前の印象と全然違う性格で、男っぽくて剣術が得意で運動神経が良い。だけど見た目は名前の印象のままで……金髪で青い目をしていて可愛いくて……俺は好きだが、シャルは俺の事をどう思っているのか知らないけど、毎日遊びに誘ってくれる。多分、俺の転移スキルが目的なだけかもしれないけど……


 

「あ〜はいはい……。冒険者は、大変じゃないのかぁー?魔物や魔獣と戦ったりするんだろ?」


 

 まぁ……家業の農業をやってるより、冒険者の方が面白そうだし……シャルと一緒に行動が出来るなら良いのかもな。シャルを一人にしたら危ないだろうし……


  

「その為の勉強だよっ。だって剣術を習ってるけど本物の武器とか無いし、観察をする事くらいしか出来ないしさぁー」


 

 剣術と言っても、シャルの元冒険者だった父親から、木の棒で剣術を教わっていた。本物の剣は、まだ早いと言われて触らせてももらっていない。そりゃ10歳の子供には持てないだろうし、持たせたら危ない。


 それに俺のスキルは長距離は厳しいし、触れているか近くにいる二人までが限界だ。だけど最近は、離れている物の転移も近くにだけど出来るようになってきたのは内緒だ。もっと上手に出来るようになってからビックリさせたい。シャルの驚く顔が楽しみだ。


 近くの森へ入り、魔物と言っているけど。実は魔獣で、見つけると後を追い、気付かれないように気配を消して観察をして、見つかると転移で逃げるというのを繰り返していた。


 

「ねぇ〜。今の魔獣のヤツがリーダーっぽかったよね?」

 

「そうだな……。体もデカかったし、強そうだった」

 

「わたし達で、倒せるようになるかなぁー?」

 

「今は、まだムリでしょ」


 

 いやいや……明らかに牛ほどの大きさのオオカミの魔獣を倒せるわけ無いでしょ! 俺達は素手だし……何よりも、あんな魔獣を倒してしまったら目立つし、大騒ぎになっちゃうでしょ。俺は、目立ちたくないの!


  

「今じゃなくてさ〜。大人になったらだよっ」

 

「そりゃ……訓練をしてるし。そのうち倒せるようになるんじゃないか?」

 

「だよね? だよね~! わたしが前衛で〜ユウヤが後衛で魔法担当だからね! ちゃんと魔法を覚えてよっ」


 

 俺には、スキルの他にも魔力量が異常に多くあるっぽいし、魔法の覚えも早く大抵は見れば直ぐに覚えてしまう。と言うか魔法のイメージで使えるようになるので、知らない魔法も前世の記憶で使えるけど……前世の俺の記憶で強力な魔法を使うと、騒ぎになって危険だと容易に想像ができた。


 今でも前世での記憶が多少残っているので、自慢目的で高度な魔法を使い注目を集めれば、どうなるかも想像がついたので余計な事をせずに過ごしていた。


 まだ年齢もレベルも低いので、低級の魔獣、魔物は倒せるくらいだと思う。目立たないようにしてるので周りに合わせてレベル上げもしていない。


 

「任せとけって! シャルよりは、魔法は得意だしなー」

 

「うっさいっ! わたしは、前衛だから良いのっ! 関係ないのっ」


 

 そうシャルは剣術を覚えるのは得意だけど、魔法が大の苦手だ。この世界での基本は、魔法は詠唱をして発動させるものと言うのが基本らしい。その基本の魔法の詠唱を覚えるのが苦手で苦戦をしている。見た目を除けば……完全に性格、気性、考え方を含めて典型的な前衛の剣士って感じだ。


 剣士でも、少しは魔法を使えた方が良いんだけどなぁ……。そう思いながら見つめていると。俺の視線に気付いたシャルが嫌な顔をした。


 

「な、なによー!? 魔法の練習はしないからね! あんなの覚えられるわけがないじゃない! わたしは剣士だし!」

 

「少しは覚えておいた方が自分の為にもなるよ?」

 

「はぁ? 魔法の練習をしている時間があるなら、剣術の訓練をしてた方が良いに決まってるでしょー。元冒険者のパパが言ってたもん!」


 

 多分……シャルのお父さんも魔法を教えようとしてて諦めたんだろうなぁ……。冒険者だったら魔法の必要性を知ってると思うし……パーティと逸れたら剣術だけだと不便だし危ない。


 

「……そうなんだ」

 

「そうなのっ!」


 

 俺に言い返せて、シャルが満足そうな表情ををしていた。俺は……言い返して説得が出来る自信も、教えられる自信も無いので黙っていた。多分、シャルのお父さんと同じ心境で、諦めた。


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