第56話 洗脳爆発暴走

「バク! お願い!」

「任せろ! シルカ! バクの神器に乗るんだ! 先にセーレの所まで投げ飛ばしてやる」


 バクの三節棍が1つに重なり、シルカが飛び込んで来た。ブーツのかかと部分の隙間に、棍の先端位置が引っ掛かる。そして、上空を目指し、力の限りに振り回した。


「行くぞ!! うぉりゃああーーーー!」

「シルカちゃん。私も……」

「ルーサーは来ないで!」


 シルカは金髪を揺らしながら、目的地と思われる場所へ先行した。


「何だ、この服は? 全然破れない。クソ、どうなってるんだよ」


 オラクレはセーレの衣服が「破れない頑丈さに驚き、むしゃくしゃ」していた。仕方なく胸を触るが、手先に感じるのは感触、弾力ではなく、電流が伝わるだけだった。


「ち…手先がピリピリと痺れる。何でだ? 胸、お尻当たりを触ろうとすると、微弱な電流が流れやがる」

「……(ありがとう、クライ)」

「この状態でもかまわねぇ。奪えるものは、奪ってやる!」


 気配を察知したセーレは激しく体を揺らし、自身の頭をオラクレの顎に突撃させた。後方へ蹌踉めくも即座に距離を詰める。唇を重ねようと、近づくが「危機的な状況なら2人が来る」っと言い訳を始めた。悩みながらも頭に浮かぶ2人は、マークとビィシャアだが「奴等は来る訳もない」と思った。


「おい、どうなっているんだ?」


 遠くに見える教団の城が爆発した。突然過ぎて、オラクレも冷静さを失った。轟音と振動で唖然とし、急に両腕を2匹の狼に噛み付かれた。


「今度は何だ? こいつは狼なのか? 青白くて影のようだ」

 

 ガルルルと唸り声を上げた狼が、セーレから「有無を言わさず」距離を離していった。そのとき、何か人のような物体が天空から舞い降りた。着地は「かなり雑で、力任せで着地した」のか、魅力的でなく美しさを感じさせない。


「うちだよ! 一度しか言わないからしっかり聞きなよ。セーレから今すぐ離れてよ!」

「その声は…シルカ!」

「まさか、また可愛いだと…俺も初めて見たが……この方が破壊神の申し子であり、爆発の女王シルカ様か。ヤバ過ぎる、興奮してきた」


 シルカの瞳は既に、金色に光り輝いていた。オラクレも「能力を知っている」のか、足元を見て冷静に対処した。


「うちの対処は知っているようだね」

「それは勿論。俺はこう見えても分析派でね。シルカ様の対処方法は頭に叩き込んでいます」


 シルカの左腕に巻き付いた小さな腕輪を外すと、輪が大きくなりチャクラムとなった。


「何ですか、それは?」

「あ、これのこと。うちの神器だよ。もうあなたは終わりだから、最後に1個だけ教えてあげるね」


 シルカの能力は、目が合った「生き物に限り爆発させる」能力者だ。その弱点を補う物があったとしたら、もはや「手が付けられない怪物と化す」だろう。


「さぁ、可愛い無限狼よ。うちの眼を見なさい」

「まずい!」


 2匹の狼とシルカの瞳が合う。体は光出し、光線のようにオラクレと共に包まれる。それは「充満したガスや液体の熱膨張と化学反応を発生させる」程だ。反応熱の蓄積によって、温度が急上昇して、其れ等は爆発を引き起こした。


「良し!」


 シルカは、セーレの側に駆け寄る。チャクラムの刃先部分で、腕と足の縄を切りチャクラムを左手に戻す。みるみる小さくなり、また元の小さな腕輪となった。両手で優しく、セーレの目隠しを外す。金髪と枯茶の瞳、白髪と紅の瞳が再会を果たした。


「また泣いてるの? 辛い時はいつも言ってるよね。困ったら、うちに相談だよ」


「ボロボロ」っと、こぼれ落ちる雫。堪えたくても我慢できない。2人は息を揃え抱き合った。「怖かった、酷い仕打ちを受けた」と震える口調で、セーレはシルカに想いをぶつけた。

 

「…(シルカ、私の1番の理解者であり、決して泣かない女性。強く、私の明るい太陽のような存在。信じてた。私が困難になったら駆け付けてくれるって)」

「…(辛かったね。セーレ。大丈夫だよ。うちは味方だから、後でセーレの場所を教えてくれたバクに感謝だね)」


クーンと、爆発した狼がシルカの脇腹に鼻をつけてくる。頭を優しく撫でて、「爆発させてごめん」っと労いの言葉を掛けた。そこに上半身裸のバクが到着した。


「シルカ、セーレ! 再会に水を差すようで悪いが、後方から大勢の赤ローブ連中がお待ちかねだぞ」


 セーレ、シルカ、バクは、同じ方向を見つめる。多くの馬に繋がれた大型のチャリオットがこちらへ近づいてくる。

 

「セーレ。うちに任せて、久々にアレをやりましょう」

「シルカ、セーレ。アレをやる気かわかった! バクは突進するだけだ。前衛は任せろ!」

「シルカ、バク。いくよ! 皆の力を合わせて!」


 先陣を切るバクに対し、セーレが細胞活性化で両足の走力を無理矢理上げさせる。バクが通る道に狼が並走し、時限式に爆発を繰り返していく。3人は同時に技名を叫ぶ。

 

「Manipulated explosive rampage!!!」

「洗脳爆発暴走トレイン⭐︎⭐︎⭐︎」

「バクによるマッスルロードブレイカー!」

「って、全然合ってないじゃない!!」

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