39:中一位交流会②

 下三位『無』の交流会では数少ない神性いろ持ちとして囲まれた。そして下二位『大』の交流会ではレアもの『月』として囲まれた。

 囲まれてばっかりなわたしだけど、今回の会場は机と椅子があるから大丈夫。


 円卓で席同士の仕切りが存在しないからって、これでもかと椅子を寄せてくる『破壊』よ、やめろ。

 それから逃げようと二姉さま側へ寄せるわたしを肘で追い返す二姉さま、痛いです。やめてください。お願いだから妹を守って。


 わちゃくちゃやっている間に、最後の二人がおのおのの席に座った。一部に乱れがあるけれど、円卓に設けられた席はこれですべて埋まったことになる。

 なお不思議そうに首を傾げたのはオオカミヘッドの『動物』さん。あの場所プレートは『破壊』が変えたとこだもん仕方ないよねー


 全員が座ると『調和』が口を開いた。

「では中一位の交流会を始めよう」


 自ら前口上を言い、そのまま自己紹介となった。

「まずは私から。私は『調和』だ、いまは一番長く『主』をやらせて貰っているよ」

 一番の古参だから司会役かぁ、なるほどね~

 ちなみにこの八人の中では『調和』のみが、誰の眷属でもないんだってさ。

 なお情報源はすり寄ってくる『破壊』なので多分あってる。



「俺は『動物』、だ。今後とも、ヨロシク、な」

 すでに察しているけれど、当初の席順は『主』になった順に、部屋の奥側『調和』から左右に広がっていたらしい。

 つまり『破壊』は本来二番手だ。

 そう言えば彼は邪神でも二番手だっけ?

 なんか不思議と二番手に縁がある人っているよねー

「なんだよ」

「いえ、なにもー」


 本来とは順番違いの二番手『動物』は、座神『天空』の眷属だそうだ。

 動物とお空の神様には関連がなさそうだが、『天空』には【天候】の権能があるそうで、〝自然〟繋がりだってさ。動物たちにとって自然豊かな世界は垂涎ものなんだろうと解釈しておく。ちなみに『天空』は太陽あにきの眷属。お空に太陽、うん親和性ばっちりだね。



「私は『海』よ~。水と生命が得意かしら~」

 三番手は『海』で、彼女も兄貴の眷属だった。これで空と海でリーチ、あと陸が来たら三つ揃い。『動物』と『海』が一緒に来たのってそういう理由かな。

 それにしても『海』かー

 若かりし頃は海ばかりの世界で、水のを持っていた身なので、ちょっと羨ましいかも?



「儂は『魔術』じゃ。こんななりじゃが若いぞ」

 四番手はずっと寝ていると思っていた『魔術』だ。

 科学文明の世界ではパッとしないけれど、それ以外ならば魔術は大人気。たしか信仰の回収率が高かったはず。

 あと本人も言っている通り、神の見た目と年齢は比例しない。わたしもそうだけど、神の姿は【権能】に引っ張られるから、魔術のイメージが老人ってだけ。

 ただなぁ順当に成長して、第四位『主』にまで至った神が若いってのは、ちと怪しいかなー?

「あいつは智神『知恵』の眷属だぜ」

 収まるところに収まったというべきか、面白みのない所属だなー



「わたくしは穢れなき純白、『処女』神よ。意地汚い人、薄汚い人は大嫌い」

 五番手は最初っからわたしたち姉妹に絡んできた『処女』だった。

 なんと彼女は、一姉さまの元ライバルにしてわたしと神性が被る『座』の直系の姉妹だった。眷属ではなく直系、『環』と『愛』を思えばこの差は大きい。


 そして昇格した今だから判ることもある。

 『処女かのじょ』はわたしが奪った『主』よりも格下で、あれが消失してから『主』へ昇格している。だって『主』が二人いたのなら、あの『座』はとっくに『智』へ昇格しているからね。

 やっと『智』が見えてきたところで、『主』の枝が崩壊。『あれ』が束ねていたやや負寄りの枝は離散したし、一部はこっちに流れてくれた。さぞかし力を損失したことだろう。

 そりゃあ恨むわ。恨まれても当然だわ。でもさーその恨みは完全に筋違いだかんね?

 すべては意思が弱かった『あいつ』が悪いんだよ!



 六番手は本来二番の『破壊』。

 続けて、二姉さまとわたしが自己紹介した。

 『破壊』は智神『冥府』の眷属というのはもう知ってるし、二姉さまとわたしは当然一姉さま『極光』の眷属だ。



「ふむぅ今度の・・・『月』は闇のが強いようだのぉ」

「そうだろう! さすが『魔術』は見る目があるな! なんせこいつの事は、アニキだって『邪神よりも邪神らしい』って褒めてたくらいだからな!」

 おい待て、それは誉め言葉じゃあないぞ。

 今度の月・・・・呼ばわりはスルーしたけど、そっちは譲れないよ。


「儂は褒めたつもりはないのじゃが、かの名高き『冥府』と同じ意見であったのは誇らせて貰おうかのぉ」

「ふん。神秘なる月をそのような汚らわしき姿に貶めるなんて、恥ずかしくなくて?」

「そっ? ウチは双子みたいなコンパチより、よっぽどい~と思うけど~」

「あんたさぁ妹だからって評価が甘いんじゃいない」

「あははっもしかして鏡に向かって言ってるのかな~?」

 おおぅこれは辛辣。

 まぁ妹を姉に読み替えればまさにその通りだもん、仕方ないよねー


「二人ともやめたまえ!」

「おいおい止めんじゃあねえよ。禍根を残すくれぇなら、ここで存分にやらせりゃいーじゃねえか」

「何を馬鹿な、ここは交流会のための場だぞ。喧嘩をする場所じゃあない」

「でもさあ『調和』ちゃん。

 残念だけど、もう交流って雰囲気じゃあないわよ~」

「お開き、だな」

「そうじゃな。どぉれ儂は研究に戻らせて貰おうかの」

 そう言うが早いか、『動物』と『魔術』は立ち上がり扉の方へ、やや遅れてそれを追う『海』。そして三人は本当に帰ってしまった。


 わたしも~と言いたい所だけど、残念ながらわたしは話題の当事者にして被害者なので、そういう訳にもいかない。


 えーと、『調和』頑張れ!

 あと『破壊』は煽るなちょっと黙れ。

 だから、早く帰らせてー

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