【第1章】完全管理社会『メトリクス』の誕生

西暦2400年


この世界では、『感情』を持つことが犯罪。それがメトリクスのルールだ。僕はただの労働者、感情を抑え込むことで「平穏」が保たれていると言われるこの社会の一員に過ぎない。


でも、僕の中に芽生えたこの違和感――これがもし『感情』だとしたら?


街は冷たい灰色のビル群に覆われ、どの建物も光を拒絶するかのように黒い窓が並んでいる。住民たちは無表情。彼らは体の半分が機械に置き換えられ、ただ効率的に働くことだけを求められている。僕もその一人だ。感情を持たないことが「正しい」とされているこの世界で。


かつてこの街には感情が溢れていたという。笑顔、涙、喜びや怒り――でも、感情は争いを呼んだ。人々は互いの失敗を攻撃し、自分を守るために他者を傷つけるようになっていった。争いが絶えず、街は廃墟と化した。


そんな中で立ち上がったのがヴァルディス。彼は「感情こそが世界を破滅に導く」と考え、感情を抑制するためにこの完全管理社会『メトリクス』を築き上げた。僕たちは体の半分を機械にされ、感情を持たないようプログラムされている。誰もが厳重に監視されているのだ。


でも、僕には分かる。この社会は平穏とは程遠い。人間らしさを失った僕たちが本当に「生きている」と言えるのだろうか?

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