第四節 SCENE-003


「(地脈からの魔力供給が思ってたほどじゃない)」


 双子の間で、ほとんど共有していると言っても過言ではない胸の内。


 意識の片隅で、伊月がぽつりと呟くのを聞いた鏡夜は、その意味するところを理解するなり、鏡夜のことはそっちのけで伊月と対峙している嶺の前――見慣れた母屋の座敷から開け放たれた簾戸の向こうへと、伊月のことを攫うように抱えて飛び出していた。




「(襲が国津神としての権限で魔力の供給量を絞ってる?)」

「(そんな感じはしないけど……)」


 八坂の地に根差した御神木由来の、〝災害級ハザード・クラスの人外〟と対等に・・・渡り合える規模の魔力供給を期待していた伊月は釈然としない風情で、自分からも鏡夜に腕を回してしがみつく。


「(魔力量で負けてる状態で嶺とやり合うなら、もうちょっとやり方を考えないと)」

「(逃げるのは?)」

「(尻尾を巻いて逃げる必要があるほど厳しくはないわよ)」

「(ならいいけど)」


「(二対一で嶺に背中を向けるなんて、私のプライドが許さないし)」


 それは大事なことだな、と。鏡夜は素直に、このまま伊月と二人三脚よろしく、嶺と相対することに同意した。



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