第2話 海賊奇襲
無人島を仮拠点にすると決めた光太郎達は現在、大和と武蔵に積まれていた物資を、短艇を使って浜辺に運んでいる。
「順調だな…」
光太郎は、甲板から荷物の積み下ろしの様子を見ていた。
このまま何事もなく、荷物の積み下ろしが終わると、光太郎が思ったその時、
大和と武蔵から警報が鳴り、更に放送が流れた。
『レーダーに正体不明の艦が複数あり!戦闘員は各自の持ち場につけ!繰り返す!レーダーに正体不明の艦が複数あり!戦闘員は各自の持ち場につけ!!』
放送を聞いた光太郎は、第一艦橋へ向かった。
「レーダーに反応があったのは本当か!?」
「はい、5隻ほどの船がこちらに接近中。速度は5ノット程度とのことです」
「5ノットだと?」
5隻の所属不明艦が5ノット程度の速度で接近中だと聞き、光太郎は少し不審に思う。
(戦艦の中でも速度が遅めの大和でも、微速で6ノット程出せる……まるで昔の帆船のようだ…いや、まだ気づかれてないと思い、微速で近づいているのかもしれないな)
一瞬光太郎は、所属不明艦が帆船のように思えたが、流石にそれは無いと思い否定する。
「総員、第一種戦闘配置!こちらから合図があるまで待機せよ」
光太郎は第一種戦闘配置を命じ、レーダーに映っている所属不明船の正体が分かるその瞬間を待つことにした。
「…所属不明艦見ゆ!…あれは……ほ、帆船です!敵は髑髏マークが描かれた帆船です!」
「何だと?」
所属不明艦が帆船と聞き、光太郎は双眼鏡を借りてその帆船を見てみる。
「…髑髏マークに帆船…まるで海賊だな……通信長、帆船に対しあらゆる方法で警告を伝えよ」
「はっ!」
向かってくる帆船に、警告を行うよう通信長に指示をし、光太郎は敵の動きを待った。
「目標、こちらの警告を無視し、真っ直ぐ向かってきます」
「……」
警告を無視して、帆船が向かってくると聞き、光太郎は少し考えた後、決断する。
「これより本艦は、接近してくる帆船を敵と判断する。なお、敵船が帆船ということと、消費する砲弾を出来るだけ抑えるため、第二砲塔のみ敵の迎撃を許可する。第二砲塔は零式通常弾装填、敵船を各自に倒せる距離になってから砲撃を開始せよ、砲撃のタイミングはそちらに任せる!武蔵には大和のみで敵船を迎撃すると伝えよ」
「はっ!」
第二砲塔に迎撃命令が下り、第二砲塔は砲口を敵船に向けて旋回し、敵船が射程内に入るのを、角度を調整しながら今か今かと待つ。
○
「キャプテン!目標の船が動いてます!」
「なんだと?」
望遠鏡で大和と武蔵に動きがないか観察していた乗組員の1人が、大和の第二砲塔が旋回しているのを目撃する。
ヴァイスは望遠鏡で見てみると、第二砲塔が角度調整をしているところだった。
「ほう、大帝国はあのような巨大な砲が作れるのか…くくっ、更に欲しくなってきたなぁ…帆を張れ!我がリューゲ号の速度ならば一気に距離を詰め、白兵戦を行えるはずだ!進みめぇ!!」
ヴァイスは乗組員に畳んでいた帆を張るように伝え、速度を上げて大和との距離を詰め始める。
「砲撃をいつでも開始できるように準備しとけ」
「あいあ…ドォーン!
「な、何事だ!」
ヴァイスが砲撃準備を命令したその時、大きな爆発が辺りに鳴り響いた。
「なっ…」
ヴァイスが爆発音が聞こえた方に向くと、リューゲ号の右斜め後ろから付いてきていた二隻の帆船が、爆発炎上していた。
「何が起こった!」
「あの船です!あの船からの砲撃です!!」
「何!?あの距離から砲撃だと!?」
大和からの砲撃と聞き、ヴァイスは驚く。
彼らが搭載している武器は初期の大砲、射程距離は最大で500m程度だ。それに比べ、大和が誇る主砲、45口径46cm3連装砲の射程距離は最大で約42km。更に大和は一撃で屠るために、わざとヴァイス達を11kmくらいまで近づかせていた。こうなれば、海戦は一方的である。
「また沈んだぁー!」
「か、構うな!突き進め!!」
今度はリューゲ号の左斜め後ろに展開していた帆船が砲撃を喰らい、海底へと沈んでいく。
それに恐れながらも、ヴァイスは進むように命令を下したが、
ドドドンッ!
大和の第二砲塔から放たれた四発の零式通常弾が、前面からリューゲ号に突き刺さった。砲弾は火薬庫に直撃し、リューゲ号は内部から大爆発を起こし、ヴァイス諸共消し飛んだ。
○
「残存の敵帆船、救助活動らしいき事をすることなく、引き返していきます」
双眼鏡で帆船の動きを見ていた乗組員が、生き残った帆船が撤退していくのを確認する。
「追撃はするな。あくまでも、我々は海賊に対して防衛したに過ぎない。それに、全部沈めてしまっては、助かる命も助からないからな……ああそれと、短艇を出して生存者探索をせよ、もし生存者が居れば保護して連れてくるように、彼からか有益な情報が手に入れることができるかもしれないからな」
「はっ!」
生存者救出のため、光太郎は短艇を出すことにした。
光太郎は敵味方関係なく人命第一という考えを持っている。
そのため光太郎は、救助活動用に敵船を一隻残させていたのだが、その帆船が救助活動らしきことをしていなかったため、生存者の救助活動のために短艇を出すよう命じたのだ。
(しかし、帆船か…何故そのような物が…)
敵船が帆船だったことに、光太郎は不審に思いつつ、短艇が戻ってくるまで待つことにした。
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