大和型戦艦、異世界に転移する。

@yakimesigakusei

第一章〜大和型戦艦異世界へ〜

プロローグ

1939年9月1日、世界では第二次世界大戦が発生しなかった。第二次世界大戦が起きなかったことにより、多くの列強国による冷戦が展開されることとなる。

その列強国の1つ、中国戦線に集中出来ている大日本帝國では、ソ連と米国を仮想敵国に想定し、北進論を支持する帝國陸軍は武器や戦車を量産することに、南進論を支持する帝國海軍は質で数の差を埋めるために実力至上主義を採用することになった。

1945年4月7日、史実とは違い大和型戦艦の111号艦こと大和型戦艦4番艦紀伊が完成。帝國海軍は大和型戦艦の力強さを砲艦外交に使用するため、大和型戦艦四隻による演習をすることに決定。

そして現在、大和型戦艦四隻が横須賀海軍基地に、補給のために停泊していた。


「大和型戦艦四隻が並んでいると、圧巻だな!」


補給作業中の空き時間、大和の第一艦橋に遊びに来ている黒髪の青年がいる。

青年は、帝國海軍の実力至上主義化により、大和型戦艦二番艦武蔵の艦長になった鳴門なると信介しんすけである。


「………なぁ、信介、もうすぐで作業完了の時間だぞ…いい加減戻ったらどうだ?」


懐中時計を見ている紺色髪の青年は、信介に武蔵に戻るよう勧める。

青年の名は、山本やまもと 光太郎こうたろう。かの山本五十六の孫で、彼もまた実力至上主義化により、大和艦長になったのである。だが、光太郎は祖父が山本五十六ということで、上層部が贔屓しているのではないかと、言う噂があるものの、実力は本物である。


「そうだな。じゃ、またな!」


腕時計で時間が迫っていることを確認した信介は、大和の第一艦橋を後にする。


「全く信介は…」


「相変わらず、仲が良くて結構だ…」


信介の気楽さに光太郎が溜息を吐いていると、第一艦橋に一人の茶髪で髭を生やした男が入ってくる。


「っ!一文字司令官!」


男に気づいた光太郎含めた第一艦橋に居る者達は、姿勢を但した後男に向けて敬礼する。

男は第四聯合艦隊司令官の一文字いちもんじ まこと。大和型戦艦四隻が揃っているため、武蔵と信濃、紀伊を見回り戻ってきたのだ。


「うむ、ご苦労。それで出航準備は現在どうなっている?」


「はっ、大和と紀伊は出航準備完了致しました。武蔵は艦長が今戻った頃だと思います。信濃はもう少しかかるとの事です」


大和型戦艦の現状を聞いた眞は、第一艦橋に用意されている司令官用の椅子に座る。


「…艦長!全艦、出航準備完了致しました!」


「了解した…」


報告を受けた光太郎は、羅針儀の上に置いてあった帽子を手に取り、しっかりと被った。


「大和、出航!!」


光太郎から出航命令が下り、ラッパによる演奏があった後、大和が汽笛を鳴らしながら横須賀海軍基地を出撃した。

それに続くように、武蔵、信濃、紀伊も横須賀海軍基地を出航する。





大和型戦艦四隻が出航してから数時間後、沖合に出た四隻は真っ直ぐと演習海域に向かっていた。


「艦長!武蔵に乗艦してらっしゃる竹田海軍大将から打電です」


「竹田海軍大将から?」


竹田海軍大将。本名竹田たけだ 光成みつまさ、初老の海軍大将で山本五十六の友人である。光太郎と光正は、将棋を差し合う程個人的な仲は良い。

そんな光成から打電が来たと聞き、光太郎は首を傾げつつ、打電内容を聞くことにした。


「えー……『コンド、ショウギウヲウトウナ』とのことです…なお、返信は不要とのことです……」


「…」


打電内容を聞き、光太郎は頭を抱える。


(何故、わざわざ打電を使ってで伝えるのだ…竹田さん……)


光太郎がそんなことを思っている中、大和は演習海域に向けて進み続ける。

しばらく進み続けていると、


「濃霧が出てきたな…」


海上に濃霧が発生し、後続艦が居るかどうか分からなくなるほど視界が悪くなる。


「武蔵、信濃、紀伊に打電。濃霧発生のため、これより第一戦速で進むようと伝えよ」


「はっ!」


濃霧発生による視界不良で、貿易船などに衝突して事故が起きる前に、速度を落とすよう各艦に伝える。


「………各艦に通信が繋がりません!更に電波探信儀、水中聴音機が反応しません!!」


「何?」


各艦と通信並びに、レーダーとソナーが反応しないと聞き、光太郎はその原因を考え始める。


(機器の不調か?いや、少なくとも通信機は、先程まで問題なく打電が出来ていた…となると、この濃霧のせいなのか…?)


濃霧が通信機やレーダーなどに、何かしらの影響を与えていると判断した光太郎が、発光信号の使用を考え始めたその時、


『武蔵から発光信号!信濃及び紀伊と連絡が取れない、大和応答せよとのことです!』


「…こちら大和、信濃と紀伊と連絡が取れないのは本当か、と発光信号を送れ!」


『はっ!』


第一艦橋に武蔵からの発光信号の内容が届き、それを聞いた光太郎は驚きを抑えて、冷静に武蔵への返事を送るように伝える。


「機器の故障に、信濃と紀伊との連絡途絶…妙ですなぁ…」


「ですね…仮想敵国による物と見てもよろしいかと……総員、第一種戦闘配置!敵からの奇襲に備えよ!」


光太郎の命令が降り、大和の乗組員達は、各員の持ち場に着き、来るかもしれない敵からの奇襲に備える。

大和と武蔵は、発光信号で互いに安否を確認しつつ、濃霧を切り抜けるために進み続ける。


『電波探信儀並びに水中聴音機回復しまし…前方に巨大な島!このままではぶつかります!!』


「何だと、取り舵いっぱい!武蔵にもそう伝えよ!!」


「とーりかーじいっぱーーい!」


濃霧が晴れるのと同時に、レーダーとソナーが回復したのと、前方に島があると報告を受け、光太郎は急いで大和を左に回頭させた。

そして、前方に島があると報告を受けた武蔵は、回頭する際大和にぶつかることが無いよう、右に向けて回頭させた。

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