第35話

夏の夜。



生暖かい風が吹く。



「奈緒、覚えてる?」



ポツリと落とされた言葉。



「え?」


「嬉しかったんだ」



夜空を見上げる晴也は、私を抱きしめる力を強くした。



月の光に照らされる晴也の髪は、夜空に溶け込んで見える。



「夜空を見ると、なんだっけ?」



微笑みながら、私を見下ろす。

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