言葉の一大遊戯を満喫するために
千織
第1話 これで決まりだ、と書き手として言えるように
技巧が芸術を可能にする。
練習は、動きのない情景を書かずに今起こっていることの描写になるように。
まずはリズム。
♢神さま行列♢
れっせらぁ、れっせらぁ
亜門は村人の奇妙な掛け声に鳥肌が立った。
れっせらぁ、れっせらぁ
結局、村には若い女しかいない。おかしいだろ。
れっせらぁ、れっせらぁ
女たちはそれぞれの屋敷の玄関の前に正座をして、掛け声に合わせて天に手を伸ばし、そのままお辞儀をして額を地面につけた。体全体であおぐみたいに、お辞儀をしてはまた体を起こし、そしてまたお辞儀をする。
れっせらぁ
逃げた方がいいだろうか。
れっせらぁ
ここがどこだか定かでないのに。
いつの間にかもやがかかっていて、敷地の外が見えなくなっていた。この家の女二人は伏せたままじっとしている。村中から聞こえていた掛け声もやんだ。
もやの中から、ぬっと馬の足が現れた。
次に赤いマント。
黄色や青の鮮やかな刺繍が裾に施してある。
顔には太さがバラバラの線で得体の知れない模様が書かれた紙が貼ってあった。
体つきは人間の男のようだがマントの下から見えている足は、馬だ。
とっとっと、と彼が近づくと、女二人は顔を上げ立ち上がり、家の中に促すように入って行った。
彼はまた、とっとっと、と歩いてついていく。
それに合わせてもやの中から、ぬっぬっぬっ、と三人の同じ格好の奴らが出てきた。
顔の模様だけはそれぞれ違う。
彼らもまた、と、と、と、とてとてとて、と蹄を鳴らし、鮮やかなマントを揺らしながら家に入って行った。
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