第六章:棺の日々

第33話:変わらない日々

 あの騒動から数日後、アーロン達は変わらず救出稼業に勤しんでいた。


 今彼等がいるのはA級ダンジョン『賢者の箱庭』だ。

 

 そこでは魔法が使えず、スキルも発動しずらいという特徴のあるダンジョン。

 そして彼等は、そこで地力だけでダンジョンのゴーレムと戦っていた。


「核を探せ!! 核を壊せばゴーレムは止まる!」


 クロスライフを振り回し、アーロンは勘でゴーレムを殴り粉砕する。 

 そして丁度、そこに宝石の様な宝玉――核があり、核が割れると、ゴーレムも崩れて去った。


「急げ! 時間を掛け過ぎている!」


「分かってけど、ゴーレムは面倒なんだよ師匠!」 


「ひえぇ! 刃が通じません!?」


 アーロンからの檄に悲鳴を上げるロウ、サツキの弟子達。

 

「ちくしょう! 合わせてくれよサツキ!」


「はい!!」


 ロウは自棄になった様に叫び、小さくしていた爆弾を元の大きさに戻した。

 そして火を付けてゴーレムの群れに投げると、大爆発を起こして身体が崩れた。


 その崩れた部分から核がむき出しになると、サツキは一気に駆けた。

 そこから一気に核を全て斬ると、ゴーレム達がようやく動きを止めた。


「良し……先を急ぐぞ!」


「へいへ~い! 休ませてくんねぇんだもんな」


「うぅ、少し疲れました……!」


 弱音を吐きながらも、ロウとサツキも足を止める事はしない。

 そこは救出屋の誇りがあると、彼女等も頑張るしかなかった。 


 そして暫く走ると、救出者を発見した。

 人数は二人――どちらも魔法使いらしく、杖とかがゴーレムによって折られていた。


「打撲が多いか……サツキ、ヒールスライムのジェルを用意だ。ロウは棺に入れている間、周囲の警戒だ」


「はい!」


「了解!」


 アーロンの言葉に二人は返事し、それぞれの作業に入った。

 棺に二人を入れ、ジェルを棺へと流す。


 そして馴染ませる様に身体を揉んでいき、他の外傷がないかも調べる。

 その間、ロウはボーガンを構えながら周囲を警戒する。


「師匠、こちらの方……腕に切り傷が!」


「縫えるか?」


「はい!」


 サツキはそう言って慣れた手付きで、その傷を縫いあげた。

 くノ一だけあって手際は良く、アーロンも彼女の作業後を見て頷いた。


「良し、それで良い。――ロウ戻るぞ。棺を引け。サツキは周囲をカバーだ。入口までゲートは開けないぞ」


「知ってますよ。さぁ~て、もう一仕事だ」


「周囲にゴーレムの反応はしません。早く行きましょう」


 そう言い合って、アーロン達はダンジョン内を逆走していった。

 そんな感じで彼等は騒がしい日々を送るのだった。


♦♦♦♦


 そんなある日、その日はアーロンが買い出しでいなかった。

 拠点にいるのは、武器の手入れをするサツキとロウの二人だけ。


 そしてサツキはロウへ、良い機会だからと、ある質問をしてみた。


「へっ? オレが救出屋になった理由? 別に話しても良いが、なんでまた」


「いえ、ロウ先輩も知ってると思いますが、私って典礼ギルドに騙されたのが切っ掛けでしたから。本来は、どうやって入るのかなって気になりまして」


「あぁ、なるほどな」


 それを聞いてロウは納得した。

 既に師であるアーロンから手紙で、サツキの詳しい話はロウも聞いていた。


 だから、そりゃ気になるなと納得したのだ。


「ただ本来っていうか、オレも強引に弟子入りしたからよ……自分語りで終わるぞ?」


「それでも聞いてみたいです。色んな救出屋の方の話として……」


「そこまで言われちゃな……兄弟子として話してやらないとな」


 そう言ってロウは見守る様な、優しい笑みを浮かべて話し始めた。


「あれはもう6年前か……オレが14の時に、オレは師匠に……棺の英雄に弟子入りしたんだ」


 ロウはそう言いながら、静かに語り始めた。

 自身の救出屋としてのルーツを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る