第15話マモン

翌日、私は昨日のリビングでの調査結果などつゆ知らず舞と連絡をとっていた。

『ねえ、夏休みどうする?』

『渋谷に買い物する?』

『何か買うの?』

『渋谷と言えば若者の全てだよ』

『そうなの?』

『さくらはあんまり買い物とかしないの?』

『欲しいものとかないから』

『物欲ないんだね』

『うーん』

『じゃあ今日のお昼に渋谷駅集合ね』

『分かった』


時間は十時を回っていた。

リビングに行っみると河上君と高坂さんが居なかった。

「霞さん」

「はい?」

「河上君は?」

「お出かけになっております」

「どこにですか?」

「警視庁です」

「なにか事件があったんですか?」

「急いで出ていかれたので分かりません」

「そうなんだ、ちょっと私も出かけてきますね」

「どちらに?」

「渋谷です」

「では、私も行きますね」

「その服で?」

メイド服をいつも着ていると聞いたのでその格好で出かけられると目立つし、なによりそんなことをされたら困る

「大丈夫ですよ」

「でも、心太様や高坂がいないとなるとボディーガードがいないので」

「でもメイド服で渋谷ちょっと」

「私もメイド服以外にも服はありますのでご安心を」

「そうですか」

「私は遠くにいますのでご安心を、では車で行きましょう」

「じゃあお願いします」

そして着替えて、霞さんと一緒に渋谷に向かった。


「お待たせ」

集合場所にはすでに舞と美香、沙羅がいた。

「遅いよ」

「ごめんって」

「じゃあ行こうか」

「行くってどこに?」

「服を買いにだよ」

「服?」

「ディズニーと修学旅行に来て行く服だよ」

「なるほど」

それから渋谷でお店を沢山回った。


お昼も渋谷で食べてクレープやタピオカなど如何にもJKの休日を満喫した。

だけど少し気になったのは、霞さんはどこにも見当たらなかった。

何処かで私を見てくれていたのだろうけど、一切気配もしなくどこにいるかも分からなかった。

「ねえ、さくら」

「ん?」

「天司とはどうなの?」

「そうだよ」

美香までもそんな事を言い出した

「ディズニーで告白すればいいんじゃない?」

「え?」

「ロマンチックじゃん」

「そんなんじゃないよ」

「でも、気になってはいるんでしょ?」

「まあ、それはそうだけど」

「お、ついに認めたね」

「まあ、仲のいい男の子だし良い子だと思うけど」

「いいじゃん、ついにさくらにも春が来たねー」

「茶化さないでよ」


そうしてお洒落な服を買ってディズニーに着ていく服を買って、修学旅行に一緒に日向君と過ごす時間があればと想像してしまった。


「じゃあまた遊ぼうね、夏休み長いし」

「うん」

渋谷駅で解散して霞さんに連絡しようとした時にいつの間にか後ろから声がした。


「終わりましたか?」

「霞さん?!」

「同い年の乙女の団欒を見られて目の保養でした」

「急に後ろから話しかけないでくださいよ、もう驚きましたよ」

「すいません、兵器としての癖が出てしまい」

「その兵器って辞めません」

「え?」

「以前はそうだったのかもしれないけど、それは過去ですし今はメイドとしてやっているじゃないですか、それに同い年ですしちょっと距離もあるしため口でいきましょう」

「それは配慮が足りずすいません、ですが今は使用人としてですのでため口は致しかねます」

「そうですか」

少し残念だったけど、やはり同じ家に同い年で同性がいるのは安心をする。

でも霞さんは自分を未だに兵器としての自覚で生きていると思うと少しだけ可哀想だと思ってしまう。


「では行きましょう」

「はい」

近くの駐車場で車に乗り車は走り出した。

「そう言えば霞さんの私服って可愛いですね」

「これは心太様の知人に勧められたものです」

「自分で服は買わないんですか?」

「知人と出かけた際に勧められたものしか買いません」

「知人ってどんな人?」

「私が心太様に出会った時は服もろくになく、髪もぼさぼさでいたので心太様の行きつけの美容室の方にお世話になってその方に選んでもらっているんです」

「そうなんですね」

なんだか、霞さんは機械のような喋り方で正直本心が見えない。

でもそれも過去の影響だろうと思った。


それからはあまり会話は弾まずに無言な時間が続いて家に到着した。


「ただいま、ってまだいない。もう夕方なのに」

「いつお戻りになるかは聞いていないのでもうしばらくかかるかもしれませんね」

「そっか、じゃあ私は部屋にいるね」

「かしこまりました」


一方、警視庁では捜査会議が終わり京野と河上、高坂で話をしていた。

「どう思う?」

「どう思うって言われてもな」

「まだ逮捕されてない、サマエルの幹部の殆どが日本に入国しているんだぞ!!」

「そんな大声出さないでくださいよ」

「そうも言ってられないだろう」

「それより、防犯カメラで見つかっているのに入国している時点でおかしいでしょ」

「違法入国だな」

「分かってなら止めてくださいよ」

「それができないから今こうして空港の防犯カメラを見てもらっているんだろうが」

「サマエルは僕の目では曇って見えるんですよ、それに疲れるんですけど」

「疲れるってお前な」

暫く空港の防犯カメラを見ていたら、一人気になった人物がいた。

「あ」

「なんだ?」

「この人」

カメラを一時停止して見てみる。

「こいつがどうかしたか」

「サマエルの幹部のリストに載ってない」

「え?」

「この青年か」

「誰なんだ?」

「こいつは曇っているのに何か違う」

「どういう事だ?」

「分からない、でもなにか今までのサマエルの幹部とは違う」

「そう違うんだよ」

「それが分からないから気になっているんだよ」


「この男の情報を確認しろ!!」

京野が周りの刑事に指示を出した。

「なんなんですかねこの青年」

高坂が聞いてくる。


「分からない、でも今までのサマエルの連中とは違う。でもその違和感が分からないと何か手遅れになってしまう気がする」

違和感、なんなんだ。

何か曇り方が違う、今まで見たサマエルの連中とは違う胸にどす黒い色が見えた。

もしかしたらサマエルの最終目的は日本なのか、だからサマエルの幹部そしてマラクの優秀な人材が日本に入国していたのか。

それだとしてもどうやって違法入国していたのか、顔を変えて入国していたのは確か。

そもそも神鹿狼奈が今まで姿を消して、捕まってこなかったのは変装が得意なのもあるがでも各国の防犯カメラには確認されている。

それは挑発だと思われているが神鹿狼奈の狙いがまだ分からないのでこっちから動く事ができない。

「そんなに何考え込んでいるんですか?」

「神鹿狼奈、いやサマエルの狙いが分からない」

「やはり最終目的は日本なのでしょうか?」

「まあ、続々と幹部が入国しているからそれは確かだろうな」

「それ本当か?」

京野さんが会話が聞いていた。

「サマエルの最終目的は日本ってどういう事だ」

「サマエルの幹部やマラクの優秀な人間が入国しているのが確かって事で日本に何か仕掛けるつもりだろう」

「何かってなんだよ」

「それが分かれば苦労しないだろ」

「じゃあそれ以降は分からないって事は積みだな」


「先ほどの青年の情報が分かりました!!」

先ほどの青年を防犯カメラで見つけて数分後だった。

「何?!」

「幹部のリストにはなかったのですが先ほど情報が下りてきました」

「で、誰なんだ?」

「それがマモンとしか」

「マモン?」

京野さん達がさっぱり分からないと言う様子できょとんとしていたが、俺は大体の予想はついていた。

「強欲か」

「強欲?」

「七つの大罪ですよ」

「サタンとかですか?」

他の警察官が段々と気づき始めた。

「何よりも自分の欲する欲に支配された悪魔と言われていますが異名かもしれません」

「異名か」

「もしこの名前の通り欲を欲する人間だとすれば日本に何が起こるか、ますます分からなりましたね」

「どういう事だ」

京野さんはまだよく分かってない様子だった。

「七つの大罪とか知らないんですか?」

「うるさいな、そう言う関連は専門外だ」

「専門外でも常識でしょ。それに警察なら少し勉強してください」

「貴方ね、上司に向かって口の利き方くらいなんとかならないの?」

佐々木がさんが会話に入り込んできた

「上司じゃないですよ、もしかして佐々木さんも知らないとか言わないでしょうね」

「七つの大罪なら学生の時に勉強したことあります」

「それなら話は早いな」

「でも、日本に甚大な影響があるというのはどういうですか?」

「通称マモンがもし神鹿狼奈の次に犯罪を追及しているとしたら?」

そこで京野さんがはっとした。

「自分の欲求のままに犯罪を突き詰める、それに神鹿狼奈までとは言えずとも頭が切れるとしたらって事か」

「そうなりますね」

「じゃあこいつの立ち位置次第って事か」

「モニター班で通称マモンがどこにいるか調べろ!!」

「分かりました!!」

一気に警官たちの士気が上がった。

モニター班は日本中の防犯カメラで誰が何処にいるかを確認する班なのだが実際にこの班が動くことはない、だが事態が事態なことで動くという判断に至った訳だが、もし何も成果が得られない場合は指示を出した京野さんが責任を取ることになるのだが。

京野さんは責任と言う概念で動くことはない、熱血刑事と言うやつだ。


「高坂」

「はい?」

「帰るか」

「え?」

「だってマモンが何処にいるか、今日中に分かるわけないだろ」

「そうかもしれないですけど」

「考えてもみろ相手は空港で素顔でど堂々と入国していてあの顔が素顔とは言えないしサマエルの中でマモンとか言う異名がついている相当な代物だ」

「そうかもしれないですけどこの雰囲気の中帰るんですか?」

「まあ今できることはもうないからな」

河上はそう言うと捜査会議の一室を出て、帰っていった。


「ただいま、ってもう寝ているか」

「もう二十四時ですから」

リビングに行くと安藤の姿はなかった

「おかえりなさいませ」

「霞は起きているのか」

「軽い軽食は作っておりますのでお風呂に入りお食べください」

「ありがとう」


お風呂に入り軽く状況を整理する。

神鹿狼奈だけでも厄介なのにマモンとか言う奴が現れって事は奴が今のサマエルを統率しているのかそれとも囮として他の誰かが、サマエルを率いているのか現状は分からないことはだらけで何から手を付けたらいいのか分からない。

この際出たとこ勝負と言いたいところだがもし、こっちの切り札が露呈したら恐らく世界中で混乱が訪れ手に負えなくなり止められない雪崩れが起きる。

それだけは何としても避けたい。

そして、神鹿狼奈の狙いは恐らく。

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