第13話 二度目の窮地
「やっとこれで授業終わるわ」
舞が背伸びをして退屈だと言った。
「まあでも今日はが終われば夏休みだし頑張ろうよ」
確かに今日は学校が終われば夏休みにはいる、なので生徒は少し浮足立っていた。
「でも奉仕活動で終わりだなんてなんか面倒なじゃん」
「でもさ、夏休みが終われば修学旅行じゃん」
班行動で箒やトングを持って四人組で歩いて行く。
その通りで修学旅行は通常二年生で行われるが天候の影響で中止になり、そのまま流れると思っていたが三年生の秋に、兵庫県と大阪府に行くことになった。
舞や他の生徒からは海外に行きたいと言われていたが、去年にグアムに一つ上の先輩方が行ったらしく、その時に単独行動など勝手な行動などが目立ち、なら国外で行った方が管理できると言うことで今年は国内になったのだが、それが生徒の反感を買った事で少し生徒と先生の間でギスギスしていたが。
修学旅行で大阪でユニバに行くことだったり、夏休みでディズニーランドに行くということで生徒は納得した。
「ディズニーは楽しみだけど修学旅行が国内なのがなんかね」
遥まであまり楽しみと言う言葉を使わない。
「でも皆で行けば結局楽しんじゃない?」
「沙羅はなんでも楽しむことができるから羨ましいよ」
沙羅はこの奉仕活動で一緒になった友達で天真爛漫な感じで、直ぐに打ち解けた。
「確かにそうかもね」
「修学旅行の班もこの四人なら楽しめるかもね」
「そうだね」
そんな会話をしている内に自分達が回る範囲が終わり学校へと向かおうとした時だった。
黒い車から黒ずくめでヘルメットを被った人が校門の前に止まって、前に襲われた状況を思い出して思わず立ち尽くしてしまった。
その考えが当たって、黒ずくめの人間は三人ほど車から出てきて私に向かってきた。
「ちょっとあなた達なんなの!!」
すかさず、先生が反抗したが黒ずくめの人間達は先生を殴りつけて私に向かっきた。
「お前が安藤か?」
声が男の人で身長もでかく何も言えずにいた私に写真を見て黒ずくめの人間は狙いが私だと理解して、腕を引っ張て車に連れ出そうとした。
「ちょっと本当になんなの?」
舞が反抗しようと男に近づくと舞までも殴られてもうなすすべが無くなって私も腕を離そうとしたが、そんなものは通じづにそのまま連れて行かれてしまった。
周りの生徒も呆然としてもう私には何もできずに、ただ車に乗り込まれてしまった。
そのまま車は発進してもう助からないと思った瞬間だった。
突然隣りの窓ガラスがバリンと割れて、手が伸びた。
「安藤!!」
声の主は直ぐに誰か分かった。
河上君だった。
河上君はそのまま窓ガラスを割って黒ずくめの男を殴りつけて、中から鍵を開けてドアを開けた。
驚くことに車は進んでいるままなのだ。
「なんなんだお前は!!」
「こいつのボディーガードだ!!」
そのまま、運転座席にいる黒ずくめの男を殴りつけて男はそのまま気を失い直ぐにブレーキを踏んで車は止まった。
その後、車から私は降ろされて直ぐに救急車と警察を呼んで事なきを得た。
でも河上君の腕は血まみれだった。
「河上君、大丈夫?」
「おう、こんなの傷のうちには入らん」
「でも」
「大丈夫だって、お前はとりあえず保健室に行っていろ」
「分かった」
一方、警察が到着し先生が状況を説明し。
黒ずくめの男は無事に逮捕され警察官と河上は話をしていた。
「怪我しているけど君、大丈夫か?」
「まあ、怪我の内にははいらないので大丈夫です」
「怪我している所、悪いけど事情聴取させてもらうね」
「恐らく黒ずくめの男達は安藤を狙っていたのは間違いないでしょうね」
「そうか、他に気になった所はある?」
「恐らく狙った人間はマラクだと思います」
「え?」
淡々と語る河上に違和感をもった警官が河上に話を続ける。
「なんでそう思ったの?」
「今、サマエルやマラクが日本に流れていて安藤は闇サイトで狙われていたので」
「君は何処からその情報を?」
「同業なので」
「ん?」
河上は胸ポケットからインターポールの捜査官の手帳を見せた
「それは本物なのか?」
警察官は現実が受け止めきれないと言った様子で驚いていた。
「警視庁の京野さんに確認をしてもらえば分かります」
「ちょっと待ってください」
いつの間にかもう一人の警察官が話に入り込んできた。
「どうした」
「噂、聞いたことないですか?」
「なんの?」
「高校生でインターポールの捜査官に採用されたって話ですよ!!」
「じゃあ君は本当にそうなのか?」
入り込んできた警察官が興奮して握手を求めてきた。
インターポールの捜査官と言う事はあんまり広まっていないと思っていたが、意外と同僚には知られているみたいだ。
「君がインターポールの捜査官とはね」
「まあ、疑う気持ちも分かりますが本当の事ですから」
「そうか、分かった。黒ずくめの男がマラクと言う事で操作を進める」
「そうしてください、それから事情聴取をする際は京野さんを通して僕も立会いできるように報告してください」
「分かりました」
「では、後はこちらでやりますので」
そう言い警察官は去って行った。
「河上君大丈夫かな?」
「今は自分の心配をしな」
保健室の先生が私に言った。
「でもあんなに血を流して強がっていたから」
「安藤さんも身体的な怪我はしてないけど心の怪我は治りずらいんだから」
「私は前にも同じ事ありましたし、大丈夫です」
「そう言うのは慣れたらいけないよ」
確かにそうだと思った、確かにここ数か月で二回も学校に私を狙って黒ずくめの人に狙われるなんてどうかしている。
でも、不思議と以前の痴漢騒動や最初に襲われたときには感じなかった安心感があった。
それは、恐らく河上君がいると言う安心感があったからだと思う。
「先生―、治療して」
河上君が保健室に来た。
「貴方また無理したのね」
「すいません」
「これはまた病院ね」
「えー」
河上君の手には血が止まらないようで見るだけで痛々しかった。
「大丈夫?」
「うん」
「でも骨まではいってないから薬塗って包帯で済むと思うよ」
「ありがとうございます」
「でも此処では応急処置しかできないから病院には行くように」
「はい」
そうして救急車が来て私と河上君が乗って病院に行くことになった。
以前にも同じような検査をして私にはやはり何も怪我はなく、また精神科に行くことにはなったがそれも異常はなかった。
河上君は手の処置を行い私はそれを待って待合室にいた。
その間に高坂さんに連絡して病院に来てもらうことにした。
「待たせたな」
「手は大丈夫だった?」
河上君の右手には包帯がグルグル巻になっていた。
「まあフロントガラスを破ったしこれで済んで良かったって言われたよ」
「なんだかごめんね」
「安藤が謝ることじゃないだろ」
「でも、私のせいで」
「そもそも仕事だからな」
「そっか」
仕事と言う言葉に少しだけ引っかかった。
ここでふとした疑問をぶつけてみることにした。
これは私がずっと引っかかっていたことで、此処一か月近く一緒に暮らしてみてどうしてこんなにも私を守ってくれるのかが気になった。
「なんでこんなになっても私を守ってくれるの?」
「仕事だからな」
「仕事か」
「まあ理由は色々あるけど、今は仕事と言う事だしそれに安藤との親と約束したからな」
「約束?」
「必ず守るって」
「そんな約束していたんだ」
「それだけじゃない、ただ金を積まれたらやるわけじゃないぞ」
「そうなの?」
「俺は自分の納得できる理由があれるとか守りたいと、思った人間を守るって決めているんだ。」
「なんだか、かっこいいね」
「まあポリシーってやつだな」
始めて河上君がかっこいいって思ったし、親の頼みだけじゃない所は何だろうと思ったけどそれはなんだか聞くに聞けないと思った。
「心太様、大丈夫ですか?」
程なくして高坂さんが病院に到着した。
「まあ右手が使えないだけだから」
「重症って訳ではないですね」
高坂さんも河上君も痛々しい程に右手の怪我をしたのに重症じゃないと思うなんてどうかしていると思ったけど、それが普通なのかと思えてしまった。
そのまま高坂さんが車で家まで送ってくれた。
「ただいま」
「なんだか今日は疲れたね」
「まあ、あんなことがあったからな」
「しっかり休んでください」
「うん」
こんな時はお風呂にゆっくり入って心を休ませたいと、思った時に今帰ってきたばかりなのに家に人がいる生活音がした。
「お、帰ってきたか」
「おかえりなさいませ」
そこにはメイド服をきた女性が掃除機で掃除をしていた。
まるでその女性は人形のような顔立ちでとても、美しく思わず見とれてしまう程に美人だった。
「え?誰?」
「安藤様は始めてでしたね」
女性は私に向かって一礼をして自己紹介を始めた
「初めまして、シャーロット霞エヴァーと申します」
「ハーフの方ですか?」
「はい、長いので霞とお呼びください」
「霞さん」
「はい」
なんでメイド服なのか疑問があり、それ以外にも色々気になる所がありすぎて頭にクエスチョンマークが溢れていた。
「あの?」
「はい?」
「なんでメイド服なんですか?」
「心太様に仕える時に、日本の女性の正装がこちらとお伺いしましたので」
「言っとくが俺が強制したわけじゃないぞ」
これは河上君の趣味なのかと思った瞬間に手洗いを終えて、ソファーに寝そべっている河上君が否定した。
「一か月此処にいたけどなにしていたんですか?」
「海外で任務をしておりました」
「任務?」
「心太様の命でヨーロッパ各地を周りサマエルの情報を集めておりました」
「なんで霞さんが?」
「俺が休職とっていたからな」
「休暇?」
なんだか色々分からない事がありすぎて、困惑していたけどそんな私を置いていくように話が続いていく。
「そろそろ安藤にも話していい頃合いだな」
「何が?」
「俺はインターポールの捜査官だ」
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