11-10. 対面
「……おまえの言い分も分からんでもない。
だが、やり方は誤ったな。
今回の蜂起で数多くの国民、人質とされた者たちは震撼・恐怖し、そして日常が壊された。おまえたちの行為は、理由はどうあれ決して正当化されていいものではない」
「その通りだ。彼らには申し訳ないと思っている。
我々も、なにもすべてがすべて武力による訴えはしてこなかった。
しかし、それで変えるには、目の前を隔てる壁はあまりにも高く、厚く、変えることが出来なかった」
「それでの蜂起というわけか」
「
世界的に愛読されている聖書をみれば、万軍の主が自国の民であるイスラエルを裁くのに用いた方法は数知れない。剣に、疫病に、硫黄に、他国への隷属、放浪……。
そして彼らは長い蕩減を経て、彼らの国に帰ることになる。このすべての根底にあるのは万軍の主からの、イスラエルに向けての改心を促したものであった。
この国においても隷属、放浪こそはなかったが、近しいことはいえる。改心、目を覚まさせるには、『火を起こす』ほかあるまい」
「高慢だな。
聖書を引き合いにして自らの動機を神聖化させるやり方は西アジア含め各地起こっている紛争となんら変わりはしない。
なにより聖書を紐解けば、イエスは身柄を引き渡されるその瞬間にも暴力に訴え出ることはしなかった。自らは天軍を率いる力を有していながらも。
『剣をとる者はみな、剣で滅びる』と言及されたように、お前はここで終わる」
「ふっ、その通りだな。
あとはこの打ちあがった舞台をどう締めくくるべきか、だが……」
互いに銃を構え、緊迫した空気が場を支配する。
ガラス越しに映る満月を背景に、物音さえしない静寂なひと時。
時間の流れが、まるで止まったかのような錯覚さえ覚える。
それを感じさせてくれたのは、差し込む月明りを陰る雲の動きからであった。
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