11-3. 対面
「……『秘密警察』の存在もまた大きい。
これからの『血が流れる舞台』は人の生活圏で起こることが主立つ。
それらを踏まえての特殊部隊、VRであり、それへのフィードバックを目的としたのが今回の演習だった」
大々的な戦闘からの、水面下での工作行為への移り変わり。
この国においてはスパイ天国と言われて久しいが、その危険性は日に日に増していっている。
時折耳にする著名人の突然過ぎる失踪。自然死、自殺、他殺、事故死 etc。詳細が決して明らかになることない『それ』は『それ』への捜査に踏み込ませる余地のない『不幸な旅立ち』として通知、整理される。有無を言わせない巧みな工作行為は、その方面の主要人物たちを抱き込むことで成立する。これには万に一つ表沙汰になることもない。……なにせ、主要人物たちのうちには世論を創り出すメディアも関わっているからである。最近では噂なり表面化されても押し切っている印象は受けるが。
『部隊』の創設はそれを受けての、米国と肩を並べ『かつての強き日ノ本』を取り戻そうとしたさき首相の提唱による。
情報統制を敷き、蔓延ってしまった世間には一切の秘匿。
かの国に対してはもちろん世界の動向をいち早く察知、鎮火させるために設けられた。
そんな国家安全保障上、極めて重要な情報である部隊の存在。
それだけでない!? 創設に至った経緯までも知っているとすれば、いま相対する青年は関係者なのか??
鵜呑みにするつもりはないが、俺自身がこの場に立っている理由ももっともらしく思えてしまう。
「……潜る前からも、俺自身が選ばれた理由には合点がいかなかった。
だが、お前の話しからすれば『それ』も、そして施設占拠が起こった事実もすべて筋は通る。
まさか俺自身が身を置いている『組織』が関わっていたとはな」
「すべては伏せられていた。今回の演習は異例といってもいい」
「とはいえ、今回の演習は我々だけに限ったものでなく、国民全体を巻き込んでの突発的な訓練となっている。
それだけではない。全世界を巻き込んでいる。これへの国内外からの苦情の嵐は必至だな」
「そうだな。政府もまたこのような事態は想定していなかったようだ」
「……なに!?」
「もとより今回の演習自体、『廃案』予定だった。
素案自体においても、周りに及ぶ影響を鑑み国内だけに留めた内容だったときく。
それを今回の演習までに昇華させることができたのは発案者である『米国』、経済界の重鎮、そして各方面に発言力を持つ議員に環境保護団体。それらと蜜月関係にあるこの国の親米派議員によって推し進められた。絶対的な情報統制を敷いてね──」
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