第23話 ハーフオークは初めて同じ肌の色の人と出会う
☆、応援コメントありがとうございます!
4人目の妹ちゃんの登場です!
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
『ハーフムーン』が結成して約半年。
俺たちは長期遠征に挑戦してみることにした。
これまで、3泊4日が最高だったけど、いっきに10泊11日がノルマでそれ以上頑張りたい。
なぜ、今頃そんな話になったかというと、芋を魔の森でたくさん見つけるようになったんだ、ディアナが。妹が優秀過ぎる!
だから、食事のバリエーションが広がって、長期遠征の可能性が広がっていた。
肉は好きだけど、毎食、毎食だと流石に飽きて、街に帰りたくなるからな。
今回は、食糧が現地調達できる限り、突き進んでいくんだ。
南に向かってずんずんと歩いて行った。
メチャクチャ強い魔物が出てきたらどうしようかと思っていたが、今のところ、
そんな危険な魔物には遭遇していない。
いや、一度、上空をレッドドラゴンが悠然と飛んでいるのを見た!
アレは無理だわ。ほんと、こっちに降りて来なくてよかったわ。
そして、領都を出発して7日目。
「リュー兄ィ、向こうから何か、走ってくる☆追いかけっこしているかも?」
「行ってみるにゃ!」
アレッタが走り出してしまったので、俺たちもついて行くと、逃げていたのは一人、マントを被っている小柄なやつで、追いかけているのはゴブリン5匹で上位種もいるようだ。
「助けるにゃ!」
俺たちに気付いたゴブリンは矢を構えた。
だが、そいつが矢を放つ前に、アレッタが走りながら射殺した!凄い!
一足早くたどり着いたディアナがマントの奴を庇って、ゴブリンと戦い始めた。
俺とディーがたどり着いた時には、上位種ただ1匹となっていた。
ハイゴブリン。背は普通のゴブリンの1.5倍で、180センチくらい。
パワーとスピードに優れ、武器を巧みに扱い、汚い手段を取ることもある強敵だ。
1対1ならな。このハイゴブリンは1対5なのに、全く臆していなかった。
歴戦の雄なのか、馬鹿なのか?
「ワイに殺らせて。」
ディーが自信満々で頼んできたので、俺とディアナは肯いて、ゆっくりと後ろに下がっていった。
ハイゴブリンがディーに飛びかかった!
ディーは大盾で防ぐが、ハイゴブリンは棍棒でゴツンゴツンと大盾を殴り続けた。
と、ハイゴブリンは左へステップして、ディーの顔目掛けて砂を投げつけた!
ディーは左へ回転して大盾で砂を防ぐとそのまま回転して大きく横振りしたメイスをハイゴブリンの肩に激しくぶつけた。
ぶっ倒れたハイゴブリンにディーがとどめをさそうとダッシュした。
また、ハイゴブリンは砂を投げつけたが、ディーはまた大盾で防ぐと、そのまま大盾で突っ込んだ!
「ぐえっ!」
大ダメージを受けて朦朧としているハイゴブリンの頭にディーのメイスが容赦なく振り下ろされた。
ディーが褒めて欲しそうにこっちを見ていたけど、それより先にマントの奴だ。
「大丈夫にゃ?」
「うっ・・・」
何故か人見知りせずアレッタが優しく問いかけると、マントの奴がか細い、可愛い声で呻いた。
女?子ども?
「大丈夫?ケガなら、ディーが治せるよ。痛い所、教えてくれるかな?」
「ありがとう。逃げる途中にコケたり、木にぶつかったりしたから全身の打ち身が酷いの。」
マントを脱ぐと、中身はエルフの美少女だった!
背は160センチくらいで細身。
腰までの長い髪が艶々と輝いていて、耳が尖っていて、目が少し吊り上がっている。
ここまでは普通のエルフの特徴と同じだ。
だが、その美少女は、肌が俺と同じように浅黒くて!そのうえ、長い髪の右が金、左が黒で!!
さらにさらに、その澄んだ瞳の色は、右が深い碧、左が静かな緑!!!
だった!
俺たちの知っているエルフは白い肌、髪は金か銀、瞳は藍か緑どちらかなのに!
こんな姿の人、見たことも聞いたこともないよ!
えっ?俺?俺の髪は黒で、瞳も黒と単色だよ。
えっ?俺のことは聞いていない?
「・・・ディー、回復魔法を。」
「・・・ちょっと、肩に手を置くで。」
ディーも呆然としていたが、慌てて回復魔法を唱えると、エルフの体が薄く光った。
「ありがとう。もう痛みが無くなったわ。回復魔法は初めてですが、心地よかったわ。」
初対面の俺たちに対し、エルフの少女は何の警戒心もなく微笑んだ。
いつもやかましいディーも、物おじしないディアナもどう話そうかと悩んでいるみたいだった。
「・・・俺たちは冒険者パーティ『ハーフムーン』だ。俺の名はリューク。」
「アタシはディアナ、15歳だよ☆」
「アレッタ。15歳。」
「ワイの名前はディーデレック、同じく15歳や。ディーって呼ばれてんで。」
エルフの少女は俺たちの自己紹介をふむふむと聞いていた。
「私はベアトリクス、15歳なの。ママからはトリクシーって呼ばれてたわ。
助けてくれて、ありがとう。冒険者パーティって、ママから聞いたことがあるわ。」
「ちょっと聞きたいんだけど、この辺りにエルフの村とか、国とかあるのかな?」
エルフ、肌の色が真っ白なエルフは遥か北の方に住んでいて、王都にもたくさんいた。だけど、浅黒い肌のエルフなんて見たことも、聞いたこともない。
浅黒い肌の人も俺しかいないけど。
「知らないわ。私はママと二人だけで、もう少し南に住んでいたの。
だけど、ママが病気で死んじゃって、最後に「北に行きなさい。」って言われたの。
だから北に向かって歩きだしたら、すぐにアイツらに見つかってしまったの。」
「そうなんだ・・・北に当てとかあるの?」
「ないわよ。でも、一人では生きていけないからって。」
「じゃあ、アタシたちと一緒に来る☆」
「はい!お願いするわ!」
トリクシーは手を叩いて喜んでいた。
早っ!決めるの早っ!
なになに?もしかして、ハニートラップとかじゃ・・・
「北の国の人たちは肌の色が白いってママが言ってたけど、貴方はそうじゃないのね!」
仲間だ!って言わんばかりに、トリクシーがニコニコして話しかけてきた。
「えっと、ママ以外と話したことはある?」
「ずっと昔、パパがいたけど、出て行ってずっと帰ってこないの。
ママとパパ以外の人に会うのが初めてだから、話すのも初めてだよ。」
他人と話したことがないだって!
つまり、嘘、憎悪、嫉妬、悪意なんかをもらったことがないんだ!
こんな純粋な子、どう対応したらいいんだ!
「えっと失礼だけど、パパとママの肌の色は?」
「失礼って何が?肌の色はパパが黒くて、ママは白いよ。だから私はその間なの。」
!!!黒い肌のエルフっているんだ!
差別が怖くて、こんな森の奥に住んでいたのか?
それとも黒い肌のエルフの村がこの辺りにあるのか?
魔物の密度が濃いいし、時折メチャクチャ強い奴がいるから、めちゃくちゃ強くないと無理だと思うけど・・・
それから、トリクシーの質問攻めが始まった。
もう、俺たちに興味深々だ!
「ディアナは犬人で、アレッタは猫人なの?リュークは?ディーは?」
「4人みんなハーフだよ。ディーはドワーフで、俺はわかんないけど。」
「ハーフ!へ~、ハーフって多いの?」
「少ないね。」
「ふ~ん。リュークは分からないってどういうこと?リューク以外は肌が白いんだね。」
「俺は赤ちゃんの時に孤児院って所に捨てられていたんだ。
親が分からないんだよ。ちなみに、肌が浅黒い人は俺だけだよ。」
「そうなんだ。なんでここにいるの?リュークたちが住んでいる所は近いの?」
「魔物を退治するのと、行ったことのない場所へ行ってみたかったからね。
俺たちが住んでいる所は、ここから7日ほど北に歩いたところだ。」
「そんな遠くから来るってやっぱり強いんだね。私は魔物が怖いわ。
ディーはあの大きいゴブリンを楽に倒したし、強いんだね!みんな、魔法は使えるの?」
「魔法はディーだけで、回復魔法を使えるよ。」
「私ね、魔法使えないんだ!ママがね、風魔法と水魔法が使えるハズって言うんだけど、全然使えないの!」
「それって、言わない方が・・・」
「そうなんだ。ディー、どうやったら魔法使えるの?」
「ひたすら練習や!」
「そうなんだ。そのディーの盾、凄いね。魔法を弾きそう。」
「分かるんや!凄いやん!」
ディーがトリクシーに食いついたのに、トリクシーは1歩下がって、俺たちを見比べた。なんなの?
「えへへっ!4人はどんな関係なの?」
なんで、突然そんな話に~!
「「「恋人!!!(笑)」」」
怖いことハモるんじゃね~!
「うお~い!冗談だから!妹だ、妹!」
「妹!いいなあ、私、一人っ子だから、兄妹欲しかったんだ!兄妹だけど貴方たち全然似てないんだね!
私はママとそっくりって、いつもママが言ってたわ。」
「本当の妹じゃなくって、俺とディアナとアレッタは同じ孤児院で14年、一緒に暮らしたんだ。パパもママも違う人だけど、ずっと一緒に過ごしたから妹って呼んでるんだ。ディーはこの前、会ったばかりだから、ただの仲間。」
「ただの仲間って酷いやん!仲間外れやん!妹にしてや!」
ディーがワザとらしく、俺に縋りついて来た。
トリクシーがぱあぁっと嬉しそうに笑って、俺の袖をつまんだ。
「私も妹になるわ!やった!兄妹が4人も出来た!えへへ!」
終わらない話にディアナがじれて、割り込んできた。
「ねえ、リュー兄ィ、日が暮れて来たよ。」
「ホントだ!キャンプする場所は・・・」
「リュー兄ィ、あっちに広い場所があったにゃ。」
「ありがと、アレッタ。じゃあ、そこに行こう。」
トリクシーの話を打ち切ることができて、ホッとして歩き出したのだが・・・
「リュークって、どうしてリュー兄ィって呼ばれてるの?にぃって何?」
「リュークお兄ちゃんを省略しただけ☆」
「ディーの話し方がリュークとディアナとアレッタと違うのはなんで?」
「生まれた場所とか、育てられた関係とか、個人の好みで言葉使いは変わるんだ。」
トリクシーの質問が終わらない~!
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