第9話 ハーフオークは買い物してお金を使い果たす

いつもありがとうございます!


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「じゃあ、『ハーフムーン』のお金でお買い物するぞ!」

「「やった~!」」

「何買うの?ドキドキ☆」

「武器が欲しいにゃ~!防具が欲しいにゃ~!リュックが欲しいにゃ~!」

二人がキラキラした瞳で、期待に胸を膨らませている。


ちなみに、今の俺たちの装備はこんな感じ。

俺、リューク。固い魔物を殴りすぎて歪んでしまったメイス。安物の大盾。

凹んだり、穴が開いている鎧と兜。

ディアナ。ナイフ、木刀。エステルが初心者の頃に使っていたボロボロの革ヨロイ。

アレッタ。ナイフ、木刀。ダミアンが初心者の頃に使っていたボロボロの革ヨロイ。

酷すぎる!よく、こんな装備で魔の森に連れて行ったな。反省しかない。


「武器は何が自分に合うか、試してみる必要があるから、とりあえず安い奴を買う。

防具はいいのを買おう。この前、死にそうになったからな。

予算は小金貨3枚(30万円)だ。」


「小金貨3枚のお買い物☆」

「そんなの初めてだにゃ~!リュー兄ィのお陰だにゃ~!」

大通りを歩いているのに、二人は飛び上がって喜んでいた。純真で可愛いな。


「ねえねえ、防具はいいのを買うって、ホント、リュー兄ィってアタシたちのこと、大好きなんだから~☆」

「愛されているにゃ!」

ディアナは俺の右腕にぎゅっと掴まって、アレッタは俺の左腕にぎゅっと掴まった。


「あっ、こら!歩きにくいだろ?もうちょっと、離れてくれ!」

「嬉しいでしょ☆」

「お礼にゃ!」

歩きにくいし、好奇の視線を浴びて恥ずかしかったりしたんだけど、ディアナとアレッタが凄く楽しそうな声だったので、俺も楽しくなってしまった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


まずは貧乏冒険者御用達、中古武具店に行ってみた。

狭い店の中に、古い武器っていうか、壊れている武器までたくさん売っていた。


「とりあえず、好きな武器を選んでくれ。剣は壊れそうにない奴を選べ。」

「え~、良く斬れるのが欲しい☆」

「初心者は剣の角度をミスすると、剣が曲がったり、下手したら折れるんだ。

だから、最初は鈍器扱いできるヤツな。」

「「は~い。」」

ディアナとアレッタはがっかりしたようだったが、返事は素直だった。


そしてすぐに、二人は瞳を輝かせ、楽しそうに物色し始めた。


30分くらいたって、2人が武器を持ってやって来た。

「これに決めた☆」

ディアナが持っていたのは通常より長く、分厚い長剣だった。

普通の長剣よりかなり、重い。まさに鈍器っ!

美少女が長い鈍器!萌えるわ!


「これって、鞘が可愛いよね☆」

「鞘?・・・そういう理由?」

「気に入らないと大切に扱わないよ☆でも、他の剣より重いんだ。大丈夫かな?」

「魔物を倒していたら、そのうち馴染んでくるさ。」


一方のアレッタは小さめの弓を持っていた。

「・・・弓、ダメかにゃ?」

アレッタが不安そうに尋ねた。

ちょっと、困ったなって思ったのがバレてしまったらしい。鋭敏な子だよ。


「ごめん。弓は射程が100メートル以上あるから、パーティに一人はぜひ、欲しい。だけど、矢が高いんだ。消耗品なのに。

シャフトが曲がっちゃうと当たらないし・・・」

「止めた方がいいにゃ?」

否定的なことを言ったので、アレッタはちょっと困っていた。


「やってみたいんだね。じゃあ、それを買おう。

上手くなってくれたらホント、めちゃくちゃ楽になるから、いっぱい練習して上手くなってくれよ。」

「にゃ!」

アレッタはニコニコと笑顔になってくれた。


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次に防具屋に向かった。

「リュー兄ィ!この店、綺麗なやつばっかりだよ☆」

「ホントにいいにゃ?」

「よっぽどの事がないと買い換えないから、いい奴を買うんだよ。

ここは中古でも、良品しか置いてないんだ。二人は革ヨロイと革帽子を選んでくれ。

防御力は落ちるけど、二人は素早い動きが必須だからな。

併せて小金貨1枚までで選んでくれ。」

「わかったにゃ~。」

「ありがとう、リュー兄ィ☆」


残念ながら選択肢があんまりなかったので、すぐに決まったようだ。

試着して、二人同時にお揃いの革ヨロイで、お揃いのポーズをキメて現れた。

「じゃ~ん☆」

「似合うかにゃ?」

「お~、可愛いじゃないか!あっ、間違えた。強そうじゃないか!」

「えへへ!どっちでも嬉しいな☆」

「にゃはは!」

お世辞こみの称賛に二人は照れ臭そうに笑っていた。


お金を払うとき、二人ともビックリした表情となった。

どうしたんだろう?ちゃんと予算どおりだったのに。


お店の外に出て、次はポーションを買いに行こうと歩き始めたら、二人に腕を掴まれた。

「うん、どうかしたの?」

「あと、何を買うんだっけ☆」

「言ってなかったか?毒消しと低級ポーションだよ。たぶん、これでパーティのお金は無くなるね。」

「ちょっと、待つにゃ!」

「リュー兄ィのモノ、何にも買ってないよ!」

二人はなぜか、瞳に涙を湛えていた。


「パーティが強くなるのは、二人を強化するのが一番早いから当然だろ?」

「でも、強敵が現れたら、また一人で戦うつもりでしょ!だったら、大盾のいいのを買うべきだよ!」

「そうにゃ!安物で、使い勝手が悪いって言ってたにゃ!」


「何言ってる?ブリリアントベアーの時は、アレッタも戦ってくれたじゃないか!

二人がいい防具を揃えること、ケガした時のためにポーションを用意しておくことが、今、一番必要なんだ。

防具が悪いせいで、二人が死んでしまったり、障害が残ったりしたら、俺は自分が許せない!絶対にだ!」

ディアナとアレッタは涙を浮かべて、俺に縋りついてきた。


「ありがとう、リュー兄ィ☆」

「アレッタ、誰かに、こんなに大切にされたの初めてにゃ!」

そうか!

孤児院の子どもはみんな平等に扱われるから、親のように、自分より子を大事にするなんて経験することがないんだ。


そういえば、『三ツ星』を結成したとき、ダミアンとエステルとで誓ったんだ。

この仲間を自分と同じくらい大切にしようって。

ダミアンとエステルは、時にはホントに自分より俺を大切にしてくれて・・・

それが本当に幸せなことって感じて・・・


もちろん、俺も同じようにダミアンと、エステルを大切にして・・・

そして、それはダミアンが亡くなるまでちゃんと守られていた・・・

なのに・・・


俺もディアナとアレッタを抱きしめた。涙がこぼれていた。

「今、俺にとってディアナとアレッタが一番大切だよ。俺自身よりも。

抜け殻となって戻ってきた俺を、二人が本当に救ってくれたんだ。

ありがとう。」

「「リュー兄ィ!!」」

大通りから見えるところで、三人で抱き合って号泣してしまった。


でも、泣き止んだ時に見せてくれた二人の笑顔は雲間から射しこむ光のように尊かった。

「誓うよ。ディアナとアレッタを、自分と同じように大切にすることを。

ディアナ、アレッタ、それから自分自身を守りぬくことを誓う。」

ディアナとアレッタは顔が真っ赤になって、ソワソワしていた。


あれっ?大輪の花のような笑顔を見せてくれると思っていたのに、なんか違う・・・

「・・・帰って来てまだ6日目で、プロポーズなんて☆」

「二人ともって流石リュー兄ィにゃ・・・」


「うおぉ~い!誤解!誤解だから!

パーティメンバーを守り抜くって話!大切にするって話だから!」

「うん。分かった☆」

「モチロンだにゃ~。」

二人はトロトロに蕩けている笑顔を浮かべた。

これ、絶対、分かってないやつ~!!!


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