第6話 ハーフオークは魔物に殺されそうになる
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設定:こちらの世界と同じで、自分の向き不向きはやってみないとわからない。
能力を鑑定することはできない。数値化なし、レベルなし。
魔物を倒せば強くなっていく。倒さないと緩やかに弱くなっていく。
リュークは怒ることで、肉体強化魔法のスイッチが入る。
『三ツ星』の時は守られているとの思いからあんまりスイッチ入らなかった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
凄すぎる。
二人は初めてなのに、雑魚過ぎて狩らない奴も含めて獲物、魔物をたくさん見つけていた。
ディアナは鼻で、アレッタは耳で。
『三ツ星』の時は、ビギナーの1回目、2回目くらいは
3人がかりでも何にも獲物を見つけることが出来なかった。
隠れている奴や、俺たちに気付いて逃げ出す奴に気付かなかったんだ。
ダミアンがある先輩に相談したら、
「見るな、感じろ!」
って言われて、半日ほど目を閉じていたけど、3人とも何にも感じなかった。
街へ戻って、ダミアンがその先輩に苦情を言ったら、
「あんなの信じたのか、バ~カ。」
って言われて大乱闘になったよな・・・
そして。
前を歩いていた二人が駆け寄ってきた。
「リュー兄ィ、何か怖い・・・」
「向こうから何か来るにゃ・・・」
こんな所に強すぎる奴はいないハズだけど・・・
やって来たのはブリリアントベアー。
「・・・なんで、こんな強いヤツがこんな街に近い所に来るんだ・・・」
この魔の森に現れる動物系の中で最強の種の一つだ。
ブリリアントとは、その毛が黒く輝いて見えるからで、
その毛は火魔法の被害を少なくし、剣が通りにくいという難敵だ。
しかも、今まで見た中で飛びぬけてデカい!
勝てるか?
いや、ディアナとアレッタをかすり傷一つ負わせず、守って見せる!
「木の陰にでも隠れてろ。」
恐怖で青ざめたディアナとアレッタは黙って肯くと、それぞれ、大木の陰に隠れた。
ブリリアントベアーが俺を認識し、立ち止まった。
俺が武器を持っていることに気付いて、警戒心を高めていた。
ブリリアントベアーが警戒しながらも近づいてきて、そして3メートル向こうで立ち上がった!
デカイ!
俺の倍、4メートル近くあるか?
奴が右腕で攻撃してきた!
俺は大盾で何とか防ぐと、メイスを渾身の力で振り抜いた。
「おらぁ!」
奴は俺のメイスをその左腕で難なく、受け止めた!
「何いぃ!」
また奴の右腕が横手に振られ、俺はまた大盾で防いだのだが、
余りのパワーにはじけ飛び、俺の体は大木に打ち付けられた。
「ぐはっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「リューク!」
「よくも、リュークを!敵を討ってやる!」
「ダミアン、リュークは死んでないよ!」
「うるせぇ、死ね~!」
「私が殺るわ!」
ダミアンとエステルがブリリアントベアーの腕をかいくぐり、
目と鼻と口を攻撃していく・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「リュー兄ィ、起きて!」
頬を張られて目が覚めた。
「リュー兄ィ、アレッタが!アレッタが!」
ディアナが涙を浮かべていた。
アレッタ?
俺は弾けるように立ち上がると、
木々の中をブリリアントベアーから必死に逃げ回るアレッタが見えた!
「アレッタ!」
怒りが体中を満たすと、俺の体は熱く弾けた。
「リュー兄ィ!」
近づいてくる俺を見つけて、助けを求めるアレッタ!
俺まで、あと10歩のところでアレッタが転んだ!
ブリリアントベアーがアレッタに飛び掛かる!
「ゴラ~!」
俺のメイスは奴の伸ばした右腕を叩き落とした。
「よくも、大事な妹を襲ったな!」
右腕をぽっきりと折られたブリリアントベアーだが、
闘争心は折られておらず、怒声をあげ頭から突っ込んで来た!
「死んで詫びろ!」
俺はブリリアントベアーの頭に、思いっきりメイスを振り下ろすと、
奴は地面にたたきつけられ、血反吐を吐いて動かなくなった。
「アレッタ!リュー兄ィ!」
「ディアナ!リュー兄ィ!」
ディアナが、アレッタが、俺に飛びついて来た!
「良かった!無事で良かった!」
「リュー兄ィ、死ぬかと思ったにゃ~。」
「リュー兄ィもアレッタも死んだかと思ったよ~。」
「助かったのは、アレッタがかばってくれたお陰だ。本当にありがとう。
ディアナもよく、俺を起こしてくれた、ありがとう。」
「リュー兄ィが死ぬなんて絶対に嫌にゃ!」
「アタシは熊が怖くて動けなかったよ・・・」
「ディアナ、本当に怖かったら、逃げ出すか、動けないかだ。
よく俺を起こしてくれた。よく頑張ったな。」
「リュー兄ィ、助かってよかった~!」
三人で抱き合って、しばらく泣いてしまった。
「怖かっただろ?もう、冒険者なんて辞めておくか?」
「ううん。アレッタはリュー兄ィが一緒なら怖くないにゃ!」
「次は勝~つっ☆」
ディアナとアレッタはようやく笑顔となって立ち上がると、お互いの服に付いた汚れを取りあっていた。
「よし、次も頑張ろうな~、よっこいしょ。」
放血するために、ブリリアントベアーを大木にぶら下げた。
「「ええええええぇ!」」
「あれを持ち上げるんだ・・・」
「信じられないにゃ・・・」
「重いからな。血を抜いて、少しでも軽くしたい。」
「そこじゃない☆」
角ウサギの丸焼きを美味しくいただくと、ディアナとアレッタが姿勢を正した。
「リュー兄ィ、助けてくれてありがとにゃ。」
アレッタがペコリと頭を下げた。
「いや、熊が気を失った俺を襲おうとしたから囮になってくれたんだろ?
あんなに危なかったのに。こちらこそだ。ありがとう。」
「ねえ、リュー兄ィ、アタシたちでもアイツに勝てるようになるのかな?」
「経験を積めばどんどん、強くなっていくからな。才能次第だろう。
二人の強さの才能がどうかは俺には全く分からないけど、
索敵の才能は凄いって思うよ。」
この言葉に、ディアナとアレッタは両手でハイタッチして、嬉しそうに笑った。
「それより、街から近い所にあんな強い奴はめったにこない。
今回は勝てたけど、運が悪かったら、俺も、アレッタも、ディアナも殺されていた。
それでも、冒険者になりたいのか?」
ディアナとアレッタは真顔になって肯いた。
「モチロンだよ☆」
「リュー兄ィとディアナが一緒なら大丈夫にゃ!」
ディアナとアレッタの決意と信頼が眩しかった。
俺はこの二人を絶対に守るんだって思った。うん、これ、何回目だろう?
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