第29話 製作依頼?
「…よし、これで全部だな。じゃあ、ここに署名を頼む。」
そう言われて、ガレックさんが署名をする。
「なにを書いているんです?」
オレは気になり、ガレックさんに尋ねてみた。
「ん、ああ、受注…えっと、オレたちが倒して運んでもらって解体する魔物の個数に間違いがないかの署名だ」
「へぇ」
「個数が間違っていたり、別のパーティのと混同しないためのな。後で「あーだこーだ」言うのは時間もかかるし、面倒だろ?だから、間違いがないかを確認しておくんだよ。そして、換金するときにこの控えの用紙を渡せば、すんなり全てが終わるだろ?」
「たしかに、それがないともめる原因になりますね」
「そうだ、だから、最初にやるんだよ」
中々に考えられている…
というか、過去にそんなことが頻繁にあったんだろうなと予想がついてしまった…
「ま、ともあれ、これで依頼完了だ。レイ! お疲れさま」
「「「お疲れぇ~」」」
「お疲れさまです」
「そうそう、レイ…」
ガレックさんがオレを呼び止め、耳打ちをする。
「じゃあ、粉とマントを持って来い。きっちり仕上げてやるよ。へへ」
「はいっ! お願いします!」
オレは急いでマントと粉を取りに戻った。
そして、ガレックさんに渡して託した。
「どうした、レイ?」
少しぼんやりしていたオレを心配して、ガレックさんが話しかける。
「いえ、終わりなんだなぁ…と、なんか寂しくなって…」
「え…何言ってんだ? まだ終わりじゃないぞ」
それを聞いて呆気に取られたオレに、ガレックさんが続けた。
「まだ、クイーンを倒してないじゃないか」
「え…クイーン?」
「そう、そいつを倒さない限り、いくらでも湧いてくるからな」
「え、あ、はっ?」
驚いていたが、よく考えれば女王アリのことだと気づいた。
そりゃそうか、女王を倒さないと増え続けるよな。
「今、オレたちが倒したのは、溢れ出した一部だ。と言っても、倒さなければさらに増えるしな。それが、こいつ『
「それじゃあ…今から探すんですか?」
「いや、今日のアントの行動である程度の予想をつけて、スカウトたちが連携して巣を探すって感じかな? だから、見つけるまではオレたちはお払い箱だ。ここからは索敵班の仕事だ。たぶん、冒険者ギルドからも人をよこすだろう。でないと、一人での行動は危ないしな。アントを見つけても、無理に戦う必要もない。まずは巣を見つけること。それが、一番の目標になるだろう」
オレはそれを聞いて、結構厄介な魔物なんだと実感した。
「それじゃあ…」
「ああ、また収集がかけられるだろう。その時は、また頼むな、レイ」
「はいっ! ぜひっ!」
「お、元気があってよろしい。あはは」
そう言いながら、ガレックさんが笑ってくれた。そして、オレにさらに耳打ちする。
「そうだ、レイ。あのマント、使えそうならオレたちも作ってみたいと思ってるんだが、どうだ?」
「っ!! いいと思いますが…あまり人に喋らないで欲しいかも…」
「なんでだ?」
「あ…えっと…もし、使えることが分かってしまえば、他の人も作ろうとしますよね…」
そう言うと、なにかに気づいたガレックさんが納得する。
「言いたいことは分かった。欠片を根こそぎ取られ、制作に必要な分がレイが採集できなくなるってことだな」
「そうですっ! それに、数が減るってことは鉱石がなくなるってことですよね。そうなると、鉱石の値段が跳ね上がると思います。手に入れば高値がつくけど、そもそも鉱石がなくなってるから値上がりするわけで、逆に冒険者の皆さんが大変になりそうです…」
と、言ってみるが、実際はオレが製作できる機会が減るのがいやだっただけだ…
「たしかにな…レイ、おまえ何歳だ? そんなこと、普通子供が考えることじゃないぞ」
―ドキッ
オレは、少し言いすぎた…と思ってしまった…
「はは…まぁいい。そういうことなら、せめてオレたちのパーティ分くらいはいいだろ?」
「はいっ。それなら大丈夫だと思います。あと、じつは…」
オレは色々良くしてくれたガレックさんだからこそ、パワーグローブのことも話そうと思った。
―――
「…どうですか、それ?」
「………」
どうしたんだろ? グローブをつけてから、ずっと何も言わずに剣の素振りをしている。
「…なぁ、レイ」
真剣な表情を浮かべ、ガレックさんがオレに尋ねてきた。
「これ…売ってくれないかっ!」
結構食い気味にガレックさんがオレにそう言ってきた。
オレは驚いて、心臓がバクバクと音を立てるのを感じた。
「え、えっ…?」
「なぁ、頼むよっ! レイ! これ、すごいよっ。剣士なら誰でも欲しいってっ! だから、なっ、売ってくれ。レイィィィ!」
泣き出しそうな表情を浮かべ、オレに頼み込んできた。
オレは、どうしたものだろうかと悩んだが、ダンジョンに入れば作れるかもと思ったが、魔鉱石があるかな?
「あの…えっと…その、ダ、ダンジョンに入れば素材が落ちてるかもですから、もし、見つけたらでも構いませんか?」
「それでも構わないっ! 作ってくれよ、レイっ!」
「わ、わかりました…また、オレを指名してくれれば、作れていればその時にでも…」
「わかった! オレたちの専属でお前を指名するっ!」
「あはは…ありがとうございます。」
すごい勢いに押され、断れるはずもなく、オレはほぼ『シルバーストライク』の専属の荷物持ちになってしまったのだった…
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