第41話 真夜中の・・・

 昔、ちょうど今くらいの時期、深夜に山道を走っていると ヘッドライトに雨のようなものが映り込みました。


 その夜は、晴れていて空には強く輝く星と細長い三日月が上がっていました。


 風の強い日で、折れた木の枝が道に落ちていました。道の脇に落葉松の葉が積もっていたので、時期的に落葉を始めた落葉松の葉がヘッドライトに映っているのかなと思いました。


 しかし、峠道を抜けて唐松林を過ぎて集落に入ってもヘッドライトに映る影は消えませんでした。


 あらためて空を見ましたが、雲ひとつ無く晴れ渡っていました。


 ヘッドライトに映る影はだんだんと強くなりました。


 車の窓を開けて手を外に出してみると、冷たい粒が手に当たり溶けるのがわかりました。


 晴れた夜空から降っていたのは雪だったのです。


 晴れの日に降る雨を「狐の嫁入り」と言いますが、真夜中の「狐の嫁入り」、しかも降るのは雪というのにあうのは初めてでした。


 真夜中の雪の「狐の嫁入り」は、昼間の雨の「狐の嫁入り」より不思議な感じがしました。

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