29: 遺物

ある曇り空の日、佐藤は神崎が以前働いていたカウンセリング事務所を訪れた。

古びた建物の中で、彼は神崎の元同僚から一冊の日記を受け取る。


「彼女が残したものです。きっとあなたに読んでほしかったのでしょう」


佐藤は震える手でページをめくる。

そこには、光明会での壮絶な経験、彼女が見出した恐ろしい真実、そして最後の決断に至るまでの葛藤が、克明に綴られていた。

日記の最後のページには、こう書かれていた。


「私の犠牲が、誰かの未来を守ることができたなら、それは私にとって最大の救いです。佐藤さん、どうかこの世界を...」


佐藤の目に、決意の色が宿る。

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