第12話 犬人たちの参画
一息ついたところで、ハムちゃんが龍の巨体を小さくしながら改めて私の前で頭を下げてくる。
「となりの豚トロ様!! 本当にあなた様だ!! ずっと帰ってこられるのを待ってたんですぜぃ! ようやく我らの悲願も叶ったと言えるもんだ!」
「そ、そんなに? 別に皆もっと自由に生きていいんだよ。私のそばにいないで、勝手にしたって文句言ったりしないよ?」
「何をおっしゃいますか! 家臣が主人の傍にお仕えするのは当然の務めですぜぃ。壁に耳あり障子にメアリーにご帰還されるのをずっとお待ち申し上げていたんですぜ」
「そっか……。ありがとー。みんないい子過ぎでしょもぅ」
ハムちゃんの頭をなでなですると、それが至宝の喜びとでも言わんばかりにデレデレになっていた。
対する犬人たちは、その様子に口をあんぐりと開けている。
さすがに恥ずかしい行為だったかな?
「それで、ここでは魔力結晶の採掘をしてたの?」
「はい。犬畜生どもが不遜にも壁に耳あり障子にメアリーの近くに居住地を構えておりましたので、適当に脅かして従わせておりました」
「いや、脅かしちゃダメでしょ。普通にお願いすればいいじゃん。え? てかちょっと待って。採掘キットは? 加速ユニットつけないの?」
「その……我々はそう言ったアイテムを持ち合わせておりませんでして」
「ええ!? いやいや、宝物殿にあるの使いなよ! 普通に使っていいよ!」
「あれらはとなりの豚トロ様の労力によって集められた財ですぜぃ。我々が使うなど、あってはならないことでさぁ」
「いやいやいや、素掘りなんてしたら効率悪すぎでしょ。別に普通に使っていいからっ!」
アイテムボックスに入っていたのをハムちゃんに渡す。
すると、ハムちゃんはまるで国宝級の宝でも受けと売るかの如くそれを大事に受け取っていた。
たしかにこれは課金アイテムなので超効率が出るけど、500円ガチャのハズレとして出てきたもの。
大して価値はないし、なんなら私はこれを大量に持っている。
「露天鉱のLv2ね。採掘量はまあまあって感じか。メアリーを本稼働させるには全然足りないなぁ。よし、そしたら魔力結晶集めをまずはしよっか。あと、他にも消耗品関連のアイテムが全然ないんじゃない?」
「お察しの通りですぜぃ。壁に耳あり障子にメアリーは現在ほとんどの消費アイテムの在庫が空となっておりますぜ」
「わかったー、じゃあそれらの供給ラインをつくるとこもしないとなぁ……」
なんて悩んでいると、それまで事態を見守っていた犬人の内の一人が前へと出て、私たちに話しかけてきた。
「あの、お話し中申し訳ございません、どうか我々を配下に――」
バチィン!!
ハムちゃんが尻尾を地面に打ち付けて威嚇する。
「貴様ぁ! 誰が発言を許可した! となりの豚トロ様が深遠なる熟慮を重ねられているときに話しかけるなど、言語道――」
ハムちゃんの頭をポカっと叩く。
「コラっ! 人様に向かってなんて口の利き方してるの! 謝って!」
「え゛!? あ、ぅ、え……。そ、その……ご、ごめんなさい」
「うん、よろしい。ふぅ、ごめんね。この子けっこう気性が荒くて。えっとそれで何の話?」
「え、あ、は、はい。その、どうか我々を配下に加えて下さらないでしょうか! 龍王様を従えるあなた様は神にも等しい御方と見込んでおります! どうか我らの種族をその庇護下にお入れください!」
「……は?」
いきなり何言ってんだろうと思ってしまったが、犬人たちは全員一斉に土下座を始めて、ガチのマジで本気の勢い。
配下とか全然興味ないのだが、何となく断りづらい空気だ。
「あー……いや、え? えっと、でもさ、この辺に住んでるんでしょ? ほら、普通に良き隣人って感じでいいんじゃないかな? 一緒に魔力結晶の採掘をして、分け合うって感じで」
「何卒お願い致します! 我らは元々、東の地より魔族の領土拡大政策に巻き込まれて逃げて来た身です! 安住の地を求めて今も彷徨っているのです! 何卒、その庇護をお与えください!」
うーん……。
レベルが低いから戦うのも逃げるのも大変ってことか。
「えーっと、守ってあげるのはまあ別にいいけど、メアリーに入れるのはなぁ……。メアリーって一階ずつが小マップみたいになってて、滅茶苦茶広いから暮らせるとは思うんだけど、中に入れちゃうと運営コストがかかるの」
なんて言ってみるも、犬人たちは土下座を一切崩さない様子なわけで
「えーっと……。そしたら、外に街をつくるってのはどう? それだったら外部ブースターパックで出来るからさ。ある程度は自活してもらわないといけないけど……」
「ありがとうございます!! 今後とも忠義を尽くさせて頂きます!!」
まるでノーという選択肢がないかのごとき素早さで感謝を述べられた。
そこまでのことかいな……。
上級者が初級者保護なんてよくあることだと思うけど、ここまで勢いのある願いは初めてだ。
そんなこんなで、犬人の部族が仲間に加わることとなった。
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